103 :Monolith兵:2013/03/26(火) 06:22:57
※この作品にはTS成分が含まれています。ご注意ください。
※この作品は曾孫系ラブコメディです。
ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない」 その3
桐乃の提案は嶋田の精神をがりがりと削った。権力を手に入れるために、権力者の娘を落とす。古来から用いられている方法だ。しかし、前世とはいえ自らの曾孫を攻略することになるものはこれまでは一人もいなかったであろう。
「いやぁ、貴重な体験ができそうですね。」
叫びすぎて息が荒い京介を、ニヤニヤ笑いながら見る桐乃が彼はこれまでになく憎らしく思った。
「どこに曾孫を恋愛対象に入れるやつがいるんだ!さっきの話は無効だ!無効!!」
声を荒げて桐乃に詰め寄る。だが、そこで気づいたことがあった。先ほどまで深刻な表情だった桐乃は、いまや満面の笑みを浮かべている。それの意味するところは…。
「辻さん、さっきのMMJの話は嘘じゃありませんか?いや、もしかしてもうMMJを支配下に置いたとか。」
京介はあえて現在の名前でなく、前世の名前で彼女を呼んだ。彼の言葉を聴いた桐乃はハァとひとつ息をついてから話し始めた。
「実は、転生したのは私達だけではないのですよ。現在確認しただけでも、殿下や近衛さん、永田さんや東条さんなど前世での会合や
夢幻会での主要な人たちは皆こちらに来ています。そして、中には私達よりも早く転生した人たちもいます。すでに政府の要職についている人もいますよ。ですから、嶋田さんの言うとおりMMJによる危機という話は既に過去の話なのです。」
桐乃の話は京介にとって衝撃であった。彼は彼女よりも長く生きている。しかし、これまで自分以外の転生者の痕跡は見つからなかった。
「一体どこでそれを知ったのですか?」
「コミケに行ったら夢幻会の名前で活動しているサークルがあったので、話しかけたらどんぴしゃでしたよ。」
余りにも余りな話に京介のあごが外れそうになった。それもそうだろう。転生者たちによる秘密結社(?)がコミケで堂々と活動していたのだから。
「はぁ、もういいです。それで、先ほどの話は無効でいいですね?」
いろいろと頭の痛くなる話を聞いて、彼は胃と頭が痛くなった。
「残念ですが、そうなりますね。でも、あやせと会いたくはないですか?不自然にならない程度なら場を提供しますよ。」
彼女が出した提案は彼にとっては非常に魅力的だった。何といっても、前世では会うことすらできなかった自分の曾孫である。それに、その両親である孫娘とその夫についても興味があった。
「お願いできますか?」
彼の言葉を待ってましたとばかりに、桐乃は笑いながら「ええ。」と返した。その笑顔を見て京介は早まったかな、と少し後悔した。
その1週間後、桐乃は自分の友達を家に招いていた。その中には嶋田繁太郎の曾孫である新垣あやせもいた。
「あれが前世の私の曾孫か。」
廊下ですっとすれ違ったときに笑顔で挨拶を交わした後、京介は自分の部屋に戻っていた。彼の曾孫は読者モデルをしているだけあってとても可愛く、もし彼に前世の記憶がなければ一目ぼれしてしまいそうなほどであった。だが、前世の曾孫ということを知っている彼の反応はそれとは異なっていた。
「ああ、曾孫可愛いよ曾孫。」
顔がだらしなく垂れ下がり、「私が曾お爺ちゃんだよー。」などと危険な事を呟いていた。どこに14歳の曾孫を持つ17歳がいるだろうか?
「あんな子が辻(桐乃)と親友とか世も末だな。」
正気に戻った彼は現実の非道さを嘆いた。確かに普段の桐乃は周りに愛想を振りまく可愛い少女である。兄の欲目もあったが、それは事実である。また、読者モデルとしても活躍しており、成績優秀、陸上部で活躍するなど絵に描いたような才色兼備だった。しかし、その中身は腹黒で金に煩く策謀を好み世界を阿鼻協賛の地獄へと叩き落した”大蔵省の魔王”辻正信なのだ。それを知ったその日から、彼は妹を妹として扱うことができなくなっていた。何せ中身は爺なのだから。最も外面だけは取り繕っていたが。
「何とかあいつの悪影響が出ないようにしなければ。」
京介は曾爺馬鹿が出始めていた。
104 :Monolith兵:2013/03/26(火) 06:23:27
それからしばらくして、桐乃の友達は帰ることになった。彼女らを見送って部屋に帰る桐乃を京介は呼び止めた。
「お前、周りに悪影響を与えたりしてないだろうな?特にあやせに!」
曾爺馬鹿ここに極めりである。
「心外ですね。普段は少し優秀な女子中学生を演じてますよ。エロゲーやアニメとかのオタク趣味も隠していますし、何も心配することはありませんよ。」
その言葉に京介は安心したが、桐乃は言葉を続けた。
「ただ、最近あなたのことを話すことが多くなったので勘違いされているようです。そう、兄に破廉恥な行為を強要されているなどと。」
「なん…だと?」
彼女の言葉に京介の精神は削られた。
「大丈夫ですよ。その度に私の兄は優しくて立派な人だといってますから。周りにはブラコンな妹と認識されていますね。」
余りな言葉に京介は思わず胃を抑えてうめき声を上げてしまった。しかし、桐乃は更に追い討ちをかけた。
「ああ、そうそう。あやせは曽祖父、嶋田繁太郎が心底嫌いなようですよ。何をしてもあの大宰相の曾孫だから当然だ、何か失敗すればあの大宰相の曾孫とは思えない、などと周りに言われてきたらしいですからね。」
その話に京介は体を完全に倒れこんだ。前世とはいえ、曾孫に嫌われるのはダメージが大きかったようだ。
「俺が、俺が彼女を救って見せる!」
突然起き上がった京介はそんな声を上げながら少しドアを強めに閉じながら部屋に戻った。
「クククッ。さあ、楽しくなってきましたね。これでこそ妹系ラブコメです。さて、明日は少し落ち込んで見せましょうか。兄に酷いことをされた妹と、勘違いしてくれるでしょうから。」
そう呟きながら彼女も部屋へと戻っていった。京介のあやせへの愛は桐乃(辻)という余りにも巨大な障害を乗り越えることができるのか?それはまだ誰もわからない。
おわり
最終更新:2013年04月07日 11:35