747 :帝都の休日 外伝:2012/12/18(火) 19:30:21
終わり
続けて投下するのはレス見て思いついた話
一応ユフィの話とモニカの話は世界線同じで別々で書いてるけど、もし完全に交叉したらこんな漢字ということで
かなり荒いどうぞ見てやってください
748 :帝都の休日 外伝:2012/12/18(火) 19:33:45
前書き注意
憂鬱とギアスクロス
嶋田さんロマンス
嶋田さん独身設定
性格改変
一応平和
749 :帝都の休日 外伝:2012/12/18(火) 19:34:32
「ここですわね」
白とオレンジの長袖のワンピースを着て、膝裏まで届く桃色の長い髪を風に靡かせながら嬉しそうに微笑んでいる可憐な少女。
御年17になる神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは、都内にある住宅街の一角、決して豪邸ではないがかといって小さくもない、
そこそこの広さを持った昔ながらの日本の家という印象を持つ、住居の前に立っていた。
表札に書かれている名前は一つ。
“嶋田繁太郎”
彼女が最近知り合い親しくなった男の名だ。
もちろん此処は彼の自宅である。
以前何かあったらと自宅の住所を教えられていた彼女は公務がお休みのこの日、いきなり訪ねて驚かしてやろうと思い電話もせずにやってきたのだ。
早速玄関の横にあるチャイムを鳴らすユーフェミア。
(うふふ、シゲタロウはびっくりするかしら?)
悪戯をするときのような高揚感に胸を躍らせながら心待ちにしていると、インターホンのマイクから声が聞こえてきた。
『はい嶋田です。どちら様ですか?』
(え……? 女の……方?)
だがそれは彼女が待ち望んでいた彼の声ではなく、全く別の女性の声。
予期せぬ突然のことに戸惑うユーフェミアはもう一度表札を見た。
そこには確かに嶋田繁太郎の名前しか書かれていない。
では、この声の主は誰か? 姉のコーネリアや嶋田の友人の辻、果ては同じく彼の友人で日本に住む叔父V.V.にも聞いて彼が独り身であることは知っていた。
つまり家族ではない誰かということになる。
赤の他人という線はない。何故なら『嶋田です』とはっきり言っていたのだから。
『あの……どちら様ですか?』
いつまで経っても返事をしないユーフェミアにマイクから聞こえる声が不審者に対するトーンに変わる。
(い、いけないっ、)
「あ、わたくしは嶋田さんの友人でユーフェミアと申します。あの、シゲタロウ…さんはご在宅でしょうか…?」
慌てて返事をするユーフェミア。
すると、声の主が驚いたような感じで逆に聞き返してきた。
『え…エエっ?! あの、失礼ですがっ、ブリタニアの方ですか…?』
「は、はい……そうですけど」
日本に於いて外国名の人間は大抵がブリタニア人である。
何せ長年の同盟国であり、両国間の経済や一部を除く考え方、在り方が殆ど同化していると言ってもいいほど良好関係にある国同士。
『国家間に真の友情はない』
この当たり前の言葉が唯一当てはまらない国同士なのだ。
故に自然な形で日本国籍を取得して日本に移住する者も多く、外国名を聞いた声の主が彼女をブリタニア人だと思うのもごく普通のこと。
だがここで一つその普通ではない何かがあった。それは言うまでもなく彼女の名前だ。
“ユーフェミア”
この名を自分の子どもに付けるブリタニア人は殆ど居ない。
その名前はブリタニアの皇女の名なのだから。
ユーフェミアに限らず、コーネリア、シュナイゼル、ルルーシュ等々、主立った皇族の名をそれ以外の人間が名乗ることはまず無いし、付けない。
『ま、まさかとは思いますが……ユーフェミア・リ・ブリタニア殿下であらせられますか……?』
「え、あの、わたくし……そのう…………はい……」
迂闊だった。愛称のユフィとでも言っておけば良かった。
今更そんなことを言っても後の祭りと思う彼女は正直に認める。
それにどうも相手も自分を知っているらしい。
『し、失礼しました! 今お出迎えに上がりますっ!!』
それからすぐ開いた玄関から顔を覗かせたのはやはり女性であった。
ユーフェミアと同じく髪は長い。お尻の辺りまであるだろうか?
