227 :ヒナヒナ:2012/10/15(月) 20:53:46
※超ネタです


○今日もドイツは平和です

「逆行者? 精神だけ時間をさかのぼってきた? 寝言は寝てから言いたまえ」

夢幻会の情報チートを支える秘密は時間とともに情報通たちの間には微妙に漏れだしていた。もっともそれを聞いた殆どの人間は上記の様な事を言って「はいはい、ワロスワロス」と流していた。国家運営を担う彼らとて暇ではないのだ、主に日本から絶え間なく与えられる経済・政治圧力の所為で。

しかし、これを幸か不幸か残念か、半ば本気にしてしまう人々が居た。ドイツ帝国である。総統ヒトラーからして史実末期ほどではないにしろ、神秘主義に傾倒しているのだ。一部部下たちがそういう色に染まっているのは十分に考えられる事態だった。

そこだけ煌びやかに整備されたとある古城の城内で、金髪碧眼の男たちが話し合っていた。

「日本人はアジアの変異種である。その変異の謎を解けば、この欧州の地で我々アーリア人の優越を完全なものに出来る」
「我々が直接指導している以外は、周辺に碌な国がありませんからな」
「紳士気取りのジョンブルや、未だに人数だけは立派なイワンども、問題を起こすしか能のないフランス人、女と酒にしか興味のないイタリア人……」
「その話はもういい、それより日本人の秘密が我々アーリア人に適用できるのなら、試してみる価値はある。で、何故か聞き出せたその秘密とは?」
「夢幻会は、未来から信託を受け、精神だけ時間をさかのぼってきた人間ということだ」
「…………」

「いや、しかし」とか「流石にそれは」とか「ねーよ」とかいう声は聞こえるが一部の出席者はちょっと目がやばかった。神秘主義傾向のある騎士団員はちょっと信じても良いかな。などと考えてしまった。

不味い事にその話を聞いた総統は、小康状態であった中二病をこじらせてしまったのだ。日本が何らかの霊的技術を習得しており、それにより今までの躍進が説明できるのではないかという考えだ。その背景には、それこそもはや神がかりではないかというような巧みで悪辣な経済政策や、津波を起きる事を予見していたかのように原因である島を手に入れていることがあった。霊的な結論にでも飛びつきたい気分にもなる。とりあえず、その日はヒトラーが自分語りを始めてしまい、騎士団会合はそれでお開きになった。しかし、興奮冷めやら総統は自らに忠実なSS親衛隊長ヒムラーを呼び出し、この件について相談した。

228 :ヒナヒナ:2012/10/15(月) 20:54:17

「日本には逆行という霊的概念があるそうなのだが……」
「霊的な顕現ならば失われた古代アーリア教にもヒントがあるに違いありません」
「ほう、何かあるのかね?」
「黄色人種の変り種である日本人ですが、我々も白色人種の中で最優なアーリア民族であり、霊的な加護についても決して劣るものではありません。アーリア人は古代より欧州に栄え、霊的・精神的にも……(中略)……なかでも聖杯は、キリスト教がより古い歴史を持つ古代アーリア宗教から強奪した物であり、必ず我らアーリア人が見つけ出して取り戻さねばならぬものです。国中の古城にキリストの聖杯を探させましたが、残念ながら発見はできていません。これはアーリア人に霊的加護を与えるものであり、人類の文化財たる秘宝は我らが優秀なるアーリア人が管理すべきです。」
「……う、うむ、では任せたヒムラー(こいつやべーよ)」
「はっ、ではSS親衛隊の中から精鋭フォーゲル大佐の部隊を連れて行きます。」

ハイルヒトラーと、腕を斜めに捧げて敬礼した後、ヒムラーは意気揚々と探検の準備に出て行ってしまい。自分より数段各上の中二病患者の底力を垣間見て、ドン引きして素に戻ったヒトラーだけが残された。逆行者云々の論旨がすり替わり、霊的な何かを探しに行くことになっていた事にヒトラーが気がつくのは、だいぶ後になってからのことであった。

さすがに霊的な解釈という話を表に出すのは憚られたのか、ヒトラーはヒムラーを秘密裏にドイツ帝国の霊的な加護を齎すためにひっそりと探索隊として送り出した。そして、史実でも屈指の中二病患者であったヒムラーはSSを引き連れて、国外まで不老不死の霊的秘法を求めて聖杯を探しに行ってしまった。
それを鼻で笑いながら見送ったラインハルト・ハイドリヒは、ユダヤ人の隔離とアメリカ大陸への輸送、混血児の処理・隔離地の選定、純潔アーリア人の保護など、現実的な人種問題解決法の検討を行っていた。

ヒムラー達が回転床暖炉のある部屋や、トルコ南部の砂漠地帯でドンパチを繰り広げたかは定かではない。


○あとがき
夢幻会員は逆行者という話が某国首脳部に伝わったら……という話。ここらで一本、頭の悪いネタ話を書きたかった。反省はしない。
ヒムラーや金髪の野獣さんを出してみたのだけれど、史実より倫理観がダメダメなので普通に見えてしまう不思議。

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最終更新:2012年10月16日 22:36