136 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/01(土) 22:52:44
バレンズ星系には、惑星が2つしかない。それぞれバレンズⅠ、バレンズⅡと呼ばれる。
元々は4つ惑星があったのだが、銀河帝国の成立の何十万年も前と何万年も前の2回、
外側の2つの惑星に彗星が激突して粉々に砕け散り、それが広大な小惑星帯を形成したのだ。
こういった意味ではバレンズは不運な星系であり、そして入植が非常に難しい星だった。
そのため旗揚げ間も無い反乱同盟軍は、隠れ家には最適なこの星系に秘密基地2つを置く事にした。
しかし、星系の不運はその住人にも付きまとう。
反乱軍探索のためアウター・リム中にばら撒かれた探索ドロイドの1つが、
この星系に辿り付いて反乱軍の存在を発見したのだ。この時まだ、基地は完成していなかった……
Utsu Wars Episord Ⅳ 中編
~死兆星の囁き~
建設中の基地内では、帝国軍の探査ドロイドが確認されてから即時撤収か、建設続行かで意見が分かれていた。
即時撤収側の主な論拠には、アウター・リムの帝国軍は強力な兵器(デス・スター、MD級ほか)を持ち、
またその練度についても優れている(他セクターの帝国軍が比較対照)事、このような防御に優れた星系に、
反乱軍の基地が完成する事を帝国軍がみすみす見逃す訳が無い事が挙げられる。
一方建設続行側の論拠は、建設中でバレンズ星系より攻撃しやすい反乱軍基地は他にもあり、
帝国軍の攻撃はそちらへ向かうのではないかという予想、帝国軍主力大型艦艇に対小惑星能力が不足している事
(帝国軍が反乱軍を取り逃がす多くは小惑星帯である。原作EP5、ミレニアムファルコンの一件からも顕著)、
また基地の施設は多くが廃坑内にあり惑星表面を見ると基地の規模は極小さく見える(=重要と思われない)事だった。
後に即時撤収側の主張が正しかった事が明らかになるのだが、
最終的に反乱軍は建設途上とはいえ設備を残して撤収するのは勿体無いと基地の解体作業を始め、
帝国軍が攻めてきた場合の時間稼ぎのため型落ち兵器を中心とした防衛ラインを構築、
宇宙船や戦闘機は常にアラートハンガーに待機させるという方針で一致した。
137 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/01(土) 22:53:26
《バレンズ星系まであと5分。総員警戒態勢!》
ハイパースペースを航行中のデス・スターに放送が流れ、砲手達が慌しく持ち場へ付く。
しかし、デス・スターの主砲、スーパー・レーザーの砲手達だけはその前に既に待機していた。
発射制御室に居並ぶ砲手達に、彼らの長であるテン・グラニートが訓示をする。
「いいか、皆良く聞け!この戦いでスーパー・レーザー砲はこれまでにない短い間隔での速射を行う。
出力調整と砲身過熱には細心の注意を払うんだ!細かい作業が続くが、訓練の成果と大砲屋の根性を見せてやれ!」
訓示が終わると砲手は一斉に、各々が制御室のコンソールへ座った。
そんな中、彼らに力強い訓示を与えたテン・グラニートはひとり静かに、
スーパー・レーザーに秘められた全エネルギーを解放する機会が来ない事に安堵していた。
一方、同じくハイパー・スペースを航行中のデス・スター直属艦隊。
艦隊旗艦ミスティック・ドリーム級スター・ドレッドノートでは、艦長のロース・ニーダがきびきびと指示を下し、
マクシミリアン・ヴィアーズ率いる上陸部隊が艦載揚陸艦に乗り込んでいく。
(投入する戦力でも、メンバーでも、状況でも…負ける要素は一切見当たらない。
軽快な宇宙船なら出し抜く事さえ可能な布陣だからなおさらだが…さて、どうなるかな)
帝国軍随一の練度を誇る兵達が迅速に行動に移っていく様を見ながら、艦隊司令モッティは1人思案していた。
しかし、考えすぎるのも時間の無駄だと思い至ったのと、間もなくハイパースペースから出るという報せを受け、表情を正す。
《ハイパースペース離脱、5、4、3、2、1…今!》
そして、攻撃艦隊は死兆星と共に姿を現した。
138 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/01(土) 22:54:06
《こちらレイピア4!方位118に帝国軍の大艦隊だ!》
《ドミノ2より司令部、巨大戦闘ステーションの出現を確認!》
《メーデーメーデー!敵戦闘機の追跡を受けている!》
バレンズ星系の第1惑星、バレンズⅠの反乱同盟軍仮設司令部は、
哨戒中の宇宙戦闘機から入ってきた悲鳴のような通報によりにわかに慌しくなった。
「レイピア4、ドミノ2、オメガ11は直ちに宙域から脱出、"ホーム・ワン"に合流せよ!」
「ブロック3-Aと5-Dは解体作業を急げ!重兵器は最優先で輸送船に搬入しろ!」
「ジョーカー隊、サベージ隊は緊急発進、敵を小惑星帯に誘い込んで時間を稼げ!30分でいい!」
「敵が惑星に到着するまではどれくらいかかりそうだ?」
基地司令が戦域級センサーの画面を見てオペレーターに尋ねる。
「一般的な航行速度なら3時間、全速力でも2時間を切る事はありません。ですが、
ここまで広域に広がっているバレンズ小惑星帯への対処にはかなり時間を取られる筈です。
戦闘機や中型以下の艦船ならともかく、大型艦の到着までには短く見積もっても6時間前後はかかるでしょう」
「それだけあれば十分だ。おいブロック1-C、対軌道イオン砲の積み込みはまだ終わらないのか!?
