176 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:28:30

ギアス嶋田さんロマンス
嶋田さん独身設定
15禁くらい?



帝都の休日2


「漸く話が纏まりましたね」
「ええ、基本的に何事もなく済んで良かった。互いに胸襟を開いて話せば分かり合えるという物です」

東京講和条約発効によって終結した日ブ戦争。
晴れやかに見える日本側の面々に対し、ブリタニア側は皆一様に暗い表情を浮かべていた。
それもそのはず、停戦講和という体裁こそ取っている物の、実際はブリタニアの敗戦だったからだ。
そのため講和条約の内容も太平洋全域の各種権益放棄と大日本帝国への割譲。
ブリタニア西海岸側の軍備削減と一方的な譲歩を迫られ、各種賠償金(国家予算内で支払える額)の支払いまで盛り込まれたのだから。
当初はこれに西海岸一帯の割譲まで迫られていた。
尤もこれについてはブラフであり、日本側としては「くれるといってもいらねー」というのが本音だが。
無論ブリタニア側は大いに反発したが、大日本帝国宰相嶋田繁太郎の発した一言によって沈黙せざるを得なかった。

「弱肉強食が貴国の国是なのでしょう? 貴国の礼儀に乗っ取って対等にやっているつもりですけどね
 それとも・・・・・・極めて遺憾ですが、貴国お得意の“区別”でもしてさしあげましょうか?」

ブリタニアがナンバーズと呼ぶ植民地人に対し行っている政策を持ち出し恫喝を交えながら西海岸割譲を取り下げた日本側に
ブリタニア側は最早譲歩以外の選択肢が無くなってしまったという訳である。
何せ大日本帝国はやろうと思えばブリタニアを“区別”出来る力を持っているのを知っているからだ。
通常戦力でもKMFを越える機動兵器や戦闘機の数々を保有し、実戦投入している上、KMFの世代を上げればそれを上回る兵器が出てくる。
海に目を向ければ巨大な砲を携え、厚い装甲に覆われた巨大戦艦と、多数の戦闘機を運用する巨大空母。
そして最後に、雲を貫く大火球と、全てを薙ぎ払う衝撃波を生み出す恐るべき超兵器水素爆弾。
一体どれだけの数を保有しているのか知る由もないが、もしこれまで実戦投入されればブリタニアという国は文字通り消滅しかねない。
建国至上類を見ない負け戦に、皇帝シャルル・ジ・ブリタニアでさえ「交渉団代表のコーネリアに一任する」としか言えなかった。

「これからは、お互い良き友人としてお付き合いしていきましょう」
「ええ、互いに手を取り合い、より良い国を作っていきましょう」

固く握手を交わす嶋田繁太郎とコーネリア・リ・ブリタニア。
ブリタニア側の人間で彼女だけは悔しい表情を浮かべていなかった。
それは彼女の武人としての気質からくる割り切りの良さ。
相手は自分たちより強かった。国是に従うならば弱者の自分たちは強者の相手に何を要求されても仕方のないこと。
それだけだと。

(だがこれで終わりではない。いつかの日か必ず追いついてみせる・・・!)

177 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:29:55





「ブリタニアとの戦争もこれで終わりですね」

ブリタニア自身は未だ各地で戦争を続けているのだが、それは日本には関係のないこと。
非情なようだが守るべきは陛下と日本の国民、勢力圏の人間であって、関係ない地域を助けるために余計な戦争を起こすつもりはない。
それに日本との戦争で国力が疲弊したブリタニアも暫くは大人しくしているだろうとの見解もあった。
尤も、辻としてはこの間に皇帝とV.V.、肉体を失ったマリアンヌを消してしまいたい処なのだが。

「嘘のない世界・・・ですか」

辻の呟きに首を捻った嶋田はああ、と思い出した。

「皇帝の目指している世界でしたか?」
「そう、寝言は寝て言えと言ってやりたいですよ。嘘のない世界なんて欲望を無くそうというのと同じくらい不可能なことです」
「そうですね。一見聞こえはいいですけど、それは人間という生物の否定以外の何物でもない・・・・・・出来れば考えを改めて、分かり合えればいいのですが・・・・・・」
「それが出来れば苦労しませんよ。それに子どものためとか言ってルルーシュ君やナナリーさんを放り出すような輩ですよ?」

