239 :共通話4 全ては道具、だがそれ以下も有る:2013/02/05(火) 20:49:12

提督たちの憂鬱キャラがギアス平行世界に転生
帝都の休日・楽隠居?と円卓の少女共通話

240 :共通話4 全ては道具、だがそれ以下も有る:2013/02/05(火) 20:49:51


共通話4 



全ては道具、だがそれ以下も有る




『日本近海にて捕縛された兵器密売組織の船にハングル文字が書かれたKMF!!』


着々と事の準備を進めていた大清連邦に思いも寄らぬ凶報が飛び込んできた。

「やってくれおったなあの阿呆どもめがッッ!!」

大清連邦の首都哈爾浜にある中華様式の宮廷。
その宮廷内の最奥にある一室にて、清国の支配者である大宦官の一人高亥(ガオ・ハイ)は、今届いたばかりの情報に憤激し、調度品である花瓶を叩き割っていた。
彼の前に立つ情報を持ってきた男、高亥の側近である大清連邦遼東軍管区司令、曹(ツァオ)将軍は、上司のあまりの怒りようにただ立ち尽くし、口をつぐんだまま動かない。

「これでは予定が狂ってしまうではないかッッ!」

高亥はここ十年ほど人が変わったように民のことを(主に中華北東部、清国領となった地域)考え、貧困に喘ぐ地域には私財さえはたいて人助けをするような賢君振りを発揮していた。
無論、十年と少し前から中華連邦を割ることを考えた支持集めと基盤を固めるためのバラマキであった訳だが、直接その恩恵を受けることになった中華北東部住民にしてみれば、彼は神のような存在だった。
何せ彼のバラマキのお陰でこの地域の貧困層が相当数助けられたのだから、今までの行いを振り返ってみてもプラスに感じる人の方が多い。
『心を入れ替え、皆の為に尽くしたい』と直接住民達の前に出てきて涙ながらに訴えたのも心理面に大きく作用した形だ。
お陰で清国国民からの信頼は厚く、実に国民の七割が彼を支持するようになっていた。

だが実際の処、彼は国民のことなど道具程度にしか考えていない。
自分が贅を尽くす為には国民という名の道具を手入れしなければならない。
その手入れというのがばらまいた金なのだ。お陰で彼は特に労することなく清国を中華から分離させる事に成功した。
本来なら住民の猛反発に合ってもおかしくないのだが、住民投票の結果は反発処か北東部地域の九割が独立に賛成という異例の事態。
前述のバラマキ=投資が効いていたのだ。
中華からすれば宦官達の厄介払いだったのだが、この地に宝の山が眠っていることを実地調査で知っていた方としては正に“成功”だったのである。
ばらまいた金などその宝の山を掘り起こせば回収できる。自分が贅を尽くしても宝によって国が豊かになれば国民も不満を抱くことはない。

『道具は使い捨てるのではなく、手入れをしながら使い続ける物』

常々そう言っている高亥は軍の事も道具と考えている。
軍拡に走り、中華やE.U.さえ未だ保有していないKMFの技術まで金の力で手に入れたのは何の為か?
この道具を使って自身の欲望を更に満たそうとする為だ。
無論軍にばかり金を使えばそのしわ寄せは国民に行くが、これも宝を掘れば済む話。それだけの宝の山が北にはある。
但し、その為には北にいるE.U.に退いて貰わなければならない。
一度シベリアを占領してしまえば此方の物。ジェンシーを投入すればシベリア方面軍を破るなど容易い事だ。
加盟国の財政・経済状況が悪化の一途を辿りつつある彼の国ならば、遠いシベリアに戦力を送るなどそうそう出来ない為、現状のシベリア方面軍を叩き潰せば事は終わるだろう。

だが生憎と数が少ないのだ。独立前の機密保持という諸事情により今まで工場をフル稼働できなかったせいでジェンシーの数は未だ350騎。
これでも行けるとは思うのだが、やはり倍の700騎は欲しいところ。
その為には今暫くの時間が必要だった。

にも拘わらず準備の段階で半島の阿呆共に邪魔されてしまったのだ。
今までが順調だった分、降って沸いたような躓きに怒り心頭である。

「日本に捕縛されたのは高麗製のジェンシー。見掛けはブリタニアのサザーランドに似て居るが、ブリタニアが高麗にKMFの技術を渡そう筈がない事は誰でもわかる」

ブリタニア以外でKMFの技術を保有しているのは日本だが、日本もまた現状では第三国に輸出していない。
では何処が? となれば、高麗の同盟国である清国へと辿り着くは必定。

「で、ではE.U.は?」
「勘付いたであろうな・・・高麗並みの阿呆でなければの」

勘付かれた以上、E.U.もKMF開発を加速させる。
それ処か直ぐ隣の中華連邦も右に倣えだ。
ならばもう今の内に打って出なければシベリアを手にするのが難しくなる。

241 :共通話4 全ては道具、だがそれ以下も有る:2013/02/05(火) 20:50:29


「曹将軍。現状動かせるKMFは如何ほどか?」

動かせるKMFという聞き方をした以上ガン・ルゥも含まれているだろうと判断した曹はそれを含めた数を述べる。

「ジェンシー350騎にガン・ルゥ1500騎にございます」
「1850騎か・・・」
「その他に戦車4200両、装甲車両5000両がございますが」
「戦車や装甲車ではKMFの相手にはならぬであろう? 如何にパンツァー・フンメルとは言えな」

