234 :ヒナヒナ:2012/08/28(火) 19:34:46
クロスssですので、お嫌いな方は注意してください。
○嗚呼、我ら地球防衛ぐ……あれ?
「私はさっきまで議長デスクに座っていたはずだ」
連日連夜の会議にうっかり統合参謀本部長席のデスクに伏して居眠り、というか半ば失神したのは、記憶系列上ではつい先ほどのこと。机に伏していたという無理な体勢で寝て居ても節々が痛まないことを考えると、半日以上経過しているということは考えにくい。かつて参謀としてガミラス帝国の手から地球を救い、その後の戦役でも事務屋として功績を挙げて議長へとランクアップし、事務職の頂点を極めた男はぶつぶつと「誘拐?いやそれにしても妙だ。机周りが微妙にアナログだし……」と呟いていたが、ふと気がつく。
席の後ろには旗が二棹。一つは風も無く垂れ下がった状態でも見間違えようのない旗、日の丸。議長はもう一つの薄い青地の旗の縁を摘んでよく見えるように広げてみる。旗の中央にはエンブレムの様な意匠、中央に正射図法で描かれた円形の地球地図、周囲は柏葉で囲われており、EDF(Earth Defense Force)の文字が……
「……地球防衛軍違いかよ」
怒声とともにサイドボードをひっくり返し、錯乱したとして部下達に取り押さえられる1分前のことだった。
*
「2013年に地球外生命体と接触、便宜的にフォーリナーと呼称。今は西暦2015年、今年の4月に地球防衛軍、EDFが設立されました」
「ペイルウイングは開発された形跡がありません。ペリ子の黒いパンツが……」
「北米支部で決戦要塞の開発が始まっています。その他、日本支部の開発班では二足歩行バトルマシンの開発が進んでいます」
「このままいけば2017年にフォーリナーのマザーシップとの接触が予想されます」
「つまり此処は『地球防衛軍3』の世界ということか」
部下たちの言葉を、議長、改めEDF日本支部のトップである司令はそうまとめた。司令がこの世界にログインした3時間後、部長の行動はオーバーワークのための一時的な錯乱と判断され、事なきを得た。そして、同じくヤマト世界に転生してから、さらにこの世界の人物に再び憑依(?)したであろう戦友たちが、話を聞きつけて集まってきたのだ。
235 :ヒナヒナ:2012/08/28(火) 19:35:39
「皆とこの世界でも会えた事は非常に心強い。……が、なんで事務職ばかりなんだ! そこは空気を読んで技術屋とかが来るべきだろ」
「前世補正です」
「私は戦闘職だったぞ、死亡フラグ満載のヤマト艦長を全うしたのに……なんでまたEDFの空軍指揮官とか!」
「議長……じゃなかった司令良かったですね。こままいけば現場指揮のできますよ」
「本部は現場じゃないだろJK。でも現場リーダーは第三艦橋より死亡率が高いし、若返ったといっても年齢的にきついし、まあ支部司令でも無線指揮はできるんだよな。前の一兵も指揮できない立場に比べたら……」
ぶつぶつと前世からの未練を未だに引きずっている司令であったが、自分を納得させると顔を上げる。黒い渋めのコートではなく白を基調とした赤いラインの入ったどちらかというと特撮的な格好であったが、もうこの際見栄えは諦めよう、と割り切りだした。
「というかヤマト世界のオリジナルキャラは来ていないのですね」
「真田さんがいれば、フォーリナーのマザーシップなんて一撃だったのに……」
「彼が居なくなったらヤマト世界が滅ぶぞ」
愚痴とも取れる話し合いが持たれ、現状の把握と今後の方針を決定していく。ベガルタをゲーム通りに開発させ、主砲しか武装のない戦車「ギガンテス」に機銃をつけたり、訓練計画の見直しと、次々に対策を立てていく。巨大蟻に溶かされたり、巨大蜘蛛の糸に巻かれて死ぬのは誰だって御免だ。
「空軍どうするよ。もうあれ要らないよな」
「一応私は空軍指揮官なのだが。さすがに空の守りを無くすわけにはいかないだろう」
「でもEJ24戦闘機とかかませだからな。いっそその予算でバゼラート編隊を……」
「ガラスの装甲にあの操作性だぞ。使いこなせるだけの練度の部隊を用意できるのか?」
「陸戦兵に持たせる携行装備どうする?」
「何気に携行武器も超兵器ばっかりだからな。この世界」
「フォーリナー技術がないと、ライサンダーもGGその他も不可能です」
「実はGGって波動砲なんじゃないか? きっと波動砲を振り回したらあんな感じになるんじゃないか?」
「携行波動砲って怖すぎる」
「津川海岸を要塞化できるように整備だけでもできないか?」
「戦時体制になってないのでEDFの一存ではできません。司令が日本政府と掛け合ってください。」
「ああ、あと緊急時の市民の避難経路を確保とか、その辺の主導権とかも詰めないとな。市民の避難先にヤマトの地下都市的なものが欲しいな」
「巨大蟻の巣穴になるフラグですね、分かります」
一通り現段階で出来る方策を決定した後、司令が気付く。
「そういえば、本部黒幕説があったが大丈夫なんだろうな」
「今のところ内通はありません。というかフォーリナーに通信・接触ともにできません」
「もしかして、あれは本部の罠というより、真面目に本部が無能だったのか」
「それはそれで恐ろしいのですが、日本的にはありそうで」
「ま、まあ、組織改善や他の支部との交流は円滑にしておこう」
司令らは地下司令部から中核となる陸戦兵の志願を募り(ストーム1探し)、開発班のケツを叩き、まともに戦える体制の構築を急ぐストーム1が活躍できる場を整えつつ、最後には主役頼りにする気満々であった。結局のところ彼らはモブの枠を出ないのだ。彼らは開き直り、いかに現場をサポートできるかに力を注ぐことにした。
地球の明日はどっちだ!?
(了)
最終更新:2012年11月18日 09:10