100 :ハニワ一号:2013/02/05(火) 20:38:58
1839年(天保10年)日本大陸 大江戸

「いよいよ。ついにアヘン戦争が始まるか。」

憂鬱世界からの再転生者にして名奉行として名高い鳥居耀蔵は暗鬱な声で言った。

「アジアの超大国である清帝国がアヘン戦争で敗北する事は、アヘン戦争と清帝国の敗北を予言した夢幻会の信用を高めることに繋がります。幕府も危機感を強めてこれまでのような小手先のような改革ではなく夢幻会の提言をもとに開国を想定したペリーの黒船来航にも備えた大規模な改革を進めようとするでしょう。」
「まさか予言が外れて大逆転アヘン戦争みたいな展開になって史実と違う展開になって信用を失う事だけは勘弁して欲しいよ。」
「鳥居さんは心配性ですね。そんなことでは長生きできませんよ。」

笑いながら答えたのは、夢幻会の財政と経済の頭脳にして史実で水野の三羽烏と呼ばれた鳥居と同じく憂鬱世界の再転生者である後藤三右衛門だった。
憂鬱世界で知り合いであった二人は転生した日本大陸世界でも友人として気を許せる仲だった。

19世紀初頭からの日本大陸には、転生者が現れ始めた。2回目の転生経験を持つがゆえに慣れている再転生者が主導する形で各地に転生者の組織がつくられる事になった。やがて各地の転生者の組織が提携する形で夢幻会が誕生することになった。夢幻会本部は江戸に置かれることになり、江戸の夢幻会に各地の夢幻会の代表者が常駐する形に編成された。

憂鬱世界の初期の転生者が明治の元勲達から信用を得たように大陸日本の夢幻会も、未来知識の提供や未来の事件や当てることによって幕府の要人や幕末の重要人物の信用と信頼を得つつあった。
また独自に高島秋帆を支援しての砲術の改革や尚歯会の保護など将来につながる研究や基盤を築いていた。

「それにしても恐らく日本が10倍になった世界なのに概ね史実通りってどんな世界なのだか。」
「そのおかげで、我々の史実知識も何とか通用できますし、未来の事件を当てる事によって幕末の重要人物たちの信頼を買えました、名有りの史実の人物に転生した転生者を見つけるのに役に立っていますから」
「憂鬱世界同様に幕末からなら、実際に憂鬱世界の幕末に転生した人物に注意していれば転生者を見つけやすかっただろうが、この世界では19世紀初頭から転生者が現れだしたからなあ。一応、憂鬱世界の転生の条件を参考にして史実キャラの転生者探しを進めいたがいろいろと大変だったらしいな。経験則で条件が確認されてからは効率的に捜索できるようになったが。」

今までの転生者の条件には、史実に名を残す人物で記録が残っている人についてはある条件が入っているのが確認されていた。
1・転生する史実の人物の明治維新以後の生存
2・史実で他殺や自害などで死亡した人物
3・憂鬱世界の転生者のように無能、汚名、失策、失敗、悪名などの評価されたメンバーが多い。
1には鳥居耀蔵が当てはまり、2には後藤三右衛門が当てはまっていた。後藤が言うように夢幻会はこの条件に従って当てはまりそうな人物に当たりをつけて転生者だったら夢幻会に協力を要請、そうでない人物にはこれから転生する可能性もあり要注意人物として監視していた。

史実では無名の人物や人口が増加した分の史実には存在しなかった人物の転生者については、夢幻会から転生者にしかわからないメッセージをいくつかの方法で発信していたし、2回目の転生者や聡い1回目の転生者の方から仲間を求めてメッセージを発信していた。
また転生者は感覚的に同類がわかるようになってくることもあり、転生者を探し出す手がかりとなっていたしその他のいろいろな方法を用いて広大な国土に悩まされながらも夢幻会による日本大陸の調査と兼任して転生者捜索班による地道な情報取集と上記のような方法によって転生者探しを進めていた。

101 :ハニワ一号:2013/02/05(火) 20:39:46
「我々夢幻会は、阿部正弘や島津斉彬ら将来の開明派大名と繋がりを持つことに成功しました。また史実の南紀派の巨頭である井伊直弼が転生者であることは同じく転生者である長野主膳から報告が来ています。」
もっとも、「チャカポン(茶・歌・鼓)」のほかに新しい趣味を持ったようで長野主膳を経過して送られた物を確認した鳥居は頭を抱えた。
(同人誌制作かよ。しかも18禁もの・・・。確かに部屋住みという環境は趣味に没頭するのに最適だがこれはないだろ。これが後世にまで残ったらどうするつもりなのか)