癖のない真っ直ぐな金髪で、前髪は目の上で切り揃えられている。
しとやかで上品さを感じさせる貴族特有の物腰と口調。
ユーフェミアはそんな彼女を見たことがあった。
その時は上下白の制服で、騎士としては珍しく腰までスリットの入ったスカートを着用していたが、今日は休日なのか白のブラウスに膝までのタイトスカートという服装。
「モニカ・クルシェフスキー卿……で間違いないでしょうか?」
そう、父であるブリタニア皇帝シャルルの脇に控えていた12騎士の一人だ。
「はい、皇帝陛下直属の騎士ナイトオブラウンズの末席を務めさせて頂いております、ナイトオブトゥエルブ、モニカ・クルシェフスキーでございます」
750 :楽隠居?と皇女と円卓の騎士:2012/12/18(火) 19:35:57
*
出迎えてくれたモニカに上がらせて貰ったユーフェミアは、そのまま畳の敷かれた居間らしき部屋に通された。
敷かれた座布団に腰を下ろした彼女は、ここで疑問に思ったことを口にする。
「なぜ、父の専任騎士である貴女がここに……?」
駐在武官として日本に赴任しているというのは知っていたが、その彼女がどうして嶋田家にいるのか?
「簡潔に申し上げれば……その…、下宿先なのです」
単刀直入に質問する彼女に、モニカの方は言い辛そうにそれでいてどこか恥ずかしそうに返答した。
「げ…しゅく……?」
「はい。実は皇帝陛下に信頼の置ける人物として嶋田さんを紹介されたのですが、日本は初めてで勝手も分からないだろうからここに住めばいいと格別の配慮を賜りまして……」
「そ、そう、ですか……、」
別に意識しては居ないというのに知らずに声が震えるユーフェミア。
よく分からない。分からないが気に入らない。
恥ずかしげに語るモニカの頬が気のせいか赤く染まっており、それを見ていると無性に心がざわつくのだ。
「ところで……ユーフェミア様は、その……嶋田さんとどういったご関係なのでしょうか……?」
そんな彼女に今度はモニカの方から質問を切り出してきた。
気のせいか探るような感じで聞いてくるのだ。
彼女は一瞬口を突いて出そうになった言葉を飲み込む。
(貴女に関係ないでしょう?)
こんなことを口にしようとした自分に驚き、直ぐには返答できなかった。
だが答えないわけにも行かず、数回深呼吸してから口を開く。
「え、ええっ、シゲタロウとは親しくお付き合いをさせて頂いておりますっ、」
そう言い切る彼女。
幾つか必要な単語を態と飛ばしていたのはきっと気のせいだ。
「シ、シゲ、タロウ……、」
「はいっ、シゲタロウですっ!」
先ほどまでとは違って今度はモニカの声が震えていた。
それどころか手にした湯飲みの中にあるお茶の表面まで揺れている。
彼女の様子に今度はユーフェミアの声が重しを外されたように明るいものに変わる。
ああなんて清々しくて良い気分なのでしょう。そんな言葉でも飛び出しそうな明るい声だ。
751 :楽隠居?と皇女と円卓の騎士:2012/12/18(火) 19:36:34
「そ、そう…ですかっ、お、お付き合い、というのは……どういう、ことなのでしょう…っ」
「お付き合いは、お付き合いです」
益々声が震えて手まで震えるモニカに対し、ユーフェミアは相も変わらず『友人として』という部分を抜いて話している。
だが執拗にその部分を強調していれば知らない人間でもおや? と思うもの。
ましてやモニカが嶋田のことに付いて突っ掛かっているのは明白。
「あ、ああっ! ゆ、友人としてお付き合いされているのですねっ!」
「っっ!!」
だからこそ直ぐに気付かれた。
納得がいった。胸のつかえが取れたとでも言いそうに、モニカは湯飲みを離した手の平をぽんっと打つ。
「申し訳ありませんユーフェミア様、私は大変な思い違いをしておりました。ユーフェミア様のような淑女がまさかそのような関係をと……」
「……」
「自分で煎れて置いて何ですが、このお茶とても美味しいですね」
モニカは態とらしく、不敬罪ギリギリの言葉を突き付けながら涼しげにお茶を飲んだ。
しかし彼女は踏み出してはならないギリギリの一線を越えてしまったのを次の言葉で知ることになる。
「わたくし……別に“そ・の・よ・う・な”関係になったとしてもふしだらだとは思いませんし、一向に構いませんが」
“ピシッ”
ガラスが割れるような音が響いてモニカの持つ湯飲みにひびが入った。