戦車などの既存の戦闘車両がKMF相手には分が悪すぎるというのは明白だった。
紛争地域の邦人救助などで日本とブリタニアが何度か使用していたが、武装勢力の持つ戦車をまるでゴミのように撃破していたからだ。
それが戦車に変わる新たな戦力として配備された第四世代KMF無頼とグラスゴーである。
当然これを知った列強を始めとする持たざる国々は、技術の公開を要求したわけだが、両国は『第一級の軍事機密である』として未だ技術の公開はしていない。
近々第四世代機に限ってだが、友好関係にある東南アジアの国々へ供与するかも知れないという話が上がってはいたが。
これも言い換えれば役目の終わった骨董品だからこそ供与しても構わないと言える物で、その域にさえ達していない中華とE.U.にしてみれば恐るべき事だった。
無論中華、E.U.共に指を咥えて見ていた訳ではなく、独自に研究し、開発していたのだが、完成したのはKMFとは呼べない無骨なKMF擬きのガン・ルゥと、やや性能が高いパンツァー・フンメル。
到底純正品のKMFには適わない性能だが、それでも戦車よりは有用であるというのが実戦テストで明らかになっていた。
戦車の砲とて当たればKMFにダメージを与えられるし撃破することも可能だが、機動性の高いKMFには容易に躱されてしまう。
その間隙を縫って接近したKMFに個別撃破されていくだけで、最早時代遅れの代物と化していた。
故に列強はKMF開発に血眼になっているのだ。

そんな列強を尻目に日ブに続く第三の純正KMF保有国となっていた清だったが、高麗に供与していた劣化版ジェンシーがこのタイミングでニュースになるとは考えてもみなかった。
数が揃うまでは訓練も公開もするなと言い含めていたのだが、よりにもよって兵器密売組織に横流ししていたとは。

「実質上の地上戦力はジェンシーとガン・ルゥ、そして10隻の地上戦艦竜胆(ロンダン)と考えるとして、航空部隊はどうか?」
「第五世代戦闘機“S-20”60機、第四世代戦闘機“S-10”450機、それにKMF輸送機などの作戦機が300機ほど」

航空戦力は十分だ。

「E.U.の戦力は?」
「シベリアの戦力ということでしたらそれ程多くはございません。地上軍がパンツァー・フンメル約1000騎。航空部隊も第四.五世代戦闘機が凡そ150、その他作戦機が200」

戦力状況を説明する曹は手元の資料を高亥に渡す。

242 :共通話4 全ては道具、だがそれ以下も有る:2013/02/05(火) 20:51:26


大清連邦軍


総兵力140万+

第五世代KMFジェンシー350騎
KMFガン・ルゥ1500騎
戦車4200両
装甲車両5000両
地上戦艦竜胆(ロンダン)10隻


第五世代戦闘機“S-20”60機
第四世代戦闘機“S-10”450機
KMF輸送機などの作戦機300機


空母1
揚陸艦4
巡洋艦6
駆逐艦16
フリゲート10
潜水艦8




E.U.シベリア方面軍

総兵力27万

KMFパンツァー・フンメル1000騎
戦車1700両
装甲車両2000両

戦闘機150機
作戦機200機

巡洋艦5
駆逐艦13
潜水艦10


本国の経済的理由から全体的に戦力縮小傾向。

243 :共通話4 全ては道具、だがそれ以下も有る:2013/02/05(火) 20:52:04


海上戦力について聞かなかったのは、主戦場となるのが内陸部だからだ。
それにもし海戦となっても戦力的には大した相手ではない。
彼は資料を見ながら一定の結論に出していた。

「ふむ、これならば数で押し潰せそうだの」

E.U.本国を相手にするのではない。外れの外れを相手にするのだ。
それに欲しいのはシベリア全域ではなく宝――サクラダイトが眠る領域のみ。
E.U.がこの地に眠るサクラダイト鉱脈に気付けば無理をしてでも戦力を送ってくるであろうが、知らない以上何もない不毛な土地。
列強、また白人のプライドに掛けて闘い続けようにも、国内の経済、財政事情から嵩む戦費に耐えられるとは思えない。
戦費という意味では清も同じだが、此方はそれを補って余りある利益を得られると知っている。
そして何よりその場所が大きかった。清の国境から目と鼻の先だ。

「半島の阿呆共のお陰でしっかりとした準備が整わぬままの冒険となりそうだが・・・取りあえずは行けそうじゃ」

どのみちやることは決まっていた。
それが多少早まりそうなだけ。

「しかし、他の宦官の方々が軍事侵攻など賛成するでしょうか?」

清の最高権力者である大宦官は何も高亥一人ではない。彼の他に七人いる。
そして彼以外の七人は皆現状に満足している為、今更E.U.相手に戦争しようなどと考える者は居ない。

