253 :パトラッシュ:2012/09/04(火) 21:03:38
earth様作『
嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART5
シャルロット・デュノアSIDE
ピット搬入口が開いた先に「それ」はあった。「織斑くんの専用IS『白式』です」と山田先生が言う通り、まぶしいほどの純白の機体。これに乗ってセシリアと戦うのか。この六日間、「打鉄」に搭乗して僕の「ラファール・リヴァイヴ」と訓練を続けてきた一夏が、学生同士の戦いとはいえ初めて専用機に乗ってISの実戦に出る。各国の軍やIS関係者は目の色を変えているだろうが、そんなことはどうでもいい。僕にとって大事なのは、装甲を開いた白式に体を預けている一夏だけ。僕が囚われてしまった唯一の男性IS操者。
セシリアとの対戦が決まった日の昼。学食に一夏が現われると、幼馴染だという篠ノ之箒さんが「い、一夏、遅いではないか!」と詰め寄った。一緒に昼食のつもりが、どこかへ行ってしまった彼をずっと待っていたから、さっき小さくお腹が鳴るのが聞こえてしまった。篠ノ之さんは顔を真っ赤にして苛立っていたから、つい声が大きくなったらしい。
「なんだ箒、メシ食ってなかったのか? 小学生の頃は腹が減ってはいくさはできぬと言って、俺の倍は食べていたのに。少しでも遅れたら、俺の分まで平らげてただろう」
「だ、男子たるもの、昔の話を蒸し返すな! それよりなぜ、こんなに遅れたのだ?」
「ああ、千冬姉――織斑先生に頼んで『打鉄』を使えるようにしてもらってた。予定より早いけれど、これでISの実機訓練ができる……しかし、やっぱり和食はいいな」
器用に箸を使って魚の煮つけを食べながら、一夏はしみじみと言う。軍人らしく背筋がまっすぐで、マナーもきちんとしている。フランスでもほとんど見かけなくなった「カッコいい」青年に、隣のテーブルから思わず見ほれてしまった。にしても向こうの世界でも日本人として暮らしていたと聞いたのに、日本食を知らないのだろうか?
「そ、そうか。なら私もお前の訓練に付き合ってやるぞ。早速、今日の放課後から……」
「って箒は専用機があるのか? 教師用を融通してもらったから『打鉄』は一台だけだぞ」
篠ノ之さんは「ほへ?」と鳩が豆鉄砲を食らったような(こんな日本語まで覚えた)顔で目を白黒させる。そういえば彼女は束博士の妹だけど、専用機は持ってなかったはずだ。どうすればいいのか必死に考えているらしく、今度は顔色が赤青白と次々に変わっていく。一夏のそばにいたいのに、このままではと焦りまくっているのが面白いほどわかるな。
Now Loading……Error、Fileなし……あ、やっと見つかったか。
「そ、そういえばお前はずっと剣道をしてなかったな。ちょうどいい、鍛え直してやる!」
「いや、俺は剣道じゃなくてISの訓練をしたいんだが」困惑する一夏は、ふと僕を見やった。「ええと、フランス代表候補生のシャルロット・デュノアさんだったか」
「は、はひ、ほうでふけど!」え、ぼ、僕に何か用? 思わずかんじゃったよ。
「確か専用機持ちだったよな。都合がよければ俺の訓練に付き合ってくれないか」
ざっと周囲の空気が泡立つ。篠ノ之さんが「ギン!」という音付きで殺気に満ちた視線を向けてくるけど、僕は呆然として言葉もなかった。「織斑一夏に接近して秘密を探れ」という父の――実際には正夫人の命令を実行する機会が、いきなり巡ってくるなんて。お、男も知らない僕に色仕掛けでスパイさせようというあの女の汚い命令に反発しながら、どうすればいいか思いつかず苦しんでいたのに……でもやはり、僕にそんな資格はない。
「いや、僕は専用機持ちといっても大したことはないから……」
「なら一緒に勉強しよう。俺なんかもっと素人だし、ここは学校だから当然じゃないか」
あの純粋な瞳と笑顔に僕は堕とされたんだ。同時に長い苦難の始まりでもあった――。
※リアルが忙しくて遅れました。シャルは最初から女性としてIS学園に入学していた設定です。wiki掲載はご自由に。
最終更新:2012年09月22日 16:00