613 :New ◆QTlJyklQpI:2012/12/16(日) 13:19:36
※島戦争作者様に許可戴いてます。
島戦争ネタSS ~憂鬱世界にローリダが来ました~
ローリダ共和国の首都アダロネス。キズラサの神に祝福されたとも言われた繁栄を謳歌していた
都は飛来する爆撃機によって瓦礫と炎と悲鳴と罵声に包まれつつあった。
「何故だ・・・・・・」
「「「・・・・・・・・・・」」」
「何故、我々が!キズラサの神に愛された我々の都が!異教徒の蛮族風情に良いように破壊されておるのだ!!」
時々爆撃のせいで揺れる地下に設置した臨時司令部の中でギリアクス‐レ‐カメシス第一執政官が憤怒の雄叫びを
上げるがカザルス‐ガーダ‐ドクグラムなどの取り巻きは無言で俯くだけであった。
「「「(貴様のせいだろうが馬鹿が・・・・・・!)」」」
それを遠巻きにルーガ‐ラ‐ナードラなど生き残った元老院議員が収容所に入る愚を犯すまいと内心で罵倒している。
既に首都防衛の「本土決戦機」と呼ばれた最新鋭戦闘機ゼラ-ラーガは基地ごとクズ鉄にされ、
主力のレデロ-1戦闘機やギロ-18戦闘機は敵機にスコアを献上するだけ、対空ミサイルもECMやフレアの妨害と
攻撃機の精密爆撃に役立たずとなっていた。共和国最後の希望と謳われた白獅子艦隊が海の藻屑となった今では沖合に
いる巨大な戦艦から放たれる巨弾どころか駆逐艦の主砲まで使用して港や軍事施設をクレーターに変化させている。
最早「異端」「世界の敵」とされた国に情けは無用とばかりに軍民区別なく航空攻撃が行われ、核攻撃などを
しないのは後々の占領支配とこれ以上の核攻撃は欧州にまで汚染が届く可能性を危惧されたためであった。
「キズラサの神よ・・・・・・我々が何をしたのですか?」
「(こいつはもう駄目だ・・・・・・!何とかしなければ・・・・神よ!)」
各国が聞いたら「色々やったじゃねえか!!」と叫ぶだろう事を呟くカメシスに呆れ果てた
ナードラは確定的になった祖国の滅亡を前に神に祈るしかなかった。
そんな地獄と化しているローリダの首都の映像を日独英を始め各国の代表者らは同情の欠片もなく見ていた。
「そろそろ、幕引きか?」
「いや、まだ歯向かってくるでしょう。神に選ばれた国が負けるわけがないと本気で信じて戦う者が多いかと」
「ふん!あのような卑劣な蛮族なぞ蹂躙してくれる!」
「然り!キズラサなどという邪神諸共滅ぶがいい!」
「我が神に逆らう愚者をその肉の最後の一片までも絶滅する・・・・AMEN!」
「(・・・・・ローリダよ、敵にした相手が悪すぎたな。怨むなら自分らの無知無能を怨んで滅んでくれ)」
気炎を上げまくる欧州諸国を尻目に、日本代表として来た嶋田は滅びゆくローリダに対し内心で黙祷を捧げていた。
19XX年、アゾレス諸島北方、丁度ビスケー湾やイギリス海峡に蓋をするような形で現れた島に欧州国家は
騒然となり調査に乗り出した。そして高度な文明を持ち、キズラサという一神教を信仰するローリダ共和国
があると知り、彼らと接触するための対応に追われた。
欧州諸国としては自分らと同程度の文明に喧嘩を売るマネは冷戦による睨み合いからも勘弁してほしく
穏便な交渉に乗り出したが当のローリダは転移による混乱から立ち直り、強圧的な態度でキリスト教からの改宗や
実質的な従属要求を出し、しかも交渉の最中にスペイン、アイルランドに電撃侵攻するという暴挙に出た。
不意を突かれ、しかも軍事的にも弱体な2国は圧倒され、領土の過半を損失、
そして”教化”の名の下にキリスト教教会や文化財破壊を開始したことにバチカンが抗議するや
爆撃機が来襲しバチカンに航空爆撃を敢行、欧州各国、特にカソリックを信仰する国々は激昂した。
