669 :①:2012/09/26(水) 21:36:38
takaさんとヒナヒナさんの短編を読んで支援の支援。
彼らはこの光景をどう見るのか…
駄文でまとまりがありませんが。

「時の翼」

ベルリン―この地がこう呼ばれるようになったのは、最初に住んだ人々が湿地の中を歩く熊の親子の姿を見たからだという―


その男は黄金の女神像の肩に座り、街を眺めている。

目に映るのはモノクロームの風景。
ずっとその色でしか彼は街を見ていないが、最近とみにモノクロームが強くなったような気がしている
最近古い建物が壊され、新しい建物が建てられたにもかかわらずである。
少し前の方が、モノトーンは様々な濃淡を現していたのに、単調なモノクロームがきつくなっていった。
旗は翻っているが、記号に丸。ごく単調だ。
人々の姿も、特に男の姿は単調極まりない。

彼の耳には様々な人々の声が聞こえる。
だが最近はパッとしない。人々が悩むのはつまらない政治的なことが多い。
だからむしろ人々のささやかな悩みが貴重になってくるほどだ。

彼の姿が見える子供たちも、本当に幼い頃にしか彼を見つけてくれなくなった。
最近の子供たちはすぐに大人になってしまう…

座り込んでいる男の傍らに、別の男が現れる。

「やあ、ダミエル」
「やあ、カシエル。図書館に行ったんじゃないのか?」
「最近の図書館はつまらなくてね、そちらこそ街を歩かないのか?」
「最近はモノクロームが強くてね」

二人の男が黄金の像の上で黙り込む。

「そういえば、さっき人を見たよ。胸に丸印をつけた人だ。この町の人間じゃないようだ」
「僕も見た。前に星印をつけていた人から生まれた子供とあの記号の紋章をつけた少年が話していた」
「どうしてこの街は人間に記号や紋章をつけたがるのかねぇ?」
「そのおかげで街はどんどんモノクロームになっていく気がするよ…人間は鮮やかな色が好きじゃなかったのかねぇ?」
「どうも丸に記号をつけた旗が翻るようになってからだね、モノクロームが強くなったのは」
「それに図書館もつまらなくなったな」
「本当にこの街はつまらなくなっていく、あの記号のおかげで…」

ますますモノクロームが強くなっていく世界に、やるせない表情で背中に翼を持った二人の男は溜息をついた
黄金のジーゲスゾイレの上で。

彼らはまだその色を知らない。

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最終更新:2012年09月28日 20:12