- 321. 名無しモドキ 2011/06/03(金) 20:27:14
- 忘れられた戦場 マニラの夕焼け5 −巡洋艦ヒューストン 祝福されざる艦− 317-320の裏話になります。
アメリカ海軍重巡洋艦ヒューストンはノーザンプトン級重巡洋艦の5番艦で、長らくフィリピン海域での有力艦であっ
た。その近代的な艦影は、フィリピン人にも馴染みが深くアメリカの力を体現していた。
1942年10月18日夕刻、ルバング島の入り江に退避、偽装していたヒューストンは、その鬱陶しい偽装網を取り去った。
今や、美しかった白色の塗装を、やや青色の強いグレーにかえたヒューストンはボイラーの出力を上げだした。
「ワイト大尉、着任早々、ご苦労だが宜しく本艦を艦隊集結場所まで導いてくれ。」ルックス艦長は、ヒューストンの搭
載機で、明け方にマニラの司令部から着任した航海士のワイト大尉から敬礼を受けると握手しながら言った。
「全力を尽くします。」ワイト大尉はそう言いながら、ルックス艦長の節くれ立った手とその力の強さを感じた。
ヒューストンの航海士は、運悪く10月の初めに脳炎を発症して帰らぬ人となってしまった。このため急遽、マニラから
マニラ港で着低大破した給油艦ペコスの航海士であるワイト大尉が呼び寄せられたのだ。
出航は、23:00とされ、急いで乗組員に夕食があわただしく手配された。出航の3時間前に、艦内放送があった。
−ただ今より艦長が艦内視察を行う。総員、各部署で待機せよ。−
「ワイト大尉、航海の準備はととのったか。」放送が終わったあと、艦橋で、付近の海図の点検をしていたワイト
大尉にルックス艦長が尋ねた。
「はい、ペコスでのフィリピン海域での任務も長くこの海域も慣れています。問題はありません。」
「では、ワイト大尉、君もいっしょについてきてくれ。ヒューストとはどのような艦か把握して置いて貰いたい。」
そう言うと、ルックスはワイトと副官を連れて艦内視察を始めた。ルックスは3時間かけて艦内全ての部署を巡った。
どの部署でも、兵員は緊張して艦長を迎えた。ルックスは二三の質問をしてから、どこでも同じ内容の訓辞をした。
「諸君、この艦とアジア艦隊がホノルルに帰投できるか否かは諸君が、各自が、その部署で最善を尽くしたかどうか
どうかで決まる。そして、諸君の働きはアメリカ海軍が注視している。諸君らが海軍軍人として決して後ろ指をささ
れる存在でないことを、この航海で証明して欲しい。」そして、艦長を目映そうに眺める兵員一人一人と握手をした。
(これが、噂のヒューストンマフィアか)ワイトはその光景を見て思った。ルックス艦長のカリスマ的魅力で、ヒュ
ーストンは独特の雰囲気を持った艦となり、兵員はルックスの命令ならば天国へも航海するだろうと噂されていた。
「艦長、先ほど、小官のヒューストンへの乗組員名簿への手続きができないと言って主計課の事務官に断られのです
が、なにか私に不都合な点でも?」ワイト大尉は、艦橋への帰り道にルックス艦長に尋ねた。
「わたしが、そう指示した。ペコスは、まだ除籍処分になっていないだろう。だから、君の所属はペコスのままで、
ここには、臨時に乗り組んでもらったお客だと思ってくれ。書類上は君はこの艦に配属されてはいない。しかし、
仕事は一人前以上にしてくれよ。」ルックス艦長は、それ以上の説明は無用という口調で答えた。
「ルックス艦長、気のせいでしょうか。士官や下士官が多いように思えますが?」ワイト大尉は質問を変えた。
「気付いたか。この艦は一種のテスト艦でな。士官は全体の14%、下士官は41%を占めている。兵員も二年未満の
者はおらん。そして、同型艦のルイビルより200名近く乗組員は少ない。将来を考えた少数精鋭の配置だ。仕事はき
