476. 名無しモドキ 2011/09/30(金) 23:33:51
>>37 - >>41 −アメリカ本土決戦計画(ダールキスト案)−の続編です。 忘れられた戦場 −アメリカ本土決戦計画2・ダールキストの逆襲− 1943年3月10日 テキサス州ダラス郊外 旧アメリカ合衆国本土南方軍司令部 南方軍は、the southern area army と表記される。これは、南北戦争での、南軍(the Confederate army)の異称である the southern army との混同を連邦政府が嫌ったからである。しかし、南方軍司令部のゲートには大きく、the southern armyと 表記してあった。 本土兵站局のロス中佐は、予定より4時間遅れて、南方軍司令部に到着した。シカゴの天候不順のため、南方軍が手配した 飛行機の離陸が遅れたのは想定内であった。列車やバスとともに民間航空機は早い者勝ちの切り取り放題になっており、南方 軍が接収した旅客機DC−2は広大な北アメリカの中央部、プレーリーとよばれる大穀倉地帯を南下した。 かなり寒い年でシカゴ付近が薄く雪が残っていても、この時期にミズーリ州あたりまでくると、前年の秋に蒔かれた冬小麦が 芽吹いて春を感じられる薄緑色の耕作地が見えてくる筈だった。しかし、いくら南下しても、薄いながらも白い雪に覆われた 大地の光景は、途切れることはなかった。もっとも、ロス中佐は暖かく食料豊富というテキサスに想いを巡らして離陸後すぐに 寝入ってしまったために、この風景に驚くことはなかった。 2月に入ってシカゴ市内で暴動が発生しだし商店の略奪、警備の手薄な政府系機関への襲撃、時折起こる政府系治安部隊の暴徒 への発砲が起こる。クシの歯が抜けるように政府高官が様々な口実を弄して脱出する。下級職員の職場放棄が始まり、最後に幹部 や中堅職員とともに各官庁や政府が借りあげた倉庫に備蓄してあった物資が姿を消し始めた。急速に統制を失い崩壊する政府機関 の中で最後の最後まで必要な物資の手当に奔走してたロス中佐は逃げ時を失した。 その日、ロス中佐は僅かに残った、そして今も愛国心と義務を遂行する気概を失っていない部下を率いて数台のトラックでシカ ゴ北部の食料、軍服などが備蓄してある軍需倉庫に向かった。暴徒に襲われたり隠匿される前に、できるだけ多くの飢え凍える市 民に放出するためである。ところがロス中佐は警備を依頼してある州軍に倉庫の正門で止められた。 「兵站局のロス中佐だ。なぜ、止める。」ロスは下車とすると銃を構えた州軍の記章をつけた兵士たちに怒鳴った。 「この倉庫はイリノイ州軍が接収した。」兵士の後ろからえらく品のない中年の将校が大声をあげた。 「ここは連邦政府の倉庫だ。イリノイ州がなんの権利があるんだ。」ロスも声を荒げたが二人の兵士に拘束された。 「戯言を言うな。連邦政府なんてもうどこにない。貴様らは連邦政府軍の脱走兵か、連邦軍を名乗る窃盗団だな。さもなけ れば、公共物を隠匿しようとする政府に巣くっていたネズミどもの一味だ。さあ、こいつらをトラックから引きづり降ろせ。」 将校の指示で碌な武装をしていないロスの部下はたちまちに倉庫の壁の前に両手を挙げた状態で並ばされた。 「非常時につき将校権限でお前達を公共物資窃盗未遂で銃殺する。小隊整列。狙え。」品のない将校は更に大声を上げる。い つの間にか、小銃を構えた兵士達が部下に照準をつけている。 「やめろ!」二人の兵士に身体の自由を奪われたロスが叫ぶ。 「撃て!」将校の号令に兵士達はお互いに顔を見回すばかりで発砲をためらっていた。苛立った将校は拳銃を取り出すと空に 向かって発砲した。 「今度、撃たない奴は撃ち殺す。撃て!」将校の怒号で一斉に小銃から硝煙があがり発射音が轟く。