697 :楽隠居?と円卓の少女 第6話:2013/01/22(火) 20:27:54


楽隠居?と円卓の少女 第6話




第一種接近遭遇?




深い眠りに就いていたナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーは、何かの気配を感じて飛び起きていた。

「嶋田さん・・・?」

飛び起きたモニカが直ぐに気付いたのは隣に寝ている筈の嶋田の姿がないこと。
正月に床を共にして以降、彼女は嶋田と一緒に寝るようになった。
最初の間は渋る彼だったが、毎日ねだり続けた結果今では当たり前のように一つの枕で頭を並べ、一つの布団で寝ている。
別に変な事はしていない。そんなことを口にする勇気もなければ、そこまでの関係になった訳でもないから。せいぜい“おやすみのキス”を求めるくらい。
それですらありったけの勇気を振り絞っての物で、「し、仕方ないなあ、」と恥ずかしげに応じてくれる彼に甘えて何とか掴み取った物だ。
『いくらでも甘えてくれたらいい』という彼の言葉を思い切り活用していた訳である。

仮にもし、何かの間違いで彼が自分を抱こうとしてくれたら大人しく受け入れるつもりではあったが、生憎とそのような事は起こってなかった。
胸は平均以上に大きいし身体ももう成熟した大人の身体。
それなのに何もしてくれないのは自分に女としての魅力がないからなのかと落ち込みはしたが、実際は相当意識してくれているようで、耳が真っ赤になっているのを見たときはとても嬉しかった。
眠っている彼の胸に触れてみたときなど早鐘を打つ鼓動を感じて逆に自分が恥ずかしくなったくらいだ。
だがそんな彼の様子を知り、態と身体を寄せくっついて眠るようになった辺り(私も思い切ったことが出来るようになったな)と自分で自分を褒めるモニカだったが、その身体に感じるはずの暖かい温もりが何処にも無い。

「どこ、ですか?」

夜中に用を足す為に起きているのかもと考えたが、それにしては布団も枕も冷たく、まるで最初から誰もいなかったように感じられた。
そんな筈はない。今夜も一緒に寝ていた。ちゃんと一つの枕で頭を並べていたのに。
そして先ほどから感じる何かの気配。それは部屋の外から感じられた。
そこに何かが有るのかも知れない。普段の冷静な彼女ならそんな不用意な行動は取らなかったのかも知れないが、嶋田が居ないという事実が彼女から冷静さを奪っていた。

698 :楽隠居?と円卓の少女 第6話:2013/01/22(火) 20:28:24




閉め切っていた部屋の戸をモニカは恐る恐る開けてみる。
すると――

「なッ!?」

廊下になっている筈の部屋の外が眩い光に包まれた妙な空間に変貌を遂げていた。

「ど、どうなっているの!?」

光の空間に踏み込んでしまった彼女は思わず叫んでしまうがその疑問に答えてくれる者はいない。
ふと後ろを振り返ると今出てきた自身と嶋田の寝室になっている部屋まで無くなっているではないか。
代わりに広がっているのはどこまでも続く光の世界。

(ここは何処?)

モニカは不安になった。
危機的状況に於いて誰よりも冷静な対処が出来る筈のナイトオブラウンズである彼女と言えど、流石にこのような未知の体験、不思議な事象というのは専門外。
これでもしモニカの隣に嶋田が居れば、彼を守る騎士だと自認する彼女は己を鼓舞出来ていたであろうが、居ない今はこの現象に不安を覚えるだけだった。
そして、そんな不安いっぱいな彼女の視界に何かが映り込んだ。

「え? なに?」

それは前方5m程の場所に滲み出てくるような感じで現れる。

「ひ、と?」

現れたのは人影。一瞬嶋田かと思ったが体格が違う全くの別人のようで、後光が差しているせいか人間の筈なのに別の何かにしか見えないそれ。
完全に姿を現したそれは、ゆらゆら動きながら彼女の方へと近付いてきた。

「何者!?」

身構える彼女の質問に答えないその人影はすぐ前までやってくると――


“アセンションッッッ!!!”
「キャアッッ!!」


人に出せるとは思えない大きな声で叫んだ。

699 :楽隠居?と円卓の少女 第6話:2013/01/22(火) 20:28:55




『君・・・君は、地球人かね?』

影しか見えないその人物だったが、シルエットから頭がもじゃもじゃパーマになっているのが分かった。
更に異様に大きな光り輝く目だけハッキリと見える。

(う、宇宙人・・・?)