ついが、居住性は海軍有数だ。」ルックス艦長は始めて笑いながら答えた。
「さあ、諸君、持ち場につけ。出航だ。」ルックス艦長が艦内放送で命令する。
「イエッサー。艦長。」艦が震えるほどの返事が返ってきた。
出航後間もなくヒューストンは、同じくルバング島近海にひそんでいた駆逐艦モフェットおよびダンラップと合流した。
「今時、駆逐艦2隻の護衛とは豪勢ですな。」ワイトは、味方識別信号をおくる駆逐艦を見ながら言った。
「護衛しているのはこちらで、やつらの任務は監視だ。」副長が呟くように言った。
「ルックス艦長、今回、ほとんどの主力艦が、ルソンで補給、休養を受けられたのにヒューストンだけが、何故、あん
な入江に追いやられてたんですか?」難しい顔をしているルックス艦長に、ワイト大尉は話題をかえるつもりで聞いた。
「停泊施設のキャパシティの問題だ。本艦も補給は十分に受け取った。」ルックス艦頭は益々、険しい顔で答えた。
- 322. 名無しモドキ 2011/06/03(金) 20:31:53
- 「先月、ミンナダオに退避した時も、ヒューストンだけは、港湾に入らずに沖合で停泊してたと聞きましたが?」ワイト
大尉は、少し迷ったが思い切って、ちょっとした疑問をぶつけた。
「同じく、キャパシティの問題だ。誰かが苦労を背負い込まねばならない時は、本艦はそれを率先して果たす。これが、
ヒューストンのモットーだ。それより、艦隊集結地点で、艦隊を待たせるような失態は許さんぞ。」
「大丈夫です。時間前に、燃料の消費も最低限に抑えて到着させます。」ワイト大尉は敬礼しながら答えた。
ワイト大尉が自慢するだけあって、ヒューストンはシブヤン海の艦隊集結海域に予定よりも、少し早く到着した。や
がて、マニラ方面から最後の補給を終えて、戦艦オクラホマ以下の戦艦部隊と空母ヨークタウンを中核にした主力部隊
が水平線上に姿を現した。連絡を受けたようにヒューストンは戦艦部隊の前衛の位置についた。
「ワイト大尉、ヒューストンは同型艦のルイビルとともに、戦艦部隊の直護任務を遂行するために、戦艦部隊と行動を
共にする水上打撃部隊に編入された。日本艦隊と水上砲戦になれば、敵水雷戦隊の撃滅が任務であるが、場合によって
は、いち早く敵艦隊に接近して敵戦艦の砲撃を妨害することもあるから覚悟しておきたまえ。」ルックスは艦橋にいる
者全員に聞こえるように大声で言った。
艦隊は、狭小なサンベルナルジノ海峡にさしかかる。アジア艦隊の規模になると衝突の危険性が増すために昼間突破
が望ましいが、日本軍から身を隠すために単縦列となり慎重に夜間突破を行う。幸いに艦隊は無事に、太平洋に進出できた。
「さあ、今日は忙しくなるぞ。」ルックスは太陽を迎えた水平線を見て言った。
「まだ、発見されていないのでは?発見されても、逃げ切れるかもしれません。味方偵察機の情報では、艦隊から100海里
以内には日本艦隊はいないそうです。」副長が、意外そうに聞いたが、ルックス艦長からの返事はなかった。
「飛行機なら200海里でも1時間でくるさ。」大分、間があいてルックス艦長が答えた。
「飛行機の攻撃が鬱陶しくても、敵艦隊が接近するころには夜になりますよ。」副長以下、艦橋の将校には飛行機が大型艦
に重大な損傷を与えるといことはまだ予想外の事態だった。
「艦長、オクラホマより発光信号です。方位、100度、110度、115度へ索敵機を放てです。」信号員が知らせてくる。
「了解と返信しろ。」ヒューストンは四機の水上機を搭載できるが、一機はエンジン不調でルバング島へ残してきたため、
ルックス艦長は残りの三機を発進させた。