部下たちは崩れ落ちた。 「次はお前だ。」将校はロスを顎で示した。部下の死にショックを受けたロスは力なく引きずられるようにして部下の死体が 転がる壁の前に立たされた。その時、倉庫の中から一人の将校が走ってきた。 「やめろ。撃つな。」三十台前半と見える将校が息を切らせながら言う。 「何故だ。キャクストン中尉。」品のない将校は唾を吐いた。 「は、エンバリー大尉、この人は兵站局のロス中佐です。一月に私が直接、市民用にと軍隊用防寒具二千着受領できたのは この人が自分の責任でと奔走してくれたからです。」見覚えのあるキャクストン中尉と名乗る人物は丁寧に言った。 「ふん、二ヶ月もたてば人間はかわる。」エンバリー大尉と呼ばれた将校は鼻の先でせせら笑った。
477. 名無しモドキ 2011/09/30(金) 23:39:24
「私の顔を立ててくれませんか。あの防寒着のことでは州軍司令官、それに州知事もロス中佐をお礼のために招待したいと おっしゃってました。」キャクストン中尉はますます丁寧な口調で言った。 ますます品の無くなった目でエンバリー大尉は部下達の死体を見る。打算が心で渦巻いているのが手に取るようにわかる。 「わかった。とっとと、ここからうせろ。」そう言うとエンバリー大尉は痰とともに唾を大量に吐いた。 「あのエンバリー大尉って男は、連邦軍の予備役ってことで先月、イリノイ州軍に採用されたんですが、胡散臭い男です。 少尉の任官と予備役の証明書は持っていましたが、十年も少尉のまま留め置かれて突然辞めているんですよ。何かあります よね。でも津波のせいで陸軍に照会もできませんしね。」倒れている部下達の生死を確かめるために跪いているロス中佐に キャクストン大尉が声をかけた。 「余程の無能か、不祥事しかあり得ないな。そんな男のために殺された部下はどうしてくれるんだ。州政府には告発状を出 すぞ。」全ての部下の死を確認したロス中佐はようやく声を絞り出す。 「多分、無駄でしょう。不審者は生命を問わず阻止するようにと命令が出ています。それにエンバリー大尉は、州軍程度の 上官に取り入る才能は持っているようですから。」気の毒そうにキャクストン中尉はロス中佐の肩に手をあてがった。 「連邦正規軍が不審者か。俺も現実を受け入れる時期かもな。しかし、このままじゃ、俺の気が済まない。」ようやくロス 中佐は立ち上がった。キャクストン中尉はすまなそうに声をかけた。 「求められれば証言はしますよ。車で送りましょう。ただし、こっちも生き残りがかかってますから。トラックは接収させて もらいますね。こんな時とは思いますが、ロス中佐もイリノイ軍に志願しませんか。地元出身者がいいとこ取ってますから中佐 は無理ですが大尉くらいなら何とか話をつけますよ。」キャクストン中尉は上目遣いで言った。 「お断りだ。あんなクソッタレ将校と、あんな至近距離で半分以上は外しているヘッポコ兵隊じゃ、棍棒だけ持った暴徒相手 の鎮圧でも荷が重いさ。」ロスも唾を吐こうとしたが口の中は乾いていた。 ロス中佐が自宅に帰り着くと、妻と晩婚だったためまだ小学生にしかならない二人の子供が、拾い集めた廃材によって唯一 暖房の入る暖炉のある居間で待っていた。妻は一通の手紙をロス中佐に渡した。連邦政府機関の中でUSメールは、遅配につぐ 遅配でも最後まで曲がりなりにも機能していた。公共交通はおろか電話、電信などの通信網崩壊により州外の情報が極端に得 にくくなったため、程度の差はあるが各州政府が郵便網の維持だけは取り組んでいたからだ。 その手紙はテキサス州軍からの家族を伴っても可能という招請状だった。 家族とともにテキサスに到着したロス中佐を驚かせたのは、細かなミゾレ混じりだが、雪を ともなった寒風が吹きすさぶダラスの陸軍飛行場の光景であった。