あれを失う訳には行かん!150万クレジットだぞ、ひゃくごじゅうミリオン!」
敵艦隊の到着までまだ余裕がある事が分かった司令は矢継ぎ早に指示を出していく。
それでも大規模な戦力を前にして焦燥しているのだろう、時々噛んだり間違った単語が入るが、それを気にする者はいなかった。
だが、センサーの観測員が声を上げた瞬間、全員の注目がそちらに集まった。
「敵戦闘ステーションより高エネルギー反応…………!?……な、なんだこれは!信じられん!」
139 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/01(土) 22:54:36
「パワー伝達異常無し!」
「エネルギー増幅機能異常無し!」
「照準完了!」
「出力7.6%!チャージ完了!」
「スーパーレーザー……撃(て)ぇっ!!」
テン・グラニートの号令と共に、デス・スターがそのエネルギーを解き放った。
緑色をした7本のレーザーが1つとなり、その進路上にある全ての物体を蒸発させていく。
「30秒後に2射目を放つ!冷却装置フルパワー!」
デス・スターが主砲をその巨体ごとずらす。そしてすぐに2発目が放たれた。
これも射線を遮るあらゆるデブリを消滅させ、同様にして3発目のレーザーが小惑星帯を貫く。
「3番砲身の熱許容度残り33.4%!ヘンメ曹長、行けるか!?」
「問題ありません!4射目行けます!」
「よし!撃ぇーっ!」
4回目の砲撃が終わった時には、艦隊の進路を遮っていた小惑星は殆どが姿を消していた。
しかしもう1度、死兆星は咆哮する。いや、死の星が持つ本来の力を考えればこれは囁きに過ぎないのかもしれない。
そして小惑星帯に大穴が開くが早いか、艦隊はモッティ提督の号令のもと即座に進撃を開始した。
140 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/01(土) 22:55:06
「敵艦隊加速!このままでは2時間と30分でバレンズⅡに到達します!」
「馬鹿な……小惑星帯が、メイン盾が3分も経たずに破られただと!?」
反乱軍の司令部メンバーは帝国軍が繰り出してきた予想外の力技に狼狽する。
頼みの綱だった小惑星帯はその輪に切れ込みを入れられ、帝国艦隊はそこを悠々と通ってきていた。
基地司令は疲れ切った表情で副官に尋ねる。
「……基地の解体率は?」
「重火器については最優先で撤収しましたが………建材その他は諦めるしかないでしょう。
それに解体に時間をかけすぎれば今度は輸送船が脱出できなくなります。」
「なまじ強固な基地にしようとしたのが裏目に出たか………
仕方あるまい。ここは生きて逃げ延び、やつらの力を同志に伝えなければ。
電子機器と精密機械を回収し、データを破壊でき次第この基地を放棄する。
基地の全員……あとバレンズⅡの基地にも連絡しろ、今すぐに!」
基地司令が命じると、反乱軍の兵士達は慌しく脱出の準備に取り掛かる。
輸送船にはスピーダーからドロイド、戦闘糧食までごった煮になって積み込まれ、
整頓のせの字も無い有様となっていた。そして、彼らの輸送船が迫り来る帝国軍とは反対方向に発進する。
ターキン率いる帝国軍と反乱同盟軍、そのラウンド1は早くも不成立になろうとしていた………
~to be continued~
141 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/09/01(土) 22:56:09
という訳で、締まりの無い中篇をお送りしました。後編は後始末とか色々の話になるでしょう。
ロース・ニーダを最初素でアウル・ニーダって書いてたのは艦長には内緒。
色々引っ張っといて戦闘にならないのかよ!とお嘆きの方もいるかもしれませんが、
逃走可能な状況かつ圧倒的な戦力差では逃げない方がおかしいだろうという事でこうなりました。
銀河皇帝はまぁどうにでも言い訳できると思います。「一箇所に纏めてぶちのめします」とか。
ヴィアーズ将軍やニーダ艦長はまた活躍する機会があるかと思いたいです。
「ひゃくごじゅうミリオン」の元ネタは、余り原型を留めてないため分かりにくいかも。
イジェークト?なんですかそれは?
★誰それ?なキャラクター解説
◆テン・グラニート
原作ではEP4で、初代デス・スターのスーパーレーザー砲の砲手をやってました。
SWの鉄人(SW情報サイト)によれば、彼が砲撃命令を躊躇ったお陰でデス・スターが破壊されたそうです。
ルークがプロトン魚雷をぶっぱした丁度その時に躊躇うとか、凄いタイミングだ……
詳しくはこちら(と言うほど詳しくもないが)↓
ttp://www.starwars.jp/wiki/%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%88
SWの鉄人における彼のページです。
最終更新:2012年11月18日 10:41