「敵機らしきもの、4時の方向。」シーガル水上機を発進させたと思うと、見張り員が報告してきた。
「朝に強い奴らだ。あれは、空母からの艦載機だな。まだ、暗い中で発進したのか?すると、アイツは名のあるパイロッ
トかもしれんな。」ルックス艦長は、双眼鏡で日本機らしきものを見ながら言った。彼の常識では、空母からの夜間発進
は、超熟練搭乗員のみが行うことのできる難度の高い行為である。
「敵編隊が二時間か、三時間で来るぞ。」ルックス艦長は何時までも日本機を睨みつけていた。この後、複数の日本機が
艦隊周辺を常に飛びまわった。
太陽がのぼり、快晴の天候になった。
「どこからも丸見えだな。」雲一つ無いような空を恨めしげにルックス艦長が
「ベイル少尉から連絡です。敵艦隊、方位102度、280海里、戦艦4隻、空母4
隻以上、他多数との連絡です。」通信将校が艦橋へ報告に来た。
「よし、今日、最初の武勲者だ。で、連絡はそれだけか?」
「はい、この後、連絡を絶ちました。・・ベイル少尉は戦死しました。」通信
将校の目は涙が溢れていた。
「無線機の故障かもしれないぞ。」副長が声をかける。
「わたしには、分かります。ベイル少尉は・・。わたしにとって彼は最高の・・。」
通信将校は声をつまらせながら言い続けようとしたが、ルックス艦長が遮った。
「君はヒューストンの士官だ。義務を果たしたまえ。後の二機からの報告は?」
「ブラウン中尉、ロイ少尉機ともに、8時10分以降、全く連絡がありません。」通信将校は、はっきりした口調で答えた。
「オクラホマも受信したか確認しろ。事前の規定により、見つかった以上は無線封鎖は解除だ。」
- 323. 名無しモドキ 2011/06/03(金) 20:35:08
- ヨークタウンから攻撃隊、艦隊護衛の戦闘機が発進すると艦隊の緊張感は最高レベルまで上昇した。
「敵編隊約200機以上、3時の方向より近づきます。距離10マイル、高度8000フィート」見張り員が、けたたましく電
話で知らせてくる。
「対空防御戦闘用意、いいか、決して戦艦にあいつらを近づけるな。」ルックス艦長は帽子を被り直すと、艦橋司令室
の中央にある椅子に座った。
「味方、戦闘機、敵編隊に接近。」見張り員の報告で、戦いの火ぶたは切られた。
F4Fの編隊は、日本戦闘機との戦いによって、大空に見えない壁があるかのように、日本攻撃機編隊の前で次々に煙を
吐き出し、または、四散した。
「くそ、あれじゃ、高角砲から日本機をカバーしてるようなもんだ。敵わないならのいてろ。」当直士官が地団駄を踏む。
「敵機、3時、6時方向より接近。それぞれ、6機です。本艦を狙っています。」見張りが絶叫する。
戦艦を真っ先に狙うというルックス艦長の予想は裏切られた。慌てて高角砲、対空機銃が発射されるが、精鋭を誇るヒュ
ーストンの兵員でも、予想以上に素早い日本機の機動に追従できずに大きく曳光弾の弾道はそれる。
「ロケットを発射しました。突っ込んできます。」その声が言い終わらないうちに、艦橋下部に二発、側舷に四発、後部
高角砲に2発のロケット弾が命中した。残りは艦スレスレを白い煙を残して飛んでいった。
艦橋は、ロケット弾に残った燃料が四散したことで起こった火災の煙で視界が塞がれた。
「被害報告をしろ。」副長が各部署に要求する。
「艦橋右甲板で火災現在消火中」「前部士官室火災発生、消火班急行中。」「三番高角砲被弾戦死2名負傷者多数、砲は
破損しました。」「銃撃でカッター破損、3名死亡。負傷者2名」「前部右舷機銃破損、負傷者4名。」ルックス艦長は
一撃にしてはあまりの被害の多さに唖然とした。
「くそ、どさくさに紛れて銃撃までしていったのか。くそったれ!」当直士官が咆哮する。
