6 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/21(火) 20:44:19
―――――能ある鷹は爪を隠す
―――――古い諺
Utsu Wars Episord Ⅳ 前編
~死兆星の胎動~
遠い昔、はるかかなたの銀河系で…
アウター・リムは、辺境であり、未開拓地が多く、銀河帝国の影響力も強くなかった。
そのためウィルハフ・ターキンとデス・スターが、この宙域へ遣わされたのである。
彼らの目的は帝国の威光を反抗的な住民達に知らしめる事だった。
そして、反乱同盟軍が旗揚げすると、その殲滅が彼らの新たな仕事に加わった。
「最初の報告にあった惑星、ダントゥイーンは知っています。原作でも反乱軍が創立初期に指揮所を置いていました。
だがバレンズⅠ・Ⅱについてはウーキーペディアにも情報がありませんでした。おそらく我々の介入で運命にずれが生じたのでしょう」
不思議な爬虫類イサラミリの対フォース能力、それを分析・応用する事で出来たフォース減衰材―――
素材の向こうをフォースによる透視、予知、攻撃その他の干渉から守る―――で囲まれたデス・スターの特別会議室、
その中でデス・スターの3大司令官、すなわちターキン、モッティ、タッグと3人の最も信頼する部下達が話し合っていた。
ここにいる者達は皆"憑依者"であり、彼らは"
夢幻会"という組織によって強固に結びついているのである。
「記録を探ってみたが、バレンズ星系は今から50年以上前に貴金属の鉱脈が見つかり、
それ目当ての開発が行われたが、後先考えない乱掘によって地盤沈下が多発して死者が大勢出て……
その上鉱脈もそう大きくなかったためあっという間に枯渇して入植地ごと放棄されたらしい。
アウター・リムには良くある『忘れられた星系』だな。バレンズⅠとⅡは同じ軌道を公転する兄弟星。
どちらも大きさは"地球"とほぼ同じだが、恒星からの距離により気候は"火星"の方がずっと近いようだ」
"夢幻会"による会議のまとめ役でもあるターキンがスクリーンに問題の星系について情報を映し出す。
7 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/21(火) 20:44:56
「バレンズⅠ・Ⅱの軌道の外側には幅広の小惑星帯が広がってますね。しかし、なるたけ早期に攻撃すべきだと思います。
確かに従来のスター・デストロイヤーは小惑星帯に弱く、スペースデブリにも効率的な対処ができるミスティック・ドリーム級、
その3番艦と4番艦の竣工にはまだ時間がかかりますが、一旦反乱軍の基地が完成してしまえば厄介な事になります」
原作におけるホスの戦いでの反乱軍の奮戦ぶりから、モッティ提督は早期の攻撃を主張した。
しかし拙速に攻撃を仕掛けるよりも戦力の充実を優先し、しかる後に一転攻勢に出るべきだとする者もおり、
会議は中々まとまらなかった。原作で先制攻撃の多くが死亡フラグになっているのも意見の分裂の一因だった。
だが、この対立はターキンによる一言により唐突に終わった。
「バレンズに対して即座に攻勢に出る。その際はデス・スターを使う」
「「「な………!」」」
デス・スターの出撃。
それは惑星をも破滅させる事のできる究極兵器、スーパーレーザー砲が使われる可能性を示していた。
自分から死亡フラグを立てに行くのかと声を荒げる一部部下。しかしターキンはこれを制し、なおも続けた。
「勿論惑星を破壊するなどという真似はしない。だが小惑星帯を突破し、
短時間で惑星を制圧できるのはデス・スターだけだ。それに惑星破壊だけがスーパーレーザーの仕事ではない……」
「スーパーレーザーで小惑星帯を薙ぎ払うのですね?」
ターキンの言葉に、彼とは"長い"付き合いであるモッティがその考えを察する。
モッティ提督の答えにターキンはにこりとすると、続けてスクリーンを作戦図へと切り替えた。
8 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/21(火) 20:45:30
「スーパーレーザーをこの小惑星帯へ向け、出力7.6%で5回発射する。
連続砲撃もこの程度の出力なら炉心負荷も問題無いのは設計者に十分確認を取っており、
また小惑星を蒸発させるのであれば十分すぎる程の威力でもある。そして小惑星を"除去"した後に、
ミスティック・ドリームとインペリアル級2隻がバレンズⅠへ、インペリアル級3隻がバレンズⅡへ向かい、
敵の連携を阻止しつつ、陸軍を降下させ一挙に制圧するという正攻法だが……何か質問は?」
会議室を沈黙が支配していた。スーパーレーザーのこのような使い方は、正にコロンブスの卵的発想だったのだ。
「あの、1つだけいいですか」
沈黙を破ったのは、デス・スターの防衛を担当するカシオ・タッグ上級将軍だ。
ターキンが軽く頷きタッグに発言を促すと、タッグはバレンズ星系を横から見た図を指して言った。
「デス・スターの砲撃後、艦隊を公転面に対し垂直に侵入させてはどうでしょうか?