飛行場に出迎えにきていた テキサス州軍の将校に聞くと、ダラスでもたまに、雪は降るが、3月に雪を見るのは初めてだ と言う。悪天候で、自動車事故が多発しており、ロス中佐は思わぬ渋滞に巻き込まれた。 「遠路ご苦労。挨拶はこれで抜きだ。ロス中佐、大西洋方面の緊張が高まっていることは承知 してるな。」ロスが部屋に入るなりダールキスト中将は少しばかり大仰な口調で言った。 「存じております。そして、到着の遅延申し訳ありません。」ロス中佐は、暖房過多で暖か過 ぎる司令官室にいながら背筋が凍り付くのを感じた。何しろ、以前ダールキスト中将に提出した 西海岸の焦土計画は、彼の要求とは裏腹の骨抜き計画であり、一部の財閥所有の工場などを除い ては極力、爆発物を過少にして全面的な破壊を避けたり、鉄道網や道路は、工兵を動員すれば最 低限の機能を取り戻せる程度の破壊計画に止まっていたからである。(やっぱり、ばれるよな。 それにしても、用件は到着してから伝えるからすぐに来いとは。いたぶるのも大概にして欲しいん ですが。) 「時間が惜しい。用件を言う。日本と、忌々しい欧州諸国の動きに対応するために、他地域とは独立 して、南方軍独自で、東西の二正面戦域を行う。君の任務はそのための武器や弾薬の調達と兵站計画 を立案することだ。」 (おい、何言ってる。いよいよ南部連合国の独立か?そして、テキサス軍だけで二正面作戦!?) 「二正面作戦ですか?あの、てっきり、今日呼ばれましたのは、先日の西海岸に関する報告書のこと でおしかりを受けるかと思いましたので。閣下のお言葉がよく理解出来ないのですが。」
478. 名無しモドキ 2011/09/30(金) 23:53:56
「あの報告書から、君の有能さが分かったから呼んだんだ。君には黙っていたが、南方軍のスタッフにも西海岸の破壊報告書を出させた。 ところが、人員、爆薬などの資材だけで、君の報告書の十倍近い量を要求してきた。たしかに、そこまでやれば効果的だろうが、最小限の 労力で最大の効果をあげる君の報告書とはレベルが違いすぎる。」 ロス中佐の報告書は、できるかぎり西海岸の破壊を防ぐことが、主眼であったが、有能な彼の計画は、奇しくも日本軍に対する優れた 遅滞作戦計画になっていたのである。無能でも、将軍にまでなる人物ならその計画の意図は理解出来る。 (しまった。凝りすぎたか。俺の悪い癖だ。しかし、それが当面の俺と家族を救った訳でもあるのか。) 「さて、本題に戻ろうか。戦況は今だ好転の兆しは見えない。無能な連邦政府は崩壊したが、国内状況は悪化するばかりだ。しかし 我々には乾坤一擲の勝利を背景に日本を講和の席に着かせて、返す刀でトミーやチョビ髭信者どもを大西洋に追い落とすという選択 しかありえない。その勝利の条件であり、アメリカ最後の希望である我が南方軍が、立ち枯れるわけにはいかない。南方軍は誰に頼 ることなく継戦能力を持たねばならないのだよ。君にはそのための、物資の取得と集積、配置に関する計画を立てて貰いたい。でき れば、地域内での弾薬などの生産計画も頼みたい。もちろん具体的な仕事は南方軍兵站スタッフが行う。ただ、彼らは如何せん能力 と経験に欠けるので、君の指揮下において鍛えてくれ。」ダールキストは陶酔するように言った。 「地域内とはどの範囲ですか。」ロスは事務的に聞いた。 「テキサス、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、ジョージア西部だ。」 (その範囲設定は甘いよ。実質は、テキサスと、辛うじてルイジアナか。もっとも後は、確保しても貧困地域ばかりで、農産物は 取得出来ても武器や弾薬の生産は見込めない。おっと、何を考えている。悪い癖だ。直ぐに仕事の虫が働き出す。) 