「ヨークタウン被弾しています。」見張りの声で気付くと後方を航行していたヨークタウンの飛行甲板が大きくめくりあ
がり、甲板全体と側面の開口部から激しい炎と煙を吹き出している。船体が右舷に傾いているようにも感じられる。
「敵機多数、こちらに接近中。」「敵機三機、急降下。本艦を狙ってます。」戦艦を狙うというルックス艦長の判断を裏切り
またしても日本機はヒューストンに攻撃を加えてきた。
「どうやっても護衛から始末するつもりだ。取り舵30度。」必死でルックス艦長は回避を試みる。「敵機、爆弾投下!」
六発の800キロ爆弾が、数秒の間隔で至近弾となってヒューストンを水柱で覆い隠す。特に前部砲塔付近で爆発した一発は、
右舷の船体に亀裂を生じさせて浸水をもたらした。
「右舷に雷撃機4機。魚雷投下しました。」水柱による視界不良が、雷撃機の接近報告を致命的に遅れさせた。
「面舵60度」「間に合いません。」
ヒューストンの右舷中央部と同じく右舷前部砲塔付近で、アメリカの潜水艦用魚雷並の炸薬量を持つ航空魚雷が炸裂した。
ヒューストンは、一瞬大きく左舷に傾いた。
衝撃で倒された艦橋にいる者達が、ようやく起き上がるとヨークタウンが次々と被雷する光景が見えた。
「前部ボイラー室と主機室に浸水。主機停止。前部右舷に甚大な浸水、防ぎきれません。」後部司令室でダメージコント
ロールを担当している副長が報告してくる。一連の戦いの中で、自分の居場所に困っていたワイト大尉は、はっきりヒュ
ーストンが速力を減じて右に傾いていることに気づいた。
「浸水した右舷水密区画を封鎖、左舷注水区画に注水しろ。」ルックス艦長は間髪を置かずに命令を出す。
「注水バルブ付近全体が火災で接近出来ません。」副長が悲壮な声で報告してくる。速力低下と艦の傾きは、それと分か
るほどに急激になってきた。注水ができなければ傾斜して戦闘力を失い、なぶり殺しになるとワイト大尉は覚悟した。
「ヨークタウン沈没」「アリゾナ大爆発!沈没します。」「オクラホマ連続被弾」次々と艦隊の窮状が報告される。
「注水開始しました。」副長が報告してくる。
「火災が鎮火したのか。」ルックス艦長は訝しげに聞いた。
「ハストン曹長が、バルブのある区画に飛び込みました。彼が操作したようです。区画は激しく炎上してます。多分・・。」
ヒューストンは動力部の半分を失い大量の海水を飲み込んだために、艦隊からどんどん置いていかれる。
「9時に敵編隊です。」血に塗れた見張り所から、残った見張員が大声で知らせてくる。
- 324. 名無しモドキ 2011/06/03(金) 20:42:30
- 「対空砲火はギリギリまで我慢する。俺の命令があるまで撃つな。本艦に敵を誘引する。」
ワイト大尉はルックス艦長の闘志に舌を巻いた。このような状態になっても、まだ艦隊のために戦闘を続けるのか。
ルックス艦長の狙い通りに、落後しだしたヒューストンに攻撃が集中した。まず、4機の戦闘機が低空からロケッ
ト攻撃と銃撃を加えた。速力の低下したヒューストンは12発のロケット弾を被弾する。そのうちの3発は艦橋付近に
着弾して、至近弾で割れた防弾ガラスの穴から破片を司令室にばらまいた。その破片は、ルックス艦長の腹を抉った。
間髪を置かずに、急降下してきた二機の攻撃機は、後部三番砲塔に800キロ爆弾を直撃させた。三番砲塔は、砲塔内
の誘爆も重なり文字通り木っ端みじんに吹き飛んだ。その破片が四番高角砲を破壊するなど、後部にある多くの対空火
器は使用不能になり、後部脚檣は崩れ落ちて後部は廃墟同然になった。そして、右舷主機室壊滅後、頼みの綱となった
左舷主機室にも被害が及んだがギリギリ火薬庫は被害を免れた。さらに三発の至近弾は、ヒューストンの浸水を悪化さ
