593 :第三帝国:2012/09/22(土) 18:01:53
本編より未来の話になりますが投稿します
未来ネタSS~「帝国海軍の白い悪魔」
異なる歴史を歩み出した第二次世界大戦が終結してから約半世紀の時が過ぎても、この世界から争いは根絶していなかった。
日本とナチスドイツとの冷戦、という要素は90年代の雪解けの季節により核を投げ合う可能性は低くなり、大規模紛争の芽はなくなったが。
相勢力の間に広がる隙間と言うべき地域。
すなわち第三世界では、かつて『敵の敵は味方』の理論で代理戦争を演じたことに加え、
国内における民族、宗教、国家の問題は未だ解決しておらず周辺地域を巻き込んで紛争が絶えなかった。
これらに何らかの形で第三世界に関わっている2大勢力は
常に覇権国家として行動していたために恨まれるのは当然の節理であり。
太平洋を中心に覇権国家の道を歩んでいる大日本帝国は、
アジアを中心に史実
アメリカの苦労を体験し、
欧州を半ば支配しているドイツ第三帝国は東欧やロシアで史実ソ連の苦労を体験する羽目に陥っていた。
そして00年代に突入すると朝鮮独立党を名乗るテロ組織によって実行された地下鉄サリン事件を皮切りに、
世界各国でこれまでの紛争とはまた一味違う低強度紛争状態へと投入した。
テロの対象は枢軸、連合国と世界を二分する勢力へと向けられており。
標的とされた二大勢力はテロ撲滅を名目にお互い手を結び、先の見えない戦争へと投入したそんな未来の話である。
旧アメリカ合衆国ルイジアナ州の。
ミシシッピ河口に存在するニューオーリンズはその交通の要所ゆえに発展した都市で。
南北戦争ではそれゆえ、双方の軍が激突した場所でもあった。
しかし、アメリカ人にとって津波から始まった悪夢の第二次世界大戦、その後の
パンデミックで一度壊滅してしまうが。
アメリカ風邪が一度落ち着くと、既に勢力拡大に限界を感じていた枢軸に。
カリフォルニア共和国を始めとする太平洋沿岸以外に深い入りする気がない日本。
さらには、双方が大陸における戦争を回避することを希望し、非武装中立地帯を欲していた要素が重なり。
国連自由都市として独立することに成功し、ロクな産業がなかったためギャンブルを解禁し。
60年代以後は枢軸、連合による冷たい戦争があっても、自由都市の名目ゆえに第三世界の立ち位置を維持することができ。
かつ、大陸で秩序が整ったために東西アメリカから観光客を寄せ付ける悪徳の街として栄えた。
だが、悪徳の街ゆえに表通りから一歩踏み出せば闇の世界であり。
枢軸、連合の双方のスパイが蠢き陰謀が繰り広げられた。
黒人解放運動の70年代年に合わせるように東アメリカで有色人種による解放運動が勃発したが。
史実のように人権概念が発達していなかったために東アメリカ諸国ではより過酷な弾圧だけでなく種族的断種を含めた『漂泊政策』を打ち出した。
そして、迫害された彼らは近くにある国連自由都市ニューオーリンズに逃げたが、
元々アメリカにあった人種差別感情はここでも根強く残っており、対立するのは当然の結末であり。
結果、当初はただの停電であったのがある事件が起こると。
数十人規模の銃撃戦が勃発し、やがて数千人規模のものへと発展し。
ついには内戦へと発達してしまい、秩序は崩壊してしまった。
そして、そんな場所だからこそ枢軸、連合を恨む組織が拠点を作るのは自明の理であり。
自由都市が崩壊した後、史実のアフガニスタンよろしく長年放置されてきたが、00年以後。
国際的テロリストの根城としてやり玉にあがると日本、ドイツは覇権国家の面子を汚した薄汚いテロリストを叩くべく手を結ぶ。
得られた情報を元にテロリストの首脳部を逮捕するために、
正規軍でなく特殊部隊が選抜され。日本から海軍特務陸戦隊、ドイツからはブランデンブルク部隊を用意した。
そして、計画では夜間密かに回転翼機で首脳部が潜んでいると思われるアパルトメントとホテルに屋上から突入。
あらゆる障害物を排除して、首脳部を拘束した後に回転翼機に連行、終わるはずだった・・・・。
594 :第三帝国:2012/09/22(土) 18:02:40
「大尉殿、囲まれています!」
厳つい下士官が対戦車ミサイルをかついでいた民兵を射殺しつつ叫ぶ。
「そう、しかかたがないよね」
大尉と呼ばれた人物が低倍率光学照準に捉えた民兵を薙ぎ払い答える。
既に彼女だけでも最低10人はこうして射殺したが装備も人員も劣悪にも関わらず次からへと湧きでる。
どうしてこうなったか?
