314 :taka:2013/01/08(火) 07:38:13
ワルシャワ郊外
「あんなものまで投入するのは些か大仰過ぎるのではありませんか?」
「まぁな。日本や英国が五月蝿く言うのは目に見えているが、ここで厳しく制圧せねば暴動が更に拡散してしまう」
特製の大型貨車に搭載された巨大な臼砲が、彼らの眼前を過ぎりワルシャワへと向かっていく。
対ソ連戦で幾多の要塞を粉砕し、バグラチオンでも指向された突撃路に殺到してくるソ連軍の機甲戦力を文字通り粉砕した火力の王。
既に正規戦闘の兵器としては時代遅れの存在にはなっていたが、こうした区画丸ごとの制圧力に関しては折り紙付きではある。
親衛隊の制服を着た2人はそんな感慨を抱きながら自走臼砲を見送った。
彼らが心配しているのは、これら鎮圧戦を日英が如何に反応するか、だ。
蜂起したポーランド人など眼中に無い。飼い主に噛み付く家畜は処分するに限る。
「だが、いい加減煩わしいのも事実ではある。ゲルマンに噛み付くしか脳に無い連中を処理するのも只ではない。
人員も経費も銃弾も無料では無いんだ。だからこそ、ベルリンは日本の提案を呑むそうだ。
今回の蜂起で提案に渋っていた方々も呑まざるを得ないと判断するだろう」
「北米に作られた自由ポーランド政府への移民、ですね?」
「そうだ。元々、ユダヤ人やポーランド人などといった不適合な民族に対する最終的な解決手段は欧州からの追放だ」
ヒトラーやヒムラーは、戦前の段階に置いてドイツの勢力圏から彼らを追いだし、中東やアフリカに移送する計画を建てていた。
しかし世界大戦における予想外の疲弊とそれすら些末に思える大津波の被害と余波。
その埋め合わせをすべく、彼らを労働力として消費、酷使してきたのだがどうにもそれが限界を迎えてきたのだ。
誰しも未来に活路を見出せなくなれば自棄になるか暴走する。
旧ポーランド領内に住むポーランド人の大半は、貧困と空腹と寒波によって強制的に後者を選んだ。
彼らの上官であるハイドリヒも様々な方策をもって対処してきたがそれも限界に近付いている様だ。
「まぁ、元々東方生存圏はドイツ人とそれに従順な民族の為にある。
日本人の手を借りるのは癪だが、不要民族を大幅に一掃出来るのであれば問題ない」
「そうですな。あの病理と混迷の巣窟である北米に連中にとっての希望があれば、ですが」
「その点に関しては問題ない。欧州から離れた以上は連中がどうくたばろうが我々にとっては知った事ではない。
それに、日本の諺を借りればこう言うじゃないか。『住めば都』とな」
ズドンと、腹に響くような砲火が聞こえる。
ワルシャワの街に、幾つもの煙が立ち上がり始めた。
「始まった様ですな」
「そうだな。やりすぎて市街地の復旧が遅れなければいいが……これを機にドイツの建築式に改めてもいいがね」
寒そうにコートの襟を立てながら、SS将校は珈琲を啜った。
やおい
最終更新:2013年01月11日 19:21