「問題は黒船来航までの十数年の時間でいかに日本大陸を開国に導けるかだな。」
「二百数十年も続いた鎖国を解くのですから、開国反対派の猛反発は覚悟するべきでしょうね。史実のように進む可能性も覚悟しなくてはいけません。」
「特に徳川斉昭の説得できるかどうか鍵だな。水戸藩というところは史実の水戸藩を調べればとんでもなく厄介ところだからな。その厄介な所が史実よりも大きくなっているから扱いには注意しないといけないな。」
夢幻会の戦略としては、夢幻会による幕政の掌握、徳川幕府から明治新政府へと名誉ある
無血の穏健な移行を目指していた。
これは史実のような戊辰戦争が起きた場合、下手したら史実よりでかい分、内戦の長期化による国力の低下や日本分裂してしまう可能性を夢幻会は危惧していたのだ。

(開国で対応を誤って幕府の威信を低下させて攘夷思想の高まりによる混乱を生み出してはならないのだ。)
夢幻会は望む未来を実現させるためにも最初のところで失敗するわけにはいかなかった。

そのためにも、アヘン戦争後の国内の危機意識を利用して史実で老中首座となる阿部正弘と提携して夢幻会の知識を使って幕政改革を進めようとしていた。改革によって高めた国力や軍備によって清帝国のようにはいかないと欧米列強に認識させて外交交渉を可能な限り有利に進めようとする目論見があった。

「徳川幕府から見れば夢幻会は徳川幕府を終わらせようとする悪の秘密結社だな。」
「史実の朝敵扱いされての政権交代ではなく名誉を保ったままの退場させるのだから感謝されてもいいくらいですよ。」
「これまでは夢幻会の影響力が少なかった事もあって概ね史実通りに進んできましたが、これからはアヘン戦争を機に夢幻会の干渉が大規模化して史実とは違った未来に改変されますよ。」
「それがよい未来に繋がりたいことを祈りたいですね。」

(それにしてもこの日本大陸世界といい、憂鬱世界からの転生者からの情報による史実にはなかった大西洋大津波やアメリカ風邪の件を知るに我々は史実ではなく日本に似た平行世界に飛ばされているだけではないのか。)
憂鬱世界からの一回目の転生者から伝えられた情報を聞いて憂鬱世界では幕末に転生して大正まで生きた鳥居耀蔵にとって「衝号作戦」を知らないためにがそう思うのも無理はなかった。他の再転生者たちや史実世界や憂鬱世界の一回目の転生者たちにそう考える人たちは多かった。

102 :ハニワ一号:2013/02/05(火) 20:40:22
「重苦しい話は置いといて、まさか生きたサーベルタイガーを生で見られるとは思いませんでしたよ。」
日本大陸で奇跡的に生き残っていたサーベルタイガーを見て唖然とする過去の自分を思い浮かべて自分もそうだったなと回想する鳥居だった。
「日本が大きくなったのだからできれば皇国の守護者の剣牙虎であればよかったのですがね。」

日本大陸のサーベルタイガーを研究するにつれ判明した問題点から剣虎兵創設は不可能と結論が出たときは、何でこういうところだけリアルなのだと剣虎兵を創設する野望を打ち砕かれて「剣虎兵の創設を目指す会」の会員である転生者の号泣する姿が見られた。

剣虎兵の創設を目指すとかそのような事は、鳥居にとってはどうでもよかった。今、頭を悩ませる問題があったのだ。

「遠山の金さんの花押が欲しいからといって俺に頼むなよ。町奉行の仕事で忙しいのに迷惑だ・・・。そもそも名奉行の花押がほしいなら俺の花押でもいいじゃないか。」
「だって転生者にとって遠山の金さんの方が人気あるのですから。」

当然のように身もふたもない後藤三右衛門のセリフに後に町奉行としての活躍と明治維新成立の功労者として遠山の金さん以上の名声と人気を得ることになる鳥居耀蔵は憮然としてため息をついたのだった。

103 :ハニワ一号:2013/02/05(火) 20:41:22
あとがき

難産でしたがようやく完成しました。公式想定まとめに名がでていた鳥居耀蔵をメインにした日本大陸世界SSです。
ハニワ一号版日本大陸世界の序章の部分にあたり明治維新に向けての夢幻会の暗躍が大規模に始まる前夜を舞台にしています。
このSSが日本大陸を考察する参考になればと願っています。
最終更新:2013年03月06日 20:59