「では、どれくらいの期間の自足をお考えですか。」 「西海岸に上陸した日本軍ないし大西洋岸に上陸した欧州軍への勝利を得るまでに2ヶ月。同時侵攻の場合は大西洋方面での持久 に備えて都合4ヶ月。2.5会戦分の弾薬は備蓄したい。我々と距離を置きたがる後背定かではないカリフォルニア軍がモンキーども の手先と判明すれば、これを叩きのめす戦闘も考えられる。ために更に1会戦分の弾薬を、日本軍ないし欧州軍の上陸4ヶ月後に も確保しておきたい。現在、手元には1.5会戦分に欠ける位の弾薬の備蓄がある。」 (お花畑将軍でも、割合に常識的な数字をお考えだ。しかし、南方軍は、確か7個師団、テキサス兵と隣接州の兵などの部隊以外 は目減りや士気低下で実質4個師団といったところか。他に訓練未了の州兵部隊が5個師団。それらに、今の御要望の弾薬補給は 厳しいな。遠征など自殺行為だ。)ロス中佐は最新の情報を思い出しながら計算した。 「閣下、南方軍24万人のうち、20万のテキサス部隊にはメキシコから侵入するゲリラの掃討、メキシコへの威圧の為に必要と存じ ます。テキサスから兵力を移動した場合、テキサス自体が危険ではありませんか?」 「それは心配ない。17才から45才までの男性はすでに、週末に軍事教練を開始している。来月からは本格的な州兵の徴兵を行う。 アメリカ最強の州兵だ。初夏には軽装備主体とはいえ35万の精鋭が遠征軍の留守を守る。」 (何が遠征軍だ!曲がりなりにも生産施設が残っているテキサスから20万の南方軍と35万の民兵、都合55万の労働力を引き抜いて どうする。人口から考えて20から40代半ばまでの男の根こそぎ動員じゃないか。日本軍やヨーロッパ諸国軍が来寇する以前に テキサス自体が破綻してしまう。) 「いきなり州兵を増強しても武器が不足かと。M1ガーランドとブローニングM1919機関銃は西海岸の陸軍正規部隊に優先的に配備 されました。スプリングフィールドM1903ライフルなら多少は融通が利くでしょうが、防御時やメキシコ軍は言うに及ばす欧州軍 相手ならまだしも、攻勢に出た場合、日本軍の自動小銃に対抗出来るかは怪しいです。」 「イギリス製の自動小銃を手本に地元業者に自動小銃を発注した。まず、ステンガンタイプを20万丁だ。45ACP弾にパワーアップ させた特注品だ。テキサスには45ACP弾が木に成るぐらいあるからな。それに、連邦政府が密かに発注してアルゼンチンの貿易商が 保管しているブレン軽機関銃1万丁を買い取る。」ダールキストの自信は揺るがない。
479. 名無しモドキ 2011/09/30(金) 23:59:40
(おいおい、ステンガンは自動小銃じゃないぞ。サブマシンガンだ。第一、いくらテキサンが45口径好きだといって、あんなちゃっちい 銃で45ACP弾を連射できるのか?それに、ブレン軽機関銃を発注したなんて聞いたこともないぞ。弾薬も一緒に購入したのか?どのみち 補給部の苦労がまた重なるな。しかし、ちょっと、怪しかねえか。開戦後から、もろに「敵ですサイン」を出していたイギリスが自国産 の兵器を売るかな?最近、弱みにつけ込んで詐欺紛いの外国人ブローカーが暗躍してるって噂だが、大丈夫なのか。) 「ドル暴落のおりにブレン機関銃の代金をよく捻出できましたね。」ロス中佐は疑念を置き換えて質問した。 「支払いは石油による物納だがね。腐りきった大資本は別として、テキサスには愛国的な個人や企業の油田主が大勢いるのだよ。テキサス 州はこれらの油田主の助けを借りて彼らの取引銀行が石油をもとにした兌換紙幣の発行を準備している。」 (石油本位制紙幣か。何が愛国的石油主だ。彼らの利益保護じゃないか。) 「石油ですか?しかし、石油は連邦政府の統制品だったはず?短期間でよくそろえられましたね。」 