「ふん、あやつらは放って置けば国の財産を食い潰していくだけよ。その結果民の心が離れ、反乱でも起こされれば何の為に独立したのかわからぬわ」

高亥は吐き捨てるように言った。
何故なら彼はその他の宦官たちを快くは思っていないからだ。
贅を尽くす為という部分は同じなのだが、他の宦官達は身を切ったり努力したりしないで唯貪るだけ。
国民を『手入れをしながら使い続ける道具』と見ている高亥に対し、彼らは『国民は使い捨ての道具』と見ているのだ。
故に自分の贅沢に努力もしなければ、身銭も切らない。
それでは何れ国民の反感を買い反乱が起きる。

「あの馬鹿者共は私のように考えを改めぬ以上、清国には不要の輩じゃ」

十年前まで高亥も彼らと同じような考えだったのだが、バラマキと謝罪行脚で清の領域を回っている間に考えを改めていた。
民というのは何と役に立つ道具なのか。ほんの少し手入れをしてやるだけでよく働き利益を生んでくれる。
大切に使おう。この清国3億6千万の有用な道具達を大切に使い続けなければならん。そう考えるようになっていた。
それだけに中華連邦時代にやっていたのと同じ事をしている宦官達には心底うんざりしていたのだ。
態々自滅の道を歩むつもりはない。

「ま、まさか・・・」
「何を考えて居るかは知らぬがそちの思うようなことはせぬ・・・(今はまだな)」

下手に内部で抗争などしている時ではない。
今はE.U.領シベリアを、正確には南部の一部領域を手に入れる事に全力を傾ける時。

「軍内部の私への支持はどうか?」
「はい、軍は中華連邦時代から北東部の地元出身者が多く、親族含め高亥様に助けられた事で全幅の信頼を置いている者が多数派となっております。高亥様の命令を聞かぬ者は少数でしょう」
「そうかそうか、それは良い。いざ動かすときに命令を聞かぬ者が多くては適わぬからな」

こういう処にも身銭を切ってまで行ったバラマキが生きていた。

(努力無く贅を尽くす者など道具以下・・・贅とは努力の果てに在るものよ)

「では曹将軍。いつ号令を掛けるやも知れぬ故、全軍即応体制を整えておくように。大きな事が起こればそれが合図となるであろう」
「御意!」

244 :共通話4 全ては道具、だがそれ以下も有る:2013/02/05(火) 20:52:48


ユフィルート


話を終えた高亥は、『暇つぶしに呼んでください』と侍従に貰った週刊誌をペラペラと捲っていた。

「んっ?」

あるページで見た文字に、ふと目が止まる。
そこに書いてある記事の内容は、先頃婚約した日本の嶋田元総理と、ブリタニアのユーフェミア皇女の馴れ初めについて。
休日の帝都で出会い、そこから始まった物語のようなラブロマンス。

「ふむ・・・私も“普通”であったならばこういうロマンスを経験したのやも知れぬな」

生憎と彼は世間一般で言う“普通”の男性ではない為、一抹の寂しさを覚えていた。

「しかし・・・」

そんな彼が気になった文字というのはユーフェミア皇女の紹介欄。

「ユーフェミア・李・ブリタニア?」

本来カナ文字である筈のリ家の“リ”が“李”になっているのだ。

「何とも面妖な・・・」

後に曹将軍からこの意味を聞いた高亥は、『高麗との同盟関係は解消した方が良いのでは?』と検討したらしい。




モニカルート


「それにしても高麗の阿呆共め、いらぬ事ばかりしおって」
「予想外でした。まだ自国分の数が100騎程度しかない状況で外貨獲得に動こうなどと・・・」
「今更言っても仕方がないが、日本やブリタニアに対する防波堤代わりに使えるかとジェンシーを供与したのは時期尚早であったか」

威勢だけは良い同盟国に呆れて物も言えないと二人は共に肩を落とす。
最近では何をとち狂ったのか『列強高麗ッ!』『最強高麗ッ!』と彼方此方で吹聴しているらしく、それも合わせてどうした物かと考えさせられるばかりだ。

「ですが兵の練度は高いのかも知れません」
「真か?」

曹の意外な発言に高亥は驚く。
余計な事ばかりして足を引っ張る高麗の兵は練度が高いというのだから。

「ええ、何でもあのモニカ・クルシェフスキーが『高麗軍の兵士はラウンズ以上の勇者』と発言したらしく、我が軍の間でも騒ぎになっておりました」
「あのナイトオブトゥエルブがそのような発言を・・・」

日本在住のブリタニア駐在武官モニカ・クルシェフスキー。
あの世界最強の騎士の一人がそのような発言をしたというのは興味深い。

「それが事実なら冒険の一翼を担わせるのも考えねばならぬの」

尤も、その発言の真相が、危なすぎる欠陥KMFを試乗して酷い目にあったモニカの、苦笑いを浮かべながら言った皮肉だとは知る由もなかった・・・。

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最終更新:2013年02月10日 20:28