「高等種族であるローリダ民族は穢らわしい邪教や野蛮な文化から劣等民族を解放し導かねばならない」
ローリダは”明白なる天命”として文化面での”教化”と後に「生物学的な手段」で”矯正”することを全世界へ告げた
ことでバチカンや他の宗教が相次いでローリダを”異端”認定するのと合わせて列強は冷戦を取りやめ連合軍を結成。
こうしてローリダ対連合軍による戦争が始まった。
614 :New ◆QTlJyklQpI:2012/12/16(日) 13:20:07
初期にこそローリダ側の先制攻撃に英・枢軸海軍は抑え込まれ、陸戦でも勢いと数的優勢で制空圏を確保したローリダ
が優位であったものの、占領域は有力な資源やインフラに乏しくドイツ海軍のUボートやイタリア空母機動部隊の
通商破壊戦、カソリック教徒らの大規模な暴動やゲリラ戦により進軍は停滞、欧州に到着した日本軍の本格参戦と
同時に行われたドイツ陸軍の電撃戦により止めを刺された。ローリダ最強と謳われた赤竜騎兵団はガルダーン戦車など
強力な戦力であったが戦場に着く前にドイツの魔王の後継者らと日本の痛い子らによって数を減らされ、
戦闘自体も日本軍を仮想敵にしていたドイツ軍によって文字通りの蹂躙されることとなる。
海でも白獅子艦隊との艦隊決戦でミサイルによる飽和攻撃を日本側のイージスや航空兵力が抑え
報復のミサイル攻撃により白獅子艦隊は壊滅、制海権を奪還することに成功した。
ローリダ政府の対応は遅れ、各占領地に徹底抗戦を指示、焦土戦術に占領地の現地民を
肉の盾にするなど抵抗したが、焼け石に水であり最後まで抵抗していたセンカナス-アルヴァク-デ-ロート少将が
リスボンで独断で降伏したことでアイルランド・スペインからローリダ勢力は完全に放逐された。
その後、ローリダは議会の平民派の突き上げに遭い、捕虜交換などを主体とした休戦交渉に乗り出したがあろうことか
停戦中の前線にロドム-775戦略爆撃機「エイラ‐ノヴァ」による核攻撃を実施、多大なる被害を出した事で交渉は
完全に決裂し、報復核攻撃が即時実行され、現在欧州枢軸を主体とした上陸作戦「ゼーレーヴェ」が開始することとなった。
「神に選ばれし我らが卑劣な虐殺を行った蛮族に降るなどキズラサの名に誓ってあってはならない!」
だがローリダ共和国ではカメシスが自らの核攻撃を棚に上げての報復核攻撃の惨状を喧伝し軍民合わせての本土決戦
を行う事を決定。交渉中の不意打ちを非難しようとしたロルメス率いる平民派議員などの反抗勢力を軒並み収容所にぶち
込み富裕層からの強制徴収や体当たり殉教部隊「ルシフェル隊」による自爆航空隊を編成し迎え撃った。
しかし自爆部隊は当初こそ戦果を上げたがすぐに対策を取られて唯の犬死にとなり、頼みとしていた
ゼラ-ラーガも日本の最新鋭戦闘機の登場で早々に撃ち落とされ、飛来する爆撃機のされるがままとなっていた。
「(もっとも、滅んだ方がまだマシなのかもしれないが・・・・・・・・・・)」
嶋田がそう思うほど欧州列強が画策している戦後処理は苛烈極まるものだった。
具体的には軍の解体に始まり工業力の解体に宗教や教育施設の解体、国の分割にローリダ民族の強制労働など
どこぞのモーゲンソープランもかくやと言った内容になっている。徹底抗戦する、餓死者が発生すると言った
否定的な意見もあったが悉く無視され、寧ろ死んでくれた方が後腐れなくて済むと言った意見が強く
ローリダ共和国の消滅は時間の問題となっていた。
19XX年、後にローリダ大戦と言われた戦争は1つの民族と国の消滅を持って終わりを迎えようとしていた。
最終更新:2013年01月06日 21:22