553 :名無しさん:2013/01/18(金) 00:02:51

日本鰐


一般に爬虫類は熱帯に生息する種ほど大きく、緯度が上がるにしたがってサイズダウンしていく傾向がある。
その中で強烈なまでに異彩を放つのがこの“世界唯一の温帯性大型ワニ”である日本鰐(ヤマトワニ)――
――学名トヨタマヒメイア・ヤマタイだ。


日本に古来より生息し、神話の豊玉姫のモデルだとも言われるこの鰐は平均全長なんと7m、最大で10mに迫る
バケモノであり、間違いなく現生では世界最大を誇る爬虫類である。

過去には同属が中華大陸に存在していたらしき記録がある(記録に見られる『龍』『蛟』がそれであろう)が、
気候変動やかの地の人々による積極的な駆除・殲滅によってその姿を消したとされる。

その巨体、なかでも二等辺三角形状の長大な顎とそこにぞろりと生えそろった立派な牙はもちろん飾りではなく、
水辺においてはときに剣牙虎すら捕食の対象とする、圧倒的な王者として君臨してきた。がっしりした体躯は
河どころか、広大な海峡すら平然と渡りきるスタミナとパワーを誇り、獲物を求めてその太い足で森林深くに
分け入ることすらあるという。


その強大な力が信仰の対象ともなるとはいえ、兇暴性ゆえに人が襲われることも当然稀ではなく、平安時代には
かの白河法皇が川を遡上して出没する日本鰐の害を憂え、「天下四不如意」として「賀茂河の水、双六の賽、
山法師、河内の鰐」と並べたほどである。

剣牙虎や蝦夷象と違いめったなことでは人に馴れないその性質は、織田信長のような戦国武将には「潔し」
として愛されたが、反面一般社会においては半ば災害のような扱いを受け、周辺の村々が総出で「鰐やらい」
と呼ばれる駆除作業(主に船上からの生石灰散布)を行う光景が中世日本ではよく見られた。

ただ、訓練が困難なことから直接軍事に利用されることこそなかったものの、秀吉が築いた大坂城の外堀には、
身の丈五尋(約9m)を超える大きな一頭の日本鰐が入り込んで居ついており、「太閤はんの鰐」として庶民にも
親しまれていたことが記録に残されている。秀吉が朝鮮征伐の際に捕らえさせた虎をこの鰐の上に放り込んで
その闘い(といってもそこは水中のこと、勿論鰐の圧勝なのだが)を見物した逸話もさることながら、それ以上に
有名なのが大阪夏の陣での彼(?)の活躍の伝説である。

その伝説によれば、冬の陣後の和議の後、堀の埋め立てが始まるといつの間にか姿を消していたこの鰐が、
豊臣軍が総崩れとなって城内に退却し、徳川方が殺到しつつある頃合に何処からともなく現れ、巨獣の姿に
恐れ慌てる徳川軍を蹴散らし、踏みしだきながらついに軍中を突破していずこへともなく逃げ去った…
というのである。

一説によるとこのとき彼(?)の背には女性と思しき人影がしがみついていたともいわれ、この説はその後
「秀頼が女装して城を落ち延びるところだった」「賢い鰐が心優しい娘に惚れ込み、彼女が徳川軍に害される
のを恐れて攫って逃げた」など様々な解釈に発展することとなる。

余談だが、後者の説を聞いた夢幻会メンバーが「ちくしょう、たかがでっかいトカゲの癖にリア充とは生意気な…
爆発しろ!」「巨大ワニとおにゃのこの異種姦prpr」「キスすると呪いが解けてワニが凛々しい貴公子に変身
するんですねわかります」などと阿呆な会話を交わしたかどうかはさだかでない。

その後泰平の江戸時代には捕らえられた個体が将軍に献上されることもあったようだが、多くの地域では
人畜に害をなすとして少しづつ駆逐されていった。現代では天橋立国立公園のような一部の地域に生き残る
だけとなってしまい、この巨大な爬虫類は絶滅が危惧される状況にある。


~Fin~
最終更新:2013年03月08日 22:09