答えは簡単だ、肝心な首脳部の顔が分らなかったため探し回った挙句。
日本人とドイツ人が大嫌いな連中に囲まれてしまったからだ。
その数は彼女が目視できる限りで100以上はおり。
全体的には軽く1000を上回る規模の民兵がアパルトメントを包囲しているだろう。
回転翼機は目立つ目標だったがゆえに即座に対戦車ミサイルで撃墜され、
航空支援は市街地ということもあり却下されこうして籠城戦をしているが弾薬が尽きるのは恐らくこちらが先だ。
その後の未来は簡単に想像できる。
男は裸にされた上でひきずりまわされ、女性である彼女は散々凌辱された上で殺されるでろう。
「でも大丈夫だよ、私たちには『お友達』がいるから」
蛙食いが牛のような言葉、
と表現するドイツ語で罵りながら応戦しているブランデンブルク部隊の精鋭にウィンクする。
新兵時代からの付き合いがある下士官は仮想敵国の特殊同士肩を並べて戦うという奇妙な状況もあるが、彼女の意図に気付き心配そうに見る。
「大丈夫、後始末はクソ上司とはやてちゃんに任せるから」
大丈夫だ、問題ない。とばかりに笑顔を浮かべる。
「好き好んで軍人になる奴は死を覚悟するのは当たり」と言い前常日ごろから容赦なくこき使い。
有能な軍人であると同時に鷹揚にして小人物、偽善者であり同時に偽悪者、傲慢でありながら小心で卑屈な
某華族出身の上司を書類と根回し地獄に落とせるならばこれ以上の愉悦はないとばかりにアーヴの微笑みのごとく実に、実にいい笑顔を浮かべていた。
対する下士官、猪口は半ば諦め気味に「あの人も苦労するな」と呟いた。
「じぁあ、少しお話ししてくるね」
鉛弾が飛び交う中をまるで、
これから親しい友人とお茶でもするような足取りでドイツ側の指揮官の方に歩く。
ひと際背丈が高く、熊のような体格をした男が忙しなく支持を出していたが、
自分に近寄って来る人物を認めると、男爵薯のような厳つい顔を高町なのはに向けた。
特殊部隊というよりも騎兵武将に似合う彼の瞳に理知的な物が宿っているのを感じ取り。
優しい巨人ね、とかつて人のために役立ちたいと願い。
魔法との奇跡に出会わなかった高町なのはは内心で呟き。口を開いた。
「ねえ、少し『お話し』しようか」
この後、建物ごと爆破される前に日独で肩を並べて突破し、
ソマリアを題材とした某映画のごとく徒歩で拠点まで強行突破を果たした。
しかし後始末のさい、
下士官が懸念したように民間人を巻き込んだ大規模市街戦に突入したことと、
仮想敵国の特殊部隊と肩を並べて戦った件について疑惑と責任問題が発生した。
上司は有能だが問題児の部下を罵りながら書類と根回し、説明責任のために東京とアメリカを往復し。
参謀を務めていた古い馴染みは『なのはちゃん、ほんま堪忍して!』と栄養ドリンク片手に涙眼になりつつ書類を処理したそうだ。
おわり
最終更新:2012年09月22日 22:52