377 :パトラッシュ:2012/09/16(日) 10:01:41

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART6

更識楯無SIDE

 ブルー・ティアーズから文字通り雨あられと降り注ぐ射撃の黒煙が晴れると、「白式」から大剣を展開した一夏さんが三十メートル近い距離を一気に詰めて相手のライフル銃身に正面からぶつかっていく。たまらず引くセシリアの隙を突いて、自立機動兵器を一台叩き切った。さすが歴戦の宇宙戦闘機パイロット、戦いの呼吸を心得ていますね。確かに一夏くんはISの初心者だけど、激戦を生き抜いてきた軍人だもの。一度間合いをつかめば、実戦経験のないオルコットなど敵ではないわ。

さて、こちらも動く頃合かしら。私がピットに入っていくと、モニターから振り向いた織斑先生は露骨に顔をしかめた。
「何の用だ? お前が出てくる場面ではなかろう」
「あら、IS学園の生徒会長が世界初の男性IS操者に関心を持ってはいけないと?」
「弟が更識家の当主に目を付けられるなど、歓迎できると思うか」
 私がさっと扇子をかざすと、織斑先生は額を押さえてため息をついた。
「……何が『心配無用』だ。いつも思うのだが、一体どうやってその扇子を用意している?」
「秘密を持たない女は魅力的ではありませんわ。その点は先生も同じでは。あっと、そんなことを言っているうちに、白式のファースト・シフトが始まったようですね」

 抜き身の日本刀を思わせる近接特化ブレード《雪片弐型》をかざした一夏さんの「白式」は、さっきより鋭い一閃で自立機動兵器を斬り捨てた。そのままブルー・ティアーズの懐に飛び込み、回避できないセシリアの喉もとに光を帯びた刀身を突きつけた。

『試合終了。勝者――織斑一夏』

「やった! すごいすごいすごいです一夏くん!」
 はしゃいでいる山田先生の隣で、必死に感情を押さえ込む織斑先生は珍獣のようですね。
「……更識、いま何か無礼なことを考えていただろう」
「とんでもありません。実は織斑先生にお願いがありまして」
「ほう、お前がそんなしおらしいセリフを吐くとは、世界滅亡の前日でなければよいが」
「簡単な話ですわ。私を一夏さんの専属コーチにしていただきたいのです」
 『簡単明瞭』と書かれた扇子を広げると、織斑先生は眼力だけで燃やさんばかりの勢いでにらみつけた。あわてて部屋の隅に退避した山田先生は、真っ青になって震えている。
「先生の考えていることはわかっていますよ。そのためには私が必要なのでしょう?」
「ふん、お前は能力はともかく人として信頼できんからな。何のコーチをするつもりやら」
「あらひどい。私が一夏さんに何かよからぬ真似をするとでも?」
「まあ心配はしとらん。一夏は寮でなく、学外の特別宿舎に住んでいる。いくら更識家でも、不法侵入は不可能だろう。国際IS委員会からも下手な接触は禁じられているしな」
「本当に無粋ですね。私としては一夏さん相手なら、ぜひやりたいことがあったのに」
「……非常にいやな予感がするのだが、いったいどうするつもりだったのだ?」
「もちろん、一夏さんが帰ってきたら裸エプロン姿で出迎えて『お帰りなさい、あなた。ご飯にする? お風呂にする? それともあ・た・し?』と――」

 素早く身をかわしたところへ、黒タイツの一閃が宙を切る。続けざまに突きと蹴りが繰り出されるが、この程度でやられるようでは更識家の当主は務まらない……とはいえ、さすがはブリュンヒルデ。コンマ数秒差の鋭い攻撃には圧倒されます。一夏さんを美味しくいただくには、この義姉は越えねばならぬ大きな壁ですね。

にしても、キックの直撃を受けたわけでもない山田先生が鼻血を噴いて倒れているのはなぜ? どうして? Why?

378 :パトラッシュ:2012/09/16(日) 10:05:10
※書き終えて気が付いた。一夏が出てこない……今回は伏線の回だったので、ご容赦を。wiki掲載は自由です。

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最終更新:2012年09月22日 16:23