475 :二二三:2013/03/14(木) 17:15:52
続き~
休日氏の宿敵(とも)時空を越えて・68氏の総統閣下と愉快な仲間たちinEUが前提です
半島転移7
日本、そして思わぬかたちでブリタニアとも協議したベイカーは、古里原発停止の協力と食糧援助を引き出すことに成功した
ただ在韓米軍としては致命的な局面に立たされていることも知ってしまったのである
「石油がない」
正確にいえば石油は存在している
しかし主要エネルギーではなく繊維製品に使われているくらいで、艦艇や航空機の燃料にはならないという話だった
「火薬も…」
おまけに火薬もない、銃は火薬で弾丸を射出するのではなく、モーターで弾丸を撃ち出す電気式
その他重火器を初めあらゆる艦船・航空機・車両の全てが電気で動いていた
日本の吉田特使もブリタニアのクルシェフスキー特使も揃って燃料弾薬の補給はできないと言った理由がこれだったのである
援助しようとしたところで物がないのだ
会談終了後に那覇市庁舎資料室で見た皇暦202X年度と書かれた世界地図。そこに描かれていた国の殆どが知らない国名だった
南はインド西は中央アジア東は高麗半島手前までの広大な領土を持つ中華連邦
全ヨーロッパとロシア、アフリカの大半を支配するEUユーロピア共和国連合
西は海南島から北はカムチァツカ・チュコト、南は南洋までを領土とする大日本帝国
そして北米大陸……北ブリタニア大陸全土を版図に持つ絶対君主制国家、神聖ブリタニア帝国
これら四大列強国を初め自分の知る地図とまるきり違う名前が至るところに記されていた
それに歴史からして違いだらけだった
本来ならアメリカ独立戦争に勝利し、合衆国建国の父となる筈だった初代大統領ジョージ・ワシントンがヨークタウンで敗れ戦死しているのだ
つまりアメリカという国家は最初から存在していなかったのである
これに日本側から提出された現在の高麗半島を写した衛生写真を見て確信した
「ここは、異世界だ」
「異世界……」
ふいに呟いた独り言を引き継いだのは副官のピーター・バレット大佐
「閣下、我々はどうなるのでしょうか?」
いつも頼りになる副官の声は低く、彼の不安な胸のうちを現している
「わからん、日本・ブリタニアの両国から食糧支援は引き出せたが、燃料弾薬が手に入らない以上我が軍の装備は早晩鉄屑になる
といって元からして違う兵器体系だ、補給は望めんよ」
こんな状況で攻め込まれたら一月も持たずに制圧されてしまう
「清でしたか?東モンゴルからアムールまでを支配する覇権主義的傾向の侵略国家は?」
「ああ、ノースコリアのすぐ北側に面する物騒な国らしいな」
彼らが危惧しているのは半島の北側に存在する侵略国家大清連邦が南下政策をとらないかだ
如何に弱っているとはいえ、本来ならアメリカやソビエト並の国力を持つだろう列強の一角であるユーロピア共和国連合に正面から戦争を挑める準列強国
在韓米軍と韓国軍では補給が万全であったとしても到底勝ち目はない
だが如何に列強に次ぐ大国とはいっても相手がEUである以上二正面作戦を展開するとは思えない
それに朝鮮半島を併合したところで実入りはないのだから
476 :二二三:2013/03/14(木) 17:16:23
ではいま一番危険なのはどこか?それは釜山北部から浦項付近にかけて陸続きとなった隣国、高麗共和国だ
こちらとは散発的ながら韓国のF15Kが戦闘になり双方に被害が出ている。これもまた韓国側の軽率な行動が原因だった
「しかし韓国空軍が戦闘した相手が日本でないのは不幸中の幸いでしたね」
「まったくだ、もし相手が日本なら今頃韓国は地獄を見ていたことだろう……我々も含めてな」
資料室で見たのは世界地図や歴史資料だけではない
現代の各国対比図やGDP比率などの資料も読み漁っていたのである。そこで判明した事実にベイカーは気を失うところだった
なんと四大列強の国力はEUと中華連邦がアメリカに匹敵するレベルで、日本とブリタニアに至ってはアメリカの倍以上の国力を持っていたのだ
四大列強とはいっても上位二国だけは別枠のようで「技術の日本」「力のブリタニア」と呼ばれる超大国らしく、やる気があれば一国で下位二国を同時に敵に回して戦える桁外れの国力を持っている
事情を知らないとはいえ自分達の同盟国は祖国アメリカの倍もあるような怪物に喧嘩を売りかけていた訳だ
「危ないところだった…」
「閣下、やはり韓国とは距離を置くべきです、いつまた何をやらかすか知れたものではありません
もとの世界に帰れる保証がない以上韓国と轡を並べ続けるのはリスクが高過ぎます」
「私もそれは感じていた、だがな、米韓同盟がある以上それも難しい……」
「閣下……」
どんなに信用できない相手でも信義を重んじる。それがデビット・ベイカーという男だった
477 :二二三:2013/03/14(木) 17:18:18
「しかし考えれば考えるほどおかしな世界だ。皇帝が国を治め貴族が政治行政軍事、果ては領民の生活の根幹を成している。そんな中世の貴族制その物な国が世界最大の超大国でアメリカに存在している
その超大国の同盟国もまた超大国で帝国の名前を持つ立憲君主制国家」
民主主義の敵としかいえない王侯貴族が治める国と立憲君主制国家が世界で一番豊かである現実
「中華連邦もそうですよ、天子を頂き天子の元に平等。清も集団指導体制の独裁国家」
それでいてみな上手く纏まっている。それに引き換え民主共和制のEUは汚職にまみれて建て直しに苦労しているとは
「民主主義を信じる我々からは冗談にしか思えんよ。今日私が会談したブリタニアのクルシェフスキー特使も貴族だそうだ。貴族の心とはどういう物かと聞いてみたが〔貴族とは命をかけて皇帝陛下と領民を守るものです〕なんて仰られていたよ」
「為政者と騎士の鏡みたいな方ですね。そんな王侯貴族ばかりなら善政を敷いて国を富ませ豊かになるのも何ら不思議ではないか」
「そういうことだ。民主主義だろうと絶対王制だろうと結局は上に立つ者次第でいいようにも悪いようにもなる」
ベイカーは「EUは民主主義の暗黒面に染まっていたのだろう」と言葉少なに話ながらホテルの窓から見える大都会那覇の夜景に見いられていた
最終更新:2013年03月16日 19:25