「統制品リストを確かめたら、原油は入ってなかった。第一、東海岸の消費が無くなったのと、輸送網が混乱していて、テキサスの油田主 は干上がりそうだ。ガルヴェストン(ヒューストンの外港、石油積出港)には、5万?タンカーを3隻用意させた。こちらからアルゼンチン に運んで少しでも高く売りたいからな。」ダールキストは自信満面に言った。 (原油「crude oil」が入ってなかったって・・。「石油(oil)とその製品は・・」て書いてあったはずだ。こじつけだが、テキサスの 油田主の救済策も兼ねているのか。そう言えば、タンカーが所在不明になったと船舶輸送部が騒いでいたがこんなところに雲隠れしてたのか。 そうか。読めたぞ、連邦政府崩壊以前から企んでいたな。こいつ意外に・・。) ドアをノックする音がして、意志の強よそうな感じの太い眉毛を持った長身の将校が入ってきた。 「エドウィン・アンダーソン・ウォーカー大尉、ただ今、出頭いたしました。」その将校はほれぼれする敬礼をした。 「このウォーカー大尉が君の案内役を務める。君の上司のウォーカーとは姓は同じだが敢闘精神は彼の方が数倍上だぞ。」 (そうだろうとも。ウォーカー少将はいかつい顔だが、参謀学校の教官を務めた知性派だからな。) 「ウォーカー大尉は兵站の専門家ではないが、テキサスではどうすれば物事がスムーズに進むかは心得ている。ウォーカー大尉に色々アドバイス をもらいたまえ。」ダールキストは薄ら笑いのような表情で言った。 「小官のテキサスでの任務は決定ですか。」ロスは覚悟を決めた。 「ロス中佐、君をテキサス軍大佐に任命する。兵站実務全般に明るい君の能力には期待しているぞ。」ダールキスト将軍は初めて手を出してロス に握手を求めた。勢いで州軍とはいえ大佐に昇進したロスは苦笑した。 結局、ロス大佐は国内情勢の更なる悪化により末期的な状況を呈してきたテキサス軍の兵站組織を立て直すため苦闘する。しかも、少佐に昇進 して副官になったウォーカーは筋金入りの白人至上主義者で、ガチガチの反共主義者が勢い余っての、反自由主義者でもあったため、ロス大佐の 西海岸とブラウン大学で養ったリベラル的思考と、度々衝突することになることは、現在のロス大佐は知るよしもない。 ロス大佐の最初の功績は、いつまでも届かないイギリス製銃器とジャムと暴発を交互に繰り返すテキサスステンガンにかわって、M1903ライフル とBAR(ブローニングM1918自動小銃)を民間銃器工場で、細々とでも生産出来るように手配したことだ。ロス大佐のような数少ない有能な元連邦軍 将校は各地の州軍に外様の悲哀を感じながら身を投じていた。そう戦国時代の流浪武将のように。彼らが有能であればあるほど、その心情に反して 忠誠を尽くした合衆国再建は遠ざかった。 連邦が対応してくれていたためダールキスト将軍がまったく考慮を払っていないことがあった。外国からの諜報や工作である。特に焦眉の急で あるイギリスからの工作にはテキサスは無防備であった。井の中で州権を声高に唱えていた保守的な地方政治家達は完全な州権を得た代償を思い 知ることになる。蔑んでいたワシントンの政治家と官僚が面倒な対外関係、州間の問題調停という仕事を自分達にかわって行っていたかを。そし て自分たちの想像を超えた謀略渦巻く世界で生きることを。二代前は大奴隷主であったという名門意識や権威は二十世紀半ばの欧州や日本では 嘲笑の対象でしかないことを。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−お わ り−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
最終更新:2011年12月31日 18:21