834 :休日:2013/01/26(土) 20:24:13

提督たちの憂鬱キャラがギアス並行世界に転生
嶋田さん独身でロマンス
楽隠居?と円卓の少女シリーズ
性格改変注意
100%ネタ
ギャグ回

835 :変なKMF:2013/01/26(土) 20:25:31


変なKMF




「これが兵器密売組織の摘発で回収されたサザーランドコピー、ジェンシーです」
「・・・・・・正確には“高麗製の”ですよね?」
「ま、まあ、」

眼前に佇むブリタニアが開発した第五世代KMFサザーランド。
その設計図を元にデッドコピーした清国製のKMFジェンシーを更に劣化させた高麗製ジェンシーを見上げるのは、神聖ブリタニア帝国軍の頂点に立つ最強の12騎士ナイトオブラウンズが一人。
ナイトオブトゥエルブの称号を持つ女性、モニカ・クルシェフスキー。
此処は以前彼女が同盟国日本の第七世代量産機――ウィンダムの模擬戦兼テストパイロットを行った実験機用の演習場。

(乗りたくない・・・)

モニカは此処に来たときの服装である騎士服と黄緑のマントという制服姿ではなく、白いパイロットスーツに身を包み、長い金糸の髪も赤いリボンで二つ括りにしていた。
それが意味するのは彼女が今からKMFに乗ると言うこと。
どの機種に? 目の前にあるのは1騎だけなので自ずと答えが分かる。
そう、メイドイン高麗の劣化ジェンシーに騎乗するのだ。
何故あれほど乗るのが嫌だと言っていた彼女が劣化ジェンシーに騎乗する気になったのか?
その理由は、先頃熱海にオープンした新しいヘルスセンターのペアチケットを引き替えに出されたから。
オープン初日から大盛況でチケットが手に入らないのだ。
彼女は日頃お世話になっている大家さんの嶋田繁太郎にプレゼントしたいと思い、今回の劣化ジェンシー騎乗を引き受けたのである。
餌に釣られるなんてと思いはしたが、「嶋田さん喜びますよ」などと言われたら引き受けざるを得ない。
恋する女の純な気持ちを逆手に取られていたのだ

(でも今更こんな物体のデータなんて必要なの?)

モニカが疑問に思うのは当然だ。
第七世代機の量産型を完成させ実戦配備を始めている日本は既に第八世代の実験機を開発している。
勿論、仮想敵国である高麗のKMFなので、詳細データを調べるという必要はあるかも知れないが。
日本から見れば高麗など吹けば飛ぶような小国でしかない。それを考えるとどうしても疑問に思わざるを得ないのだ。
ただ研究者側としてはどんな動作をするのか気になるというのがあった。だが誰も乗りたがらない。高麗製というだけでみんな忌諱しているから。
そこで白羽の矢が立ったのが以前模擬戦を引き受けてくれたブリタニアの駐在武官モニカ。
無論日本に住んでそれなりの時間を過ごしている彼女もメイドイン高麗の悪い噂をよく耳にする。
だから乗りたくないと断ったのだが、「嶋田さんが喜ぶ」という餌を用意されてまんまと引っ掛かってしまったのだ。

836 :変なKMF:2013/01/26(土) 20:26:01


考えていても仕方がない。早く終わらせて帰ろう。そう思ったモニカはコックピットハッチの下に立ち、搭乗用ウインチを握って巻き上げボタンを押した。
だが――。

「あれ?」

動かない。

「モニカさんどうしました。早く乗ってください」

ウインチのワイヤーを握ったまま突っ立っている彼女に声を掛ける開発主任。

「あの・・・ウインチが作動しません・・・」
「・・・・・・」


応急処置で何とか作動したウインチ。
コックピットに乗り込んだモニカは士官学校で騎乗したサザーランドと見掛けは同じ配列の計器類を眺めて(懐かしいわね)と思い、起動キーを回した。

「・・・」

動かない。
キュキュキュキュと変な音がして機体が振動している物の、壊れかけのバイクみたいに中々起動しない。
四回五回と繰り返しキーを回して漸く動いた。

(やだな・・・)

そんな劣化ジェンシーの動作に悪い予感しかしないモニカは、取りあえずランドスピナーを動かしてその場から移動。
ターゲットとして用意されていたダミーに向けてスラッシュハーケンを打ち出してみた。
すると左肩から発射されたハーケンは狙い違わずダミーを撃ち抜く。止まっている目標物など目を瞑っていても外す事はない。

「一応普通に動くか」

確認した彼女はハーケンワイヤーの巻き上げボタンを押す。
が――。

「・・・」

動かない。

(どうなってるのこれ・・・)

仕方がないので右肩のスラッシュハーケンを打ち出してダミーを破壊するか、衝撃を利用して貫いたまま回収できないワイヤーを切り離そうと試みる。

「これで!」

“バシュッ”