人非人です、人でなしです、と続ける辻に
(辻さんだけには言われたくないでしょうね)
と、心の中で突っ込みを入れる嶋田。

「ま、この件に付いては追々考えていきましょう。話し合うにしても・・・・・・排除するにしても、ね」
「そ、そうですね、」
(怖いよこの人・・・)

一瞬、嶋田は虚ろな目をした辻を見て背筋が寒くなった。
相手がどんな強敵でも、超能力じみた力を持っていても、この人ならやってのけると確信させられる。

「あ、そうそう。ユーフェミア皇女が嶋田さんと個人的にお会いしたいそうですよ」
「なっ、ユ、ユーフェミア皇女が・・・?」
「ええ、コーネリア皇女から頼まれておりましてね。その場でOKしておきました」
「なに勝手なことしてるんですかっ!?」
「いえいえ、これからは良き友人としてお付き合いしていく国の皇族の方から頼まれて断るのも失礼でしょう」
「そ、それはそうですが・・・」

178 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:30:40

「と、いうことで・・・・・・入ってください」
「え・・・?」

言葉を切った辻が執務室のドアを振り返って声を掛けると。

「し、失礼致します、」

扉を開けて入って来たのは――桃色の長い髪をポニーテールに纏め、少し胸元が覗くデザインの服と白のタイトスカートを着用した少女。
数日前に嶋田が帝都の公園で出会い、名所巡りをし、更には年甲斐もなく流されるままに一夜を共にしてしまった相手。

「ユ・・・ユーフェミア皇女・・・」

ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアだった。

「お、おじっ、あ・・・嶋田・・・総理・・・」

暫し見つめ合う初老に差し掛かろうかという男とうら若き16の少女。

「こほんっ、お二人とも宜しいですか?」
「え、ああ、すみませんっ、」
「し、失礼しましたっ、」

なにやらユーフェミアの桃色の髪に負けないくらい桃色なオーラを放ち始めた二人に割って入った辻は、当の面会人ユーフェミアに嶋田を紹介する。

「ええ~、もうご存じのことと思われますが、こちらが我が大日本帝国の宰相、嶋田繁太郎氏です」
「は、初めまして・・・というのもおかしいですね、講和交渉の席で顔合わせはしておりましたから・・・」
「は、はいっ、改めまして神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアと申しますっっ、」

ぎこちない挨拶を交わす二人に辻は顔を逸らして笑いを堪える。

「ほ、本日はわたくしのような若輩者にお会い頂きまして、真にありがとうございますっ、」
「い、いえ、」

(ぷっ、い、いけませんね。これ以上見ていたら大笑いしてしまいそうですよ)
「すみませんが私はお邪魔なご様子なので、これにて失礼させて頂きます」
「あ、ま、待ってください辻さんっっ!!」
「それではごゆっくり」

制止する嶋田を無視して辻は執務室の扉を閉めて出て行ってしまった。

179 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:31:35



「・・・・・・」
「・・・・・・」

辻が出て行った後、二人きりになってしまった嶋田とユーフェミアは、互いに何も言わず俯き、時折視線を合わせると勢いよく逸らして
頬を赤く染めていた。

(き、気まずい・・・何を話したらいいんだ・・・)
「た、体調は、その、宜しいですか、」

漸く発した言葉は何の意味も持たない物。

「は、はいっ、とても、いいです・・・」

それに対するユーフェミアの返事も当たり障り無い物。

「い、いいお天気ですね、」
「そ、そうですね、」

もう二人共に何を言ってるのか分からないという感じだった。

(近所のおばさんに挨拶してるんじゃないんだぞ!)
「「あ、あのっ!」」

意を決して口を開けばこれもまた同時で。

「な、なんですかな?」
「し、嶋田閣下から、」
「い、いやユーフェミア皇女が、」
「い、いえ、そちらから、」

互いに譲り合って収拾がつかない。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

そうなるとまた沈黙の時間になってしまうのだが。
(ええい、くそっ、このままではちっとも進まんっっ!!)
流石に耐えきれなくなった嶋田はもう一度自分から話しかけた。

