463 :二二三:2013/03/14(木) 03:37:19
続き~
休日氏の宿敵(とも)時空を越えて・68氏の総統閣下と愉快な仲間たちinEUが前提です


半島転移6


那覇市庁舎に到着したベイカーは外国要人との会談のさいに用いられる部屋に案内され、待っていた日本側の特使の顔を見て絶句していた

「し…、シゲル、ヨシダ…!」

そのうえ重要な会談相手だというのに迂闊にも呼び捨てにしていたのである
まあそれも仕方がないと言えば仕方がない。なにせ学生時代に歴史の教科書で見た人物とまったく同じ顔の男が目の前にいたのだから

「ん?貴方と会うのはこれが初めてだと思うのですが、なぜ私の名をご存知なのですかな?」

今日初めて会う筈なのにどうして自分の名を知っている?本来知らない筈だから疑問に思われるのも当然だ

「い、いえここに来る前、職員の方にお名前を伺っておりましたので…あと、知り合いに貴方と良く似た人がおりましてね…、」

「ほう、私とそっくりな方がおられるのですか?それは是非とも一度お会いしてみたいものですね」

和やかな空気を作ろうとしているのか冗談混じりに握手を求めてくる

「この度は我々の会談要請をお聞き入れ頂き誠にありがとうございます」

「いえ、我が国としてもなんの前触れもなく現れたもうひとつの高麗半島について色々と調べていたところでしたので、渡りに船ですよ」

「高麗半島?朝鮮半島ではなく高麗半島ですか?」

「ほう、そちらでは朝鮮半島と呼ばれているのですか。まあそれはさておき」

さて、と切り出した吉田にさっそく会談かと気を引き閉める
この会談には在韓米軍の将兵や家族、関係者の命運がかかっている
できれば燃料・食糧の支援などを引き出したい。最低でも原発の暴走を止める為の協力体制だけは構築しておかなければならないのだ

「ある程度の話は伺っております、大容量の発電施設が暴走状態にあるとか…これは事実でしょうか?」

「はい、残念ながら事実です。我々の同盟国は平常運転だと言い張っていますが……。とにかくそれを止める為の協力をお願いしたいのです、このまま放置して置けば水蒸気爆発を起こして深刻な事態を引き起こしかねません」

「確か原発…でしたかな?ウランやプルトニウムを原料にして発電する」

ベイカーは吉田の話に引っ掛かりを覚える。これではまるで原発を知らないかのようだ

「まさか、原発をご存知ないのですか?」

「理論上は知っていますが、あいにくと我が国には原子力発電なる施設がないものでしてね」

(原発がない?!)

話が違う。KMFとかいうアメリカでさえ開発できないロボットを保有し、東京以上の大都市を地方に作り出し、見たこともないほど巨大な太陽光発電装置を街中に設置するような高度な科学技術力を持つ日本が原子力発電を知らないなどと
それに日本は止める手段があると言っていたではないか?!原発があるからこそ止める手段も知っている筈だ。だがそれがないというならどうやって…

「ああ、勘違いなさらないでください。暴走した原子力発電施設を止める手段はあります」

不安が顔に出ていたのか吉田は安心させるように手段はあると教えてくれた

「ただそれには貴国と我が国だけではなく、我が国の同盟国も交えて話をしなければなりません。なにせその手段に用いる物は我が国と同盟国ブリタニアが共同開発した物でしてね」

この会談は在韓米軍=アメリカと日本、二国間の会談であった筈だ。だが助けを乞う立場である以上日本に意見などできない

(しかしブリタニアといえば四大列強の一国ではないか!?)

そのブリタニアと共同開発したなにかで、使用の通告をして意見を一致させなければならないというなら余程強力な何かだろうとあたりをつけた


「まあ会談まではまだ時間がありますのでもう少し待ちましょう」

464 :二二三:2013/03/14(木) 03:40:45
そうして暫く待っていると那覇市庁の職員が入ってきた

「失礼します、ただいまモニカ・クルシェフスキー卿とアーニャ・アールストレイム卿がご到着なされました」

「ではお通ししてください」

「畏まりました」

部屋から出ていく職員と入れ替わるように入ってきたのは二人の白人女性
一人は黄緑色のマントを羽織った二十代前半に見える長い金髪の女性で、もう一人はピンク色のマントを羽織った桃色髪の十代と思わしき少女
二人ともこのような政治的な場には似つかわしくない見目麗しい女性だった

「ご紹介します、神聖ブリタニア帝国全権特使、モニカ・クルシェフスキー卿です」

(こ、こんな若い女性が全権特使だと?!)

「お初にお目にかかります。この度は急を要する事態ということで皇帝陛下より全権をお預かりし、会談に出席させて頂くことになりました、神聖ブリタニア帝国ナイトオブトゥエルブモニカ・クルシェフスキーです」

「同じくナイトオブシックスアーニャ・アールストレイム、私はモニカの補佐だから気にしないで」

「お二人はともにナイトオブラウンズというブリタニアでも特別な地位にお着きの方々で、我が国や貴国アメリカの軍に当て嵌めますと中将・大将に相当します」

(この若さで中将・大将!?)