音を立てて勢いよく打ち出されたのは――。

「ええッ?!」

劣化ジェンシーの右腕。
そう、スラッシュハーケンは発射されたのだが、伸びきったと同時に右肩ごと腕がすっぽ抜けたのだ。

『何やってるんですかッ!!』
「そんなこと私に聞かないでくださいッ!!」

見かねた主任が無線口で怒鳴っているがそんなのこっちが聞きたい。
どこの世界にスラッシュハーケンを発射して腕ごとすっぽ抜けるKMFがあるというのか?
少なくともモニカは見たことも聞いたこともないし、こんなおかしなKMFに騎乗したのは初めてだ。

『むうう、配線トラブル? 電気系統の故障?』

無線機の向こうで物騒な事を言い始めた主任に対し彼女は(そんな危ない物に乗せないでよッ!)と憤る。

『とりあえずその場に止まっていても意味が無いのでダミーに接近して蹴りでも入れてワイヤーを切り離してください』
「はい・・・」

言われるがまま脚部のランドスピナーを急速回転させる。
そも言われる以前にダミーに接近して力尽くで切り離す以外にないだろう。

837 :変なKMF:2013/01/26(土) 20:26:35


(なんて無様なの)

誉れ高き皇帝陛下の剣。
ナイトオブラウンズの自分がこのように無様でみっともない操縦をしているところを誰かに見られたら騎士の品格に関わる。
それもこれもこの変なKMFのせいだ。

(こんな姿、嶋田さんには絶対に見られたくない!)

忠誠を誓う主シャルルとは別に、もう一人の主君として己が全てを捧げて恋慕う嶋田にだけは見られたくないと操縦桿を握る手に力を込めたモニカは無意識のうちに速度を上げた。
その瞬間――

“ギャリリリッッ!!”

「キャア!!」

唸りを上げて回転していたランドスピナーが、何かに引っ掛かったように急停止。
当然劣化ジェンシーの本体も急停止するわけで、加速した勢いのままつんのめって前のめりに倒れてしまった。

『あちゃ~』

一部始終を見ていた主任が無線の向こうで額に手を当てている。

(もうイヤ・・・)

うつ伏せで倒れる中モニカは「もうやってられない!」と操縦席ハッチの開閉ボタンを押した。
だがハッチは開かない。その代わりに――

「きゃああああああ~~~~ッッ」

彼女は操縦席ごと機体の真上に吹っ飛んだ。

ハッチの開閉ボタンを押したら操縦席が切り離されたよ!
そんな説明でも聞こえてきそうな有り得ない脱出装置の起動。
最後は三つあったパラシュートの内、一つが不完全な開きになるマルファング。
当たり前だが地面に着地するときの衝撃はちょっとばかり大きな物で。

「きゅうう~」

ど派手に着地したモニカはコックピットブロックの中で目を回していた・・・。

838 :変なKMF:2013/01/26(土) 20:29:59





幸いなことに怪我は無く無事だったが一歩間違えば大けがをさせていた可能性もあり、それを知った嶋田は。

「高麗製のKMFに乗せるなんてモニカさんに何かあったらどうする処だったんですかッッ!!」

と珍しく烈火の如き怒りを露にしていた。ただ当のモニカは(嶋田さん・・・こんなに私の事想ってくれてるんだ)と内心嬉しいと思い、怒ってなかったりしたのだが。
それでも高麗製のKMFには二度と乗らないと誓いを新たにしていた。

まあその後、嶋田とモニカは熱海のヘルスセンターで二人仲良く温泉(混浴)に入って溜飲を下げた訳だが、この辺り主任の思惑通りに運んでいるのではと引っ掛かる二人であった。

「気持ちいいなあ~、やっぱり温泉は最高だ」
「気に入ってもらえましたか?」

髪を頭の上で綺麗に纏めてバスタオルを身体に巻いたモニカは久々の温泉を満喫するほくほく顔の嶋田の横に腰を下ろす。
不思議と恥ずかしい気持ちはなく、二人は自然に身体を寄せ合い暖まっていた。

「勿論だよ。ありがとうモニカさん」

モニカの頭を撫でる嶋田。

「えへへ♪」

撫でられたモニカは嬉しそうな笑顔を見せる。

「でもあの人(主任)には要注意だよ?」
「それはもう。今回のことでよ~くわかりましたし」

湯の中で寄り添う二人はまるで歳の離れた夫婦のようだと周囲の客は思ったとか思わなかったとか。


数日後、高麗製のKMFに在日ブリタニア駐在武官を務めているナイトオブラウンズのモニカ・クルシェフスキーが騎乗したらしい!
という情報を何処からか手に入れた週刊誌の記者にコメントを求められた彼女は言った。



“あんなKMFを乗りこなす高麗軍の兵士はある意味ラウンズ以上の勇者です”

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年02月10日 20:02