「その・・・また貴女とお会いすることになるとは、思いませんでした」

するとユーフェミアも同じように口を開く。

「わたくしもです・・・・・・一夜限りと、思っておりましたので・・・・・・」

思い出すのは数日前。
出会い、共に歩き、いろんな景色を見て物に触れてみた日。
そして月夜の下、吸い寄せられるように行われた秘め事。

「その、申し訳ありませんでした。知らなかったとは言え空気に流され、一国の皇女である貴女を・・・」
「そ、そんなっ、謝らないでくださいっ、わたくしの方こそ宰相閣下を・・・」

地位や立場を考えればあまりに軽はずみだった。
それも相手の素性を知ってしまった以上尚のこと。
だから謝罪した訳だが、ただ一つ、引っ掛かることがあった。
それは知っていれば求め合わなかったのかということ。
あの時流されたとは言え、互いに望み、求め合ったのだ。
そこに嘘はない。
嘘のない世界など無くとも、それが嘘ではないと分かる。
そんなもの。

「あの・・・お聞きしても宜しいでしょうか?」
「・・・・・・なんでしょう?」
「宰相閣下は・・・・・・わたくしがブリタニア皇女だと、あの場で知っていれば・・・・・・わたくしを、拒絶なさいましたか・・・」
「・・・・・・」

悲しそうに、苦しそうに訊ねるユーフェミア。
もし拒絶したと言われても、それは仕方のないこと。
それが互いの立場であり地位なのだから。
でも、それはとても悲しいこと。
そして何より嫌だった。
あの時自分を一人の女として見て接してくれた彼の口から、その言葉を聞きたくない。
例え我が儘であると分かっていても・・・・・・。
そんな不安渦巻く彼女に対し、嶋田は返事を返した。

180 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:36:06

「いいえ、それでも・・・・・・受け入れていたでしょう。あんな泣きそうな顔で、目に涙を溜めて求められたら・・・・・・拒絶など出来ませんよ」
「っっ!!」

自分の思うままに。
余計な事を考えずに。
ただ正直に。
それは心からの言葉。
返事を聞いたユーフェミアの目が僅かに潤み、頬に朱が混じる。
それを見た嶋田は彼女の側に寄ると、長いポニーテールに纏められた鮮やかな桃色の髪に指を通して撫でた。

「・・・」

次いで朱に染まる頬に触れ、目に溜まった彼女の涙を指で拭う。

「悲しい話をしているのではないのですから、涙は禁物ですよユーフェミア殿下」
「・・・・・・はい」

言われて微笑むユーフェミア。
しかし一度出始めた涙は中々引かない。

「涙・・・止まりません・・・」
「これは参りましたね。誰かに見られたら私がユーフェミア殿下を泣かせていると勘違いされかねない」

困った困ったと頭を掻く嶋田にユーフェミアは。

「あの・・・・・・」

いっぱい・・・・・・泣かせてください・・・
そうすれば・・・・・・涙、止まると思うんです・・・

と、言い放つ。

「ユっ、ユーフェミア殿下、それは・・・」

狼狽する嶋田。
それはそうだろう。彼女の言をそのまま実行するというのは。
それを、此処でするということなのだから。

「ユフィと・・・呼んでください・・・」

だがユーフェミアは引かない。
ブリタニア皇女と知っても受け入れたというのを聞いてしまったから。
それならばもう、一夜の思い出で我慢する必要も、終わらせる必要もない。
何のためにここへ来たのか?
これからもずっと想いを紡いでいきたいからではないのかと。
だからユーフェミアは止まらない。

「んっ、」

彼女は少し背伸びをすると、嶋田の身体に抱き着いて。
彼と唇を重ね合わせた。

「三度目・・・です」
「なにがですか」
「もうっ、言わせないでくださいっ、」
「年を取るとうら若き乙女の口から聞きたいと思うものだよ」
「あっ」
「んっ?」
「喋り方・・・おじ様に戻りました」
「おっと失礼。気が抜けてしまいま―っんう!」

言い掛けた嶋田の唇がもう一度塞がれる。
直ぐに離れたユーフェミアは。

「こちらの方が・・・いいです」
「ユフィ・・・わかりま、いや・・・わかったよ」

微笑むユーフェミアに折れた嶋田は彼女と初めて出会った時の、親しい友人の前でだけ使うため口調の言葉遣いに直した。
もうダメだ。ここまでされて何もないでは終われない。
(いけないと・・・分かってるんだがな・・・)