ひびから漏れ出したお茶がモニカの手に掛かるも、丁度いいくらいにさめていたので火傷したりすることは無かったが。
その様は彼女の心を表しているかのようにも見える。
「……」
「……」
そこから先は全くの無言になってしまった。
ユーフェミアもモニカも、話すことなど無いと言わんばかりに互いを無視している。
特にモニカはユーフェミアが訪ねてきたときに自然と取っていた皇族に対する礼儀など丸めてゴミ箱に捨ててしまったかのようだ。
そんなことになっているとは露知らず、大本の原因であろう男はこの世で尤も落ち着く我が家へと帰ってきた。
「ただいまぁ~」
玄関から聞こえる待ち人の声にピクンと反応したのは一瞬。
「いや~遅くなってすまないねモニカさん、いつものスーパーが棚卸しで休業しててさぁ」
寒くなってきたこの時期、今夜は鍋で暖まろうということで材料を買いに行った嶋田が居間の戸をスライドさせた瞬間――。
南極でもまだこれよりマシだと錯覚しそうな凍り付いた空気が襲ってきた。
752 :楽隠居?と皇女と円卓の騎士:2012/12/18(火) 19:37:13
(な、なんだこの凍死しそうに凍り付いた空気は……)
その空気の出所は二人。
しかし、帰ってきた彼が自分の名を先に出したことで、長い金糸の少女の方は暖かな春の空気を発し始める。
今まで桃髪の少女と一緒に冷気を放っていたのが嘘のようだ。
「お帰りなさい嶋田さん。いつも“わ・た・し・の・た・め・に”すみません」
「あ、い、いや、大した事じゃないよ、うん……大した事じゃ」
「あ、それとお客様がいらしてますよ」
「あ、ああ、わかってる、」
嶋田はモニカに指摘されるまで敢えてそっちを向かなかった。
極寒の空気を放っている長い桃色髪の少女の方を。
「び、びっくりしたよ電話もなく突然だから……」
「突然来たら何かマズいことでもお有りなのでしょうか?」
ちらりとモニカに目を遣るユーフェミア。
「例えば年頃の若い女性を連れ込んで、いけないことをしていらっしゃるとか……」
当然ながら嶋田も彼女の視線の先に誰が居て、今言ったことが誰とのことなのかは分かっている。
「ち、違うぞユフィッ! モニカさんはッ!」
「お聞きしておりますわ」
「な、何だ……立ちの悪い冗談は止してくれ……」
嶋田とユフィの間で一応の完結を見たと思われたそのとき。
「ユフィ…?」
ボソッと恨みの念でも凝縮したような呟きが漏れた。
ギギギッ、と壊れたブリキ人形を思わせる感じで顔を向けた先では春の空気を放っていたはずの金糸の少女が、一転北極の風を解き放っていた。
(ブ、ブリザガ……)
「そうですわ。わたくしとシゲタロウは互いを愛称で呼ぶほど仲の良い関係なのですわ♪」
「ふ、ふふ、仲の良い“ご・ゆ・う・じ・ん”でしょうユーフェミア様?」
「ク、クルシェフスキー卿こそ大家さんと“下・宿・人”ではございませんか?」
(い、いやだ、空気が悪い、悪すぎるぞ我が家……)
753 :楽隠居?と皇女と円卓の騎士:2012/12/18(火) 19:38:15
*
この後、何とか二人を宥めて事を荒立てないように治めた嶋田は、遅くなってはいけないとユーフェミアを送り出した。
その際にも「もう遅い時間ですから早くお帰りになられた方が宜しいのではありませんかユーフェミア様?」と挑発するように言うモニカに、
「下宿人さんに言われるまでもなく帰りますのでお構いなく。さ、シゲタロウ」
「嶋田さんは関係ないでしょう?」
「いいえ、シゲタロウはわたくしを送ってくださいますよね?」
「ま、まあ皇女様を一人で帰すわけにもいかないからなぁ」
「ということでクルシェフスキー卿、また今度ごゆっくりとお話ししましょうか」
「え、ええ、ユーフェミア様ゆっくりとお話を致しましょう……」
(も、もう嫌だ……)
というような遣り取りがあった。
その夜。
温かい鍋を食べたというのに全然暖まった気がしない嶋田が布団の中で眠れずにいると……。
「嶋田さん、起きてますか?」
とモニカが寝室に入ってきた。
「あ、ああ起きてるよ。中々眠れなくてね」
実際に目が冴えてちっとも睡魔がやってこない。
「実は私もです……そこで提案なのですが……」
“一緒に寝ませんか”
彼女はそんな提案をしてきたのだ。
「い、いやそれはマズイんじゃ?」
「何がですか?」
「いやその、モニカさんは年頃の……魅力的な女性で。私も還暦を越えたと言っても男だ……間違いとか……」
