582 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/18(日) 20:01:11
――――フォースと共にあれ
――――ジェダイおよび反乱同盟軍の合言葉
Utsu Wars Episord 4.5
~フォースの縁(えにし)~
銀河系の中でひときわ明るく輝く、宝石にも例えられる惑星コルサント。
既知銀河系の座標軸はこの星に中心(0,0,0)を置いており、そしてかの星はそれに値する所だった。
惑星表面には雲をも貫く超高層ビルや、気が遠くなるほど長い歴史を持つ建造物郡、
膨大な生産能力を備えた工業団地が立ち並び、惑星地下には魑魅魍魎が跋扈する混沌とした世界。
まさに銀河の縮図とも言えるコルサントは銀河に存在する知的文明の象徴であり、
そして今は、インペリアル・センターと名を変え、既知銀河を支配する銀河帝国の中心ともなっている。
そのインペリアル・センターの中でも、ひときわ独特な外観を持っているのが、
インペリアル・パレス―――銀河皇帝パルパティーンの宮殿であった。
宮殿は古代のシスの寺院にも似た姿をしており、全高は3kmと、コルサントの中でも最大の建造物だ。
趣向を凝らした数々の装飾は夜間でもその光を失わず、むしろ益々輝きを増しているかのように見える。
宮殿の中心、大回廊はヴィクトリーⅠ級スター・デストロイヤーが収容できるほどで、
宮殿の最も高い塔にはインペリアル・センター全体を見渡す事のできる皇帝の玉座の間があった。
玉座の主はそこで、彼のしもべたちに命令を下すのだ。
583 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/18(日) 20:02:00
(フォースの"泡"が1つ割れた……反乱軍は上手くやったようだな)
銀河皇帝パルパティーンはコルサントの玉座で独り、自らの思惑が首尾よく運んだ事に満足感を覚えていた。
そして、銀河系に横たわるその他もろもろに関する思索に耽った後、彼の"手"に次なる指示を与える事にした。
彼の"手"―――その中でも最も熟練した暗殺者にしてスパイ、マラ・ジェイドは、
生まれつき強いフォースを持っており、野暮ったい通信機を用いずとも思念のみで皇帝の意志を聴く事ができる。
(我が"手"よ、良くやった……では、次の任務に移ってもらうぞ)
皇帝は、偽名を使い反乱同盟軍の内部に入り込んでいたマラ・ジェイドに事細かに指示を与える。
皇帝の強大なフォースによる洞察は、常人が考えるより遥かに複雑な計画をブロック遊びのように簡単に組み上げてしまう。
また、彼にはその複雑な計画を確実に実行できる優秀な弟子達がいた。
(タトゥイーンに強いフォースを感じる……反乱軍に近づくフォースを……
それを助け、反乱軍がターキンに戦いを挑むよう仕向けるのだ……)
皇帝は指示を出しながら、星空の向こうにいる"手"の困惑を感じ取っていた。
しかしその困惑も、彼にしてみれば規定事項の1つだった。
パルパティーンの数少ない失策の1つは、グランド・モフ、ウィルハフ・ターキンが、
皇帝の持つフォースへの対策を講じるのを許した事である。彼は未開の惑星に艦隊を送り、
そこの原住生物イサラミリを使って皇帝のフォースによる洞察を半ば無力化したのだ。
これにより、パルパティーンはデス・スターにいるターキンとその一派の動向が、
以前の1割程度にも把握できなくなってしまったのだ。勿論皇帝はターキン本人が報告する、
自らの動向などはなから信頼していない。昔からシス卿とはとかく疑り深いものだ。
元々ウィルハフ・ターキンは皇帝の古い協力者の1人だったのだが、帝国の究極兵器デス・スター、
そしてアウター・リムの広い宙域を預かるに至ると、元来のカリスマと相まって皇帝の潜在的政敵となったのだ。
584 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/18(日) 20:02:37
だからと言って、パルパティーンはすぐにターキンを切り捨てはしなかった。
彼がデス・スターと艦隊でコルサントに特攻してくれば、今のところ防御の手立ては無かったし、
皇帝は昔からの嗜好で、政争にあからさまな、不自然すぎる手段を使うのを嫌っていた。
さらに言えば、フォースによる洞察が使えないため、自然な手段を講じるのも難しかった。
彼はターキンが皇帝に秘密で進めていたいくつかのプロジェクトについて、
皇帝の"手"を使い概要を把握してはいたものの、そのプロジェクトに対し何か干渉すれば、
「私は貴方を疑っていますよ」と宣言するのと同義であるため、行動は起こさなかった。
ターキン本人に本格的な警戒を受けるのは、皇帝の一番避けたいところだったためだ。
そのため反乱同盟軍の旗揚げは、皇帝にとって待望のイベントであった。
皇帝はこれを知ると、(苦々しい表情の裏で)嬉々として反乱軍にスパイを送り込み、
これまで収集してきたターキン一派の情報を流して両者の対決を煽ったのだ。
しかし、ターキン一派は皇帝にとっても、反乱軍にとっても予想以上の強敵だった。
反乱同盟軍にとって有望な人材であるギアル・アクバーをターキンから奪取する時も、
反乱軍奇襲部隊は目的こそ達したものの、モッティ提督の巧みな艦隊機動と防御砲火で少なくない犠牲を払っていた。
ターキンとモッティの艦隊、その航路や編成について皇帝から情報をリークされていたにも関わらず、である。