部屋にあった二つの影が、来客用の大きなソファの上で一つに重なる。
それは、面会時間を過ぎた頃にはまた二つに戻っていた・・・・・・。

181 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:37:00




「大丈夫かいユフィ」
「脚がふらつきます・・・・・・」
「全く困ったお姫様だ君は」
「すみません・・・」

「お話は終わりましたか?」
「うわっ! 辻さんッッ!」
「なんです、そんなに驚いて」
「い、いや、いきなりだった物で」
「ちゃんとノックはしましたよ・・・・・・ところで」

言葉を切った辻は嶋田に支えられたユーフェミアを見る。
彼女の肌は白人特有の白。
もちろん頬も白い。
にも拘わらず。

「おや、ユーフェミア殿下。頬が赤く上気していますよ?」
「あ、あのッ、なんでもありません・・・」
「なら良いのですが」

国賓になにかあっては大変ですからね。
辻がそう言うと、嶋田は「そ、そうですね」と同意した。

「ところで嶋田さん」
「な、なんですっ、」
「ユーフェミア殿下の長くお美しい御髪がこんなに乱れてしまっていますが」

ポニーテールに纏められた髪が所々乱れ、ほつれてしまっている。
「やはり何かあったのでは?」と迫る辻に、またユーフェミアが弁解した。

「あ、あの、わたくしがきちんと梳かしていなかっただけなんですっ、」
「なるほど。それなら仕方ありませんね」

嶋田は退出するユーフェミアと少し見つめ合った後。
別れの挨拶を交わす。

「それではユーフェミア殿下、お気を付けて」
「はい・・・」

そんな二人を生温かい目で見ていた辻は、執務室のソファに目を向けた。
そこに落ちていたのは数本のピンク色の糸。

(きちんと梳かしていなかった・・・ですか)

「この様子では・・・日ブ友好、そう遠くなさそうですね」

(おっと、忘れる処でした)

「ユーフェミア殿下」
「はい、なんでしょう?」
「講和条約も締結されたことですし、今度親しい友人達を集めて飲み会を開くのですが、宜しければ御一緒にいかがですか? 日ブ親善という意味でも」
「つ、辻さん、飲み会って会社帰りのサラリーマンじゃないんですから、ユーフェミア皇女に失礼でしょうッ!」
(何を言い出すんだこの男はァァァ!! あんな変人共との飲み会にユフィを連れて行けるかァァァッッ!!)

嶋田の真なる心の叫び。
だが。

「まあっ 楽しそうですね。もし、許可が下りましたら是非とも参加させてください」

悲しいかな、嶋田の心の叫びはユーフェミアに届かない。
ただ幸いだったのは、16というユーフェミアの年齢のお陰でなんとか飲み会参加を回避できたのだった・・・・・・まる

182 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:39:31

「ユフィ、嶋田総理との面会はどうだった?」
「え? あ、はい。とても有意義でした。それにお人柄も良く、あの方ならば必ずや、日本帝国とブリタニアに友好の橋を築いてくださるかと」
「そうか・・・ん? ユフィ、どうした?」
「え?」
「先ほどから下腹部をさすっているが・・・お腹でも痛いのか?」
「あ・・・い、いえ、その・・・熱い物なのだと思いまして・・・」
「熱い飲み物でも飲んだのか?」
「え、ええ、まあ、いただきました・・・・・・」
「ほう。その様子では嶋田総理との個人的なパイプはユフィが一番太くなりそうだな」

これより数日後。
神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアには、日ブ友好のため、在日本ブリタニア大使館に常駐するよう勅命が下った。



飲み会

「ん? 嶋田、もう帰るのか?」
「ああ悪い山本。ちょっと約束があってな」
「嶋田さん・・・彼女に宜しくとお伝えください」
「は、ははっ、なんのことですか?」
「いえいえ、こちらのことです」
「なんだ嶋田のやつ。逃げるみたいに出て行ったぞ」
「さあ、なんでしょうね」
(ふふふ、どうやら上手く進展しているようですね。しかし実に残念・・・皆さんに紹介する良い機会だったのですが・・・ま、後日考えますか)

183 :帝都の休日2:2012/12/07(金) 22:43:23

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最終更新:2013年01月06日 21:06