これなら小惑星帯の心配はありませんし、デス・スターの砲撃が向こうに対して良いブラフになりますが」
「いや……確かにその作戦も面白いし、彼らに一泡吹かせる事ができるだろう。しかし……今回は認められない」
ターキンの意外な返事に、タッグほか会議室の面々が首を傾げたり、顔を見合わせる。
「反乱軍との衝突はこれまでもあったが、いずれも1、2隻の小・中型艦艇や宇宙戦闘機群とのみの偶発的戦闘だった。
だが今回は違う。おそらくアウター・リムでは初めての全面的衝突となるだろう。この時にこのような奇策を使えば、
以後反乱軍の厳重な警戒を受ける事は間違いない。そしてこちらが策を弄しても容易に乗ってこなくなる事も考えられる。
しかしここで、敢えて力押しのような"頭の悪い戦い方"をすれば、反乱軍の油断を誘う事ができる」
「これから付け込み易くするために今は"脳筋"帝国軍を演じる、と?」
「その通りだ。分かり易い手にも引っかかりそうな敵を演じる事で、相手が使う手を分かり易いものにするよう仕向けるのもある。
またこのような派手な戦い方は皇帝の歓心を買い、嫌疑を薄める事ができる。さらに反乱軍側にとっても"帝国=暴力的な悪者"、
"反乱軍=悪に蹂躙される正義"というプロパガンダがしやすい。彼らは正義が大好きだからな。」
9 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/21(火) 20:46:02
夢幻会の基本方針において、例え技術チートをしても反乱同盟軍は殲滅しない事が決められている。
銀河帝国への対抗勢力が一時的にでも居なくなれば他のモフや皇帝との暗闘、最悪内ゲバが始まるのは目に見えているからだ。
また、帝国軍ではタブー視されている"表現の自由"を獲得したい夢幻会としては皇帝との対決はいずれ避けられなくなるため、
できればそうなる前に反乱軍ないしはルークかアナキンの手で皇帝を倒して欲しい、と思っているのもあった。
反乱軍に帝国と張り合える体力を維持してもらうにはこれが最適だ、と言うターキンの主張は受け入れられ、
惑星に接近するスター・デストロイヤー艦隊の布陣も、確実に脱出しようとするだろう宇宙船の通り道をわざと残した形となった。
こうして、反乱軍に対する攻撃準備は慌しく始まった。
モッティ提督とニーダ艦長の精鋭艦隊、ヴィアーズ率いる強力無比の地上軍、
そして一騎当千の戦闘能力を持つデス・スター。銀河帝国における夢幻会の持つ戦力全てが、
原作に無く、防御に優れた厄介な星系に陣取った反乱軍を"追い出す"べく動いていた……
~to be continued~
10 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/08/21(火) 20:46:54
今回の投下はこれで終了です。
Q.何でオリ星系出したの?
A.下手に原作にある星系(特にマイナーな物)を出すと、
星系について把握してない部分で矛盾が生じる恐れがあったから。
Q.『銀河帝国で表現の自由がタブー視されている』という根拠について
A.クローンウォーズとかではクローン兵の装甲服は赤青黄色など割と色彩があったが、
ストームトルーパーの装甲服はモノクロ、辛うじて砂漠装備に少し橙がある位だったから。
痛戦艦どころか痛機すらとてもできそうにないです><
最終更新:2012年11月18日 10:24