二十代の女性や十代の少女が中将・大将に相当する地位だという現実に、ベイカーは常識を覆されたような気分にさせられた
少なくともアメリカ軍ではあり得ない話であった

「それではお二方もお越しになられましたので本題に入りたいと思います」

切り出したのは吉田。彼の口調からはつい今しがたまであった柔らかな雰囲気が消えていた

「この度の第二高麗原子力発電施設暴走を止めるために、我が大日本帝国と致しましてはフレイヤ弾頭の使用を決定致しました」

そのフレイヤ弾なる物が原発を止める手段なのだろう

「フレイヤ弾とはどのような物かお聞きしても?」

「申し訳ありませんがフレイヤ弾は日本とブリタニアの最高軍事機密に当たる為詳細は説明できませんが、第二高麗原子力発電施設の暴走を確実に止められる物とだけ述べておきます」

フレイヤ弾なる物が何らかの超兵器であると理解はできた。最高機密ならばこれ以上の質問は意味をなさないだろう

「ブリタニアとしては此度のフレイヤ弾使用に付いては全面的に賛成します。第二高麗の原子力発電施設が毒性物質を撒き散らすと判明した以上止める手段が限られているならフレイヤ弾使用を躊躇うべきではありません
もし日本が動かないのならブリタニアが日本の賛成を取り付けてフレイヤ弾を使用しているところです」

「他はどうなってもいい。だけど日本とブリタニアが危険なら原子力発電施設は消し飛ばすべき」

クルシェフスキーに続いてアールストレイムが物騒な発言をした
消し飛ばす、消し飛ばせるということはそれができる威力を持っているとなる

「ち、ちょっと待ってください!日本・ブリタニアは事前通告もなく他国に対して超兵器を大量破壊兵器を使用すると言われるのですか!そのような国際法を無視した無法が許されていい筈」

ない!と叫ぶ筈だったベイカーは吉田に遮られた

「では貴国はこのまま暴走する原子力発電施設を放置して大気中に毒性物質が撒き散らされるのを黙って見ていると?その方が余程国際法違反ですよ
力こそが正義とは申しませんが、我々は大切な者を守る為なら力の行使を躊躇いません。話し合いで解決できるならそうしますが、今回はその限りではありません」

「私も同意見です。国と家族を守る為に必要とあらばフレイヤ弾使用もやむを得ません」

「それでも一言通告するべきだ!」

吉田とクルシェフスキーの非情な意見にベイカーは敢えて異を唱える。何の事前通告もなく超兵器を使用するなど間違っている
あくまで事前通告すべきだとする意見を曲げない。彼としてはどうしようもない相手であっても同盟国である以上黙っていられなかった

465 :二二三:2013/03/14(木) 03:46:53
「必要ない、それに第二高麗は信用できない」

だがアールストレイムは手にした携帯を手渡しながら事前通告すべきだとする彼の意見を切って捨てた


"先日「独島は歴史的にも韓国固有の領土」とする主張を繰り返していた武装勢力は退去するよう迫っていた帝国海軍の砲撃に逃走を図った模様です、揚陸艦保有していたところから犯行グループは高麗正規軍ではないかと見られており…"


アールストレイムの携帯の動画には独島と名付けられた同盟国の軍艦が映っていた
いくらベイカーでもこれを見せられてなお擁護できるほどお人好しではない
厄介で信用できない同盟国は見事なまでにやらかしていたのである

(なんてことをしてくれたんだッッ!!)

如何に何が起こったのかわからない状況下に置かれていたとはいえ、まさか揚陸艦を竹島に接岸させて陸戦隊を上陸させるとは想定外だ

「竹島は日本の領土。日本とブリタニアは家族。勝手に家に入ってきて「ここは俺の家だ」とかいう泥棒はブリタニアの敵……相手にするのがバカらしいから手を出さないだけ。でもあんまりしつこいと私が潰しにいく」

「アーニャ!」

無表情なまま淡々と吐き捨てるアールストレイムをクルシェフスキーが叱責しているが、ベイカーの耳には入ってなかった
あまりにお粗末すぎる韓国の行動に脳が聴覚を遮断していたのだ

「そういうことです、いまはまだ第二高麗半島が出現したことは国民に知らされてませんが、じきに知れ渡ります」

「申し訳ありません、これは間違いなく我が国の……同盟国の艦です…」

ベイカーは同盟国がやらかした失態を恥じ、陳謝する
彼が謝罪する必要はないのだが、これ以上日本・ブリタニア両国のアメリカへの心象を悪くさせては命に関わる

「なにも貴方が謝罪する必要はないでしょう?」

見かねた吉田がベイカーを止めた

「我々は貴国アメリカと第二高麗を同列に見てはいません。もし見ていたら会談を受け入れたりしませんよ」

「お心遣い、感謝します……」

なんとか一番大事なところをクリアしたベイカーだったが、信用できない同盟国のせいかもうこの時点で心身ともに疲労しきっていた

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最終更新:2013年03月16日 19:18