より優秀なスパイの必要性を感じた皇帝は、"切り札"としてマラ・ジェイドを送り込んだ。
彼女はターキンがモー研究所とは別に建設、運営していた兵器研究所のデータを手土産に反乱同盟軍へ馳せ参じ、
研究所の襲撃作戦について的確な助言を行う事でドドンナ将軍らの信頼を勝ち取った。
そして、対ターキン戦において、アクバーに並ぶ優秀なアドバイザーとなったのである。
皇帝は、反乱軍とターキン一派に、かつての分離主義勢力と共和国軍の轍を踏ませるつもりでいた。
有象無象がどんなチンケな策を弄しようと、最後に勝つのは自分だ。
皇帝はそう確信していた。
585 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/18(日) 20:03:17
所変わって辺境の惑星、タトゥイーン。人が住む惑星の中でも、最も住環境が劣悪な惑星の1つ。
その原因は、主に星系の中心にある2つの太陽、タトゥⅠとタトゥⅡに求められる。
かの2連星は、猛烈な熱でタトゥイーンの地表を焼き、かの地を長らく荒涼な土地としていた。
ラーズ家は、この(いかがわしい類のものを除けば)楽しみの少ない砂漠の惑星で、
苦労の多い水分農場(大気中の水分を凝結させ、その水を売る)を営むごく平凡な家庭だった。
ラーズ家当主のオーウェン・ラーズ、その妻ベルー・ホワイトサン・ラーズ、
ラーズ夫妻の甥っ子であるルーク・スカイウォーカーの3人は、今日も重労働に精を出していたのだ。
ルークにとってオーウェンは面倒見の良い優しい叔父であったが、
一方で伝統を重んじすぎる、いわば保守的すぎる面もある事には辟易しつつあった。
毎晩、灯りの少ない農場の上に煌めく星を見つめる青年は、
砂と岩だらけの地上から離れ、未知の世界へ飛び出したいという思いを日ごとに強くしていく。
そんな若いルークのごく健康的な願いがついに叶う、その予兆が現れたのは、幸か不幸か、
彼がラーズ家のガレージで機械いじりに熱中していた丁度その時だった。
586 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/18(日) 20:04:01
惑星に跋扈するならず者対策のために導入した歩哨ドロイド、
2X-3KPRに不具合が無いかチェックしていたオーウェン・ラーズは、
モス・アイズリーの方から4本脚の妙なメカがのそのそと歩いてくるのを見て、
何だかとても嫌な、しかし根拠の無い予感にかられた。
オーウェンは万が一のために懐にしまってあったブラスター銃の安全装置を解除すると、
そのメカが歩哨ドロイドの警備範囲の外で止まり、中から人が出てくるのを確認した。
そしてメカに乗っていた人々の服装を見て、さらに嫌な予感がした。
「何か御用ですかな?」
オーウェン・ラーズは、ラーズ家の家長として暗に不快感を込めた声で話しかける。
メカから出てきた男―――帝国軍の士官服に身を包んだのが1人、ストームトルーパーが2人―――は、
その声に対し、こういう反応を受けるのも仕方ないか、といった仕草をしつつ話を切り出した。
「銀河帝国軍中尉、カクリコン・カクーラーです。オーウェン・ラーズさんですね?」
茶髪(分量は寂しい)で三白眼、やや四角い顔をした男が丁寧な、
しかし明らかに丁寧に話すことに慣れていない口調で訊ねる。
「そうだが?」
「あなたの息子さんが、ベガーズ渓谷でスカイホッパーを乗り回しているのをご存知ですか?」
「ああ、事故ったら不味いから止めろと何度も言ってるんですが、あれがまた向こう見ずな性格で、
全然言う事を聞いてくれないんですよ……それから彼は息子じゃなくて甥です」
オーウェンは心の中で舌打ちをしながら、ルークの出生の秘密、
また惑星の外で彼を待ち受けているであろう困難な運命の数々に思いをめぐらした。
587 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/11/18(日) 20:04:47
「甥ですか、それは失礼しました。――で、最近ですね、テロリストや宇宙海賊の構成員が、
ベガーズ渓谷などでエアスピーダーに乗っている若者を組織に勧誘しているという通報がありまして」
「そんならとっとと渓谷にでもどこでも行って無法者を捕まえるんですな」
水分農場の主はいよいよ迷惑そうな表情を顕にする。我慢も限界だといった風だ。
「ええ、それが我々の役目ですのでそれは勿論ですが……
ただ、保護者としてあなたの甥に、そういう怪しい連中とは関わらないように、と」
「んなこたぁ何度も言っとる!」
不快感の小爆発を起こしたラーズを見て、これ以上話しても良い事は無いと判断したのか、
士官はこれで農場を後にする旨を伝えた。オーウェンはせいせいした、といった表情でそれを了解する。
「もし何かありましたら、モス・アイズリーの帝国軍駐在所まで通報願います」
という、いかにもお役所仕事的な言葉を残してメカに乗り込み、
農場から去った帝国兵達に対し、オーウェン・ラーズは塩の10トンも撒いてやりたい気分だった。
(ルークをここから出す訳には行かん……帝国アカデミーだろうと、反乱軍だろうと……
そこであいつを待ち構えてるだろう困難に、今の夢見がちで楽天的なルークが耐えられるとはとても思えん)
彼は独りごちて、家族の待つ農場へ戻った。
~to be continued~
最終更新:2013年01月04日 20:11