世間一般的な倫理観に照らし合わせて教科書通りの回答をする嶋田ではあったが、世間や周りでの評価がどうであれ中身は小市民的精神の持ち主である。
つまり彼の側から間違いを起こすことはまず無いと言えるだろう。
尤も相手が本心からそれを望みその上でどうしてもと言われれば或いは有り得る話かも知れない。
「間違っても……いいんですよ……?」
「モ、モニカさん、」
彼女は嶋田の身体を覆い隠す布団を剥いで、自らもその布団に入る。
いつもしている赤いリボンが解かれた金色の長い髪が、彼女の肩から滝のように流れて嶋田の顔にかかった。
頬や首回りに降りかかり、さらさら撫でる金糸からは何とも言えない香りが漂う。
近付いてくるモニカの顔。碧く澄んだ瞳が熱っぽく潤んでいる。
頬も紅潮しており普段は清楚としか言えない彼女に十二分な色気を与えていた。
「私は……私は貴方を……ユーフェミア様に渡したくない……」
「な、なにを、言って、」
突然そんなことを言われた嶋田はそれがどういう意味なのか全く理解していない。
『鈍感を通り越して馬鹿』
以前辻が言っていたその言葉は決して的外れな物ではないのだというのを伺わせる彼の言葉は、それを言い切る前に遮られた。
『んっ……』
モニカは彼の唇を奪う。
『んっ…んっ…』
強引に荒々しく。
こんなことをして嫌われたらどうしようという考えも過ぎったが、これくらいのことはしておかなければ、この先きっと後悔すると思ったのだ。
今までのようなぬるま湯に浸かっていては、突然現れたあの強敵には勝てない。だからこそモニカは攻勢に出た。
幸い闘いは彼女の得意分野。それがどのような戦場であれ屈することなど有り得ない。
ラウンズの戦場に敗北は無いのだから。
数分にも渡って己が舌を彼のそれに絡めて唾液を塗り込み、自身の唇の味と唾の味を覚えさせようとした彼女は静かに唇を離した。
「どう、ですか…?」
「ど、どうと言われても……ま、まあ美味しいよ……」
モニカの口付けを受けた嶋田は照れくさそうにそう言うと彼女の金糸の髪に触れた。
754 :楽隠居?と皇女と円卓の騎士:2012/12/18(火) 19:39:17
「一つ、聞いても良いかな?」
「なんでしょうか?」
「ブリタニアの貴族や皇族の間ではキスって挨拶になっているのかい?」
「へ……?」
彼が呟いた意外な言葉に、嫌われることも覚悟して決死の思いで口付けをした彼女は間の抜けた声を上げた。
それはそうだろう。普通こんな状況でキスされて分からないなどと誰が想像する?
「そ、そんなわけないじゃないですかバカァァ!!」
「い、痛い痛いっ、悪かったよゴメンってっっ、」
「本当に悪いと思ってるんですか?」
「も、もちろんだとも」
「じゃあ、許してあげます……但し、今この瞬間から、私のことはモニカと呼び捨てにしてください……」
「えっ、いや下の名前を呼び捨てはちょっと」
「ユーフェミア様はよくて私ではダメだと……?」
「ユフィはほら、愛称だからっ、」
屁理屈をこね始めた嶋田をジッと見つめるモニカ。
そんな彼女に彼はやれやれと言って。
「モニカ……」
「もっと、呼んでください」
「モニカ」
「もっと」
「モニカ」
「もっともっとです!」
「モニカ、モニカ、モニカ、」
「……」
散々自分の名前を呼ばせた彼女だったが、流石にユーフェミアのように彼を『シゲタロウ』とは呼べなかった。
だが、それでもいいと考える。この鈍感な人ならその程度でどうこうはならないからと。
よしんばなってしまったならば此方も攻勢に出るだけ。
「嶋田さん」
「なんだい?」
「今日は諦めます」
「だから何が……?」
「ふふっ、御自分でお考えください♪」
モニカはそこまで言うと嶋田の身体に縋り付くようにして目を瞑る。
そのまま何度か彼に頬ずりしながら。暖かい布団の中で微睡みに沈んでいった。
「う~ん、なんだかよく分からんが……モニカは俺を好き……なのか?」
自分を抱き枕状態にして眠ってしまったモニカの髪を撫でながら、そんなことを考える嶋田。
こんな可愛い女性に好かれるのなら男冥利に尽きると考えつつ、未だ確信を持てないのが彼だったりする。
「まあ、いいか……」
難しく考えても答えなど出ないと考えるのを放棄した彼は、自分に抱き着いて眠るモニカを同じように抱き締めながら、一日の疲れを癒すために眠りに就いた。
最終更新:2013年01月06日 21:38