その外見と質問から連想できるのはそれしかない。というよりそれ以外には思い付かないだろう。

『君は、地球人かね?』

全く同じ質問を同じ声の高さで聞いてくる相手に不気味な物を感じた。

『君は、地球人かね?』

これは答えないとマズイかも知れないと考えた彼女は、当たり前の答えを返す。

「は、はい、地球人です」

この問いに対して地球人以外の何を答えろと言うのか?
ブリタニア人だろうが日本人だろうが、高麗人や清国人もみな同じ地球人である。
人種や国、敵味方という違いこそあっても地球人かと聞かれれば地球に住んでいるのだから地球人。
そう考えて答えたモニカだったが・・・


『ウソをつくんじゃないッッ!!!』


何故か相手を怒らせてしまった。

『君のような金色頭の人間が地球人な訳がない!! 君は金星人だッッ!!』
「エエエエッッ??!」

髪の色が金色だからといって地球人じゃないと言われたら億単位の人間が地球人ではなくなってしまう。
実は地球は金星人の植民地だった!! なんてふざけたことになりかねない。
だがそう考えるモニカを無視して話を進める宇宙人。元々通じ合える筈がないのだ。

『君は金星人でありながらウソをついた。これはトモダチとして友愛しなければならん』
「わ、わたしは地球人です! ウソなんかついてません!」
『まだ言い張るか! こうなったらボク自らの手でキャトルミューティレーションを行うしかないようだな』

よくわからない事を口にして一人で納得した宇宙人はぬっと手を伸ばしてモニカの腕を掴んだ。

「は、離してッ、離してくださいッッ!」

必死になって抵抗するも生温かいその手は凄い力を持っているようでビクともしない。

『怖がる事はないぞボクのトモダチ。さあ行こうか母なる大地金星へ!!』
「いやッ、いやァァァァッ! 助けてッ、助けて嶋田さんッッ!!」

想い人の名を叫び助けを求めるモニカではあったが、その声は光の空間に虚しく響くだけで彼が姿を現すことはなかった。
そして強い光に包まれたかと思うと身体が消滅するように消えていき、同時に意識も薄れ、彼女という存在は溶けるように霧散していった・・・。

700 :楽隠居?と円卓の少女 第6話:2013/01/22(火) 20:29:33




「いやァァァァァァ―――――ッッ!!」

意識を失った筈のモニカは悲鳴と共に飛び起きた。

「あ・・・あれ・・・?」

光に飲み込まれて消滅した筈なのに。そう思った彼女の視界に映るのは薄暗い寝室の景色。
もう日が少し昇ってきているのか、カーテンの隙間からは光が零れていた。

「大丈夫かいッ!?」
「え・・・?」

直ぐ隣から聞こえてきた声。自分の肩を掴む手の温もり。
横を振り向くとそこには心配そうに自分を覗き込む嶋田の姿があった。

「嶋田さんッッ!」
「わッ! い、いきなりどうしたの?!」

彼の姿を見て迷わず抱き着くモニカ。

「ぅぅぅぅ~~~ッッ」

抱き着いたまま彼の首筋に顔を埋めて温もりを求めた。
怖かったのだ。自分が宇宙人に浚われて消滅してしまったのではないかと。

そんなモニカに嶋田は「よほど怖い夢を見たんだな」と抱き着いてくる彼女を受け止め、背中や髪を優しく撫でてあげる。

「よしよし、怖くない怖くない」

幼い子供ならまだしも二十歳前の女性をあやすのは何か妙な感じがすると思いながら、嶋田は暫くの間彼女と抱き合ったままでいた。




後日、日本の要人と会談があり、都内某所の政党本部に訪問する在日ブリタニア大使コーネリア皇女の護衛を頼まれたモニカは、そこである男と顔を合わせた。

「やあ、ボクのトモダチ」

顔を見るなりそう言って握手を求めてきたフレンドリーな日本公民党幹事長を前にして、口から泡を吹いて盛大に気絶してしまった彼女にその場は騒然となる。

「なんだテロか!?」
「しっかりしてくださいクルシェフスキー卿ッッ!!」
「救急車ッ! 119番だ早くしろッッ!!」

病院に運ばれて意識を取り戻したモニカは心配で駆け付けていた嶋田に抱き着いて「金星人ッ 金星人がッッ」とひたすら怯えていたとか。

尚余談ではあるが、あのブリタニア最強の騎士ナイトオブラウンズの一人、ナイトオブトゥエルブ モニカ・クルシェフスキーを笑顔で瞬殺した鳩川雪夫は、
『何を考えているのか分からないけど凄い奴』『大日本帝国最強の政治家』『ナイトオブポッポ』
と囁かれるようになり、党内や公民党サポーター内での株が大きく上がったらしい。

その一方、インターネット掲示板弐ちゃんねるなどでは
『モニカたんに酷い事するなッ!!』『鳩川ァァ! よくも俺の嫁をォォォォ!!』『ちょっと抗議の電凸してくる』
などと叩きまくられたらしいのだが

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最終更新:2013年02月10日 19:55