せるが、ようやく敵編隊は去っていった。
ワイト大尉が呼んだ軍医が血にまみれた腹を手で押さえているルックス艦長を床に寝かせて応急処置をしていると、
再び敵編隊接近の報告があった。
「椅子に座らせてくれ。そこが俺の席だ。」苦悶の表情を浮かべながらもルックス艦長は自分で起き上がろうとする。
「ワイト大尉、君の航海技術はたいしたものだ。これからもアメリカ海軍に尽くしてくれ。もう、次の打撃にヒュース
トンは耐えられない。カッターは無くなったが、ゴムボートは残っているだろう。君は一人で本艦から退避しろ。」
「しかし、何故わたしだけが?」ワイト大尉は、軍医と二人でルックス艦長を椅子に座らせながら聞いた。しかし、
ルックス艦長は苦しげに首を横に振るばかりで何も答えなかった。
「あんたはここに居てはいけない人間だからだ。・・ビリー、ここに来てくれ。」当直士官が、艦橋詰めの若い主計
少尉に声をかけた。少尉はすこし困惑した顔をしたが、当直士官に近づいた。当直士官は少尉に口づけをした。
「わかったかい。俺たちは海軍、いや世間でも忌み嫌われる存在なんだ。でも、ルックス艦長は、ハート提督を始め
お偉いさんを説得して、俺たちを引き受けるいう約束で海軍に居れるようにしてくれたんだ。ここだけが、俺たちの
居られる場所で、ここ以外に行くところなどないんだ。日本軍なんかに、このヒューストンを絶対に沈めさせはしない。
ワイト大尉、あんたは退艦してくれ。今から俺たちの最後の戦いが始まる。どんな海軍軍人より勇敢に戦う。見た
ままの俺たちの戦いをバイ提督に報告してくれ。そして、これは忠告だ。人に嫌な噂話を立てられたくなかったら、
この艦にいたことは黙ってるんだぞ。俺たちはアメリカもアメリカ海軍も愛してる。ただ少しばかり人とは愛する対象
が違うだけなんだ。理解はしなくていい。さあ、早く行け。」そう言う当直士官の手には拳銃が握られていた。
ワイト大尉は攻撃が開始される直前にゴムボートで、微速でしか動けなくなったヒューストンからオールを漕いで離
れた。この後、ヒューストンはロケット弾や銃弾を標的のように打ち込まれて至る所が炎に包まれた。煙突付近に大型
爆弾が命中したヒューストンは魚雷が誘爆したのか、さらに大きな爆発を起こして様々な破片と人間をまき散らし炎と
黒煙を吹き上げた。煙突はなくなり、ヒューストンの中央部は燃えさかる廃墟と化した。激減した対空兵器にかわって
武器庫から調達してきたのか、サブマシンガンや小銃で兵員達が敵機に立ち向かう。兵員は、次々と銃弾や爆風に倒れ
ていくが誰一人艦を見捨てる者はいない。その光景にワイト大尉の目から止めどもなく涙が流れる。
両舷に一発づつの魚雷が命中して沈下を始めてもヒューストンは、銃弾を打ち上げて抵抗する。艦内では大勢のハス
トン曹長のような男達が少しでも沈没を遅らせようと命を投げ出しているにちがいない。大火災に包まれたヒュースト
ンは、ついに火薬庫に火が回った。そして、書類上は一人の生存者もなく船体が二つに裂けて爆沈した。
ワイト大尉は、彼らに敬礼をした。あの当直士官の言うように、彼らを理解はできなかったが「傍らにいる愛する
者の為に戦う男が最強の戦士」であることは理解できた。
ワイト大尉は、万を越えて海に投げ出された乗員の中で、飛び切りの幸運により2隻だけ残った駆逐艦のうちのス
チュアートに救助される。しかし、当面安心できる基地に辿り着くには、まだまだ試練が待っていた。
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最終更新:2011年12月31日 18:02