467 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/11(日) 15:49:24
――――敵の敵は味方
――――古い諺
Utsu Wars Episord Ⅳ 後編
~討伐する者、される者~
銀河帝国の政治は、皇帝を国王、モフを領主と言い換えれば、
勿論領主の独立性や国王の権限にやや違いはあるものの、気が遠くなる程昔に形作られた封建制に少し似ている。
銀河皇帝が帝国の頂点に立ち、その直下には帝国軍を率いる大提督や提督、さらに全銀河レベルの様々な機関があり、
さらに各セクターや星系を治めるモフ(総督)、その中でも特に広い領域を与えられるグランド・モフ(大総督)もいる。
パルパティーンが最初にモフという階級を作った時、彼らに与えられていた権限は任された領域の行政の監視、
官邸の保安、領域の秩序維持に必要な幅広い権限と、また要人警護のためのストームトルーパー部隊の指揮権だったが、
銀河におけるパルパティーンと彼の配下の勢力が強まるにつれてその権力はさらに高まっていった。
最終的には、モフたちがその担当領域内ですべての軍事力を動員させることができるようになったのである。
加えて彼らに与えられた任務は秩序の維持、政治腐敗の防止、法の施行を始めとする漠然かつ曖昧としたもので、
それらはモフ本人によっていくらでも拡大解釈が可能なものであった。それでも分離主義勢力の脅威がまだ残っていた時代は、
市民も彼らが権力を振るう事を必要悪としてある程度許容している面があった。しかし、それが過去のものとなると、
大軍の指揮権を始めとする強い権限による緊急事態(主に反乱、テロ)への対応力というメリットよりも、
モフが自分の地位・権力の維持、帝国中央のお偉方のご機嫌取りなどのために権力を濫用し出すという弊害が、
今までに無く目立ってきたのである。
そしてそれが、モン・モスマを始めとする反皇帝グループ(後の反乱同盟軍)によって色濃く縁取りされ、
以前からあった帝国の政治手法への反感、そしてそこから上がった反乱の火の手を各地に広げていったのだ。
よくこの「反乱時代」が、銀河皇帝と反乱軍の戦いであるかのように語られる事があるが、
それは半分は間違いで、半分は各地のモフと反乱軍の戦いである、と言う事もできるかもしれない。
実際、反乱軍と戦った帝国軍の多くが、その宙域におけるモフの統括するものだった。
その中でも最も高い軍事力を持っており、最も優れた戦略眼をも備えていたと言われるのが、
帝国の中で知らぬ者は1人もいない、グランド・モフの中のグランド・モフ、ウィルハフ・ターキンである。
468 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/11(日) 15:49:58
「提督、反乱軍の輸送船が惑星から脱出しています。ざっと計算させましたが、
本艦隊が敵船団に追いつく地点はこの、小惑星帯の外縁部になると思われます」
反乱軍が基地を建設していたバレンズ星系へ攻撃を仕掛けていた、
ターキン率いるデス・スターとミスティック・ドリームを基幹とする攻撃艦隊は、
圧倒的不利を悟って脱出を始めた反乱軍の動きをキャッチしていた。
ミスティック・ドリーム艦長ロース・ニーダは、
ブリッジのコンソールにデータを示して艦隊司令アントニオ・モッティの指示を仰ぐ。
それに対し、モッティはデータを見ながら即座に脳を回転させた。
(エピソードⅤが示す通り、大型艦で小惑星帯での追撃戦は失敗フラグだし……
いくら原作に無い戦いとはいえ、そんな非効率的な事をする理由も無いな。
しかし本音を言えば失敗してくれても構わないのだが、帝国としては少し困るか)
しばしの思考の後、モッティは口を開く。
「戦艦は惑星地表の制圧に専念し、輸送船の追撃には戦闘機を何部隊か出せ。
船団は小惑星の密度が濃い所に追い込むんだ。無理をして撃破する必要は無い。
小惑星帯で相手の動きを乱してやれば、後は小惑星が勝手に片付けてくれるだろう」
「了解!」
ニーダ艦長が即座に追撃戦闘機隊の編成と、敵の脱出を受けての惑星制圧部隊の再編を連絡する。
そのきびきびとした動作をよそに、自分も悪役が板に付いてきたかとモッティは自嘲した。
しかしその笑みは、ニーダを始めとするブリッジクルーには、彼の自信の表れのように見えていた。
469 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/11(日) 15:50:36
荒野の惑星に到着したスター・デストロイヤー艦隊から、揚陸艦と戦闘機が発進していく。
前者の目標は惑星に残されているであろう反乱軍の建設中に放棄された施設、そして後者は、
大慌てで物資を積み込み惑星から脱出した反乱軍の輸送船団だった。
惑星降下部隊は酷寒の惑星ホスで鍛え上げられた機械化歩兵4個大隊、
追撃部隊は帝国軍の最新鋭戦闘機であるTIEディフェンダーが4個飛行隊(48機)―――
これもまたホス星系の小惑星帯で訓練を積んでいた―――という強力極まりない陣容。
施設はそもそも兵員が1人も残っていなかったため、
電子機器や防衛用兵器が無い事を除けば大部分が無傷のまま確保され、
また艦隊の反対方向へ全速力で逃げていた輸送船団が補足されるのも時間の問題だった。
戦闘機並に早い輸送艦などない。ミレニアム・ファルコンとかいう例外もいるが……
帝国艦隊が、戦闘機部隊から輸送艦を補足したという報せを受けたのはそれから間もなくだった。
その直後、艦隊の強力な通信装置が敵味方の通信をまとめて受信、傍受する。
《イエロー13より各機、「黄色の巣」を展開せよ》
《イエロー4了解、展開します》
《サベージ3、ケツにつかれた!振り切れない!》
《正面に小惑星!!取り舵一杯!取り舵一杯!》
《ウ、ウワーッ!》
《ジーン、俺が囮になる!お前だけでも逃げろ!》
《ジャン・ルイ!?無茶をするんじゃない!》
《3番艦がアステロイドに衝突!ひでぇ、竜骨がへし折れてる!》
《シュトリゴン・リーダーが敵艦前方に回りこんだ、誰か挟み撃ちにできる奴はいないか》
《アレクト1了解、俺に任せろ。オーバー》
471 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/11(日) 15:51:11
モッティはそれを聞きながら、まるで反乱軍アンチの書いたSSみたいだな、と独り思っていた。
しかし、討伐する者、される者の関係というのは、得てしてこうなるものなのだろうとも思った。
「提督、デス・スターより極秘入電です。今転送します」
一定の秘密情報も扱える上級士官がデータパッドに入電を転送してきたので、
モッティは気を取り直してそれに目を通す。そして、目を通した後、自分の目を疑った。
『"エリアTR-T"が反乱軍の襲撃を受けた。作戦終了後、直ちにデス・スターへ出向されたし』
それがデス・スターからの極秘入電――グランドモフ、ターキンからの直接のメッセージだった。
"エリアTR-T"、ターキン一派、すなわち
夢幻会が設置した秘密研究施設が攻撃を受けた、という報せを受け、
その一員であるアントニオ・モッティはどっと疲れに襲われた。そして思い知ったのだ。
(これが"ルーカス補正"って奴か……!?)
~to be continued~
最終更新:2012年11月18日 10:57