342 :Monolith兵:2013/04/12(金) 04:33:15
※この作品にはTS成分が含まれています。ご注意ください。
※この作品は曾孫系ラブコメディです。

ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない」 その6

 話はコミケでの出来事よりさかのぼる。その日京介はいつも通り真奈美と別れてひとり自宅へと帰路についていた。京介は特に部活をしていなく、また趣味というものも前世の関係から航空機関係の雑誌を読んだり、軍事関係の書籍を読んだりという程度であった。傍から見たら軽いミリオタである。
 しかし、それほどのめりこんでいるわけでもなく、前世で仕事付けであった彼にしてみれば今の学校に通うだけの生活は非常に開放的で心から楽しんでいた。

 そんな彼だったが、ふと道路の先に一人の女の子が立っているのを見つけた。それだけだと特に珍しくもないことだが、彼にはその女の子に見覚えがあった。たしか、

「あ!」

 こちらを見たかと思うと大きな声をあげてこちらに向かって走ってきた。京介は立ち止まり、彼女がこちらに来るのを待つ。

「はあはあはあ。ええと、高坂京介さんですね?」

 彼女は以前オフ会で知り合った黒猫という少女の家庭環境を不憫に思い、彼女の両親に直談判に行った時会った女の子である。

「黒猫の妹さんだったかな。」

「はい、瑠璃姉の妹で五更日向といいいます。」

 丁寧にお辞儀をされたので、京介もお辞儀で返した。

「それで何の用かな?日向ちゃんの家はこちらじゃなかったはずだけど。」

「今日は、高坂さんに聞きたいことがあって来ました。でも、道に迷ってしまって。」

 聞きたいことという事にてんで見当もつかない京介は「何が聞きたいんだ?」と返した。

「……聞きにくいんですけど、…繁太郎さんですよね?」

 その問いかけを聞いた京介は一瞬何を言われたか理解できなかった。しかし、そこは前世では大宰相と言われた男である。すぐさま気を取り直して、「俺の名前は京介だよ。」と返した。最も、目の前の少女には意味のないことだと理解していたが。

「京介さんの家に伺ってもいいですか?詳しく話したいんです。」

 京介に異存はなかった。


 それから二人は高坂家にたどり着いていた。京介は扉を開け、「どうぞ、」と声をかけ、少女を迎え入れた。日向は「おじゃまします。」と言い家へと入り、京介も後に続いた。
 親に見つかりませんように、と願った京介だったが、無常にも母親がリビングから出てきたところであった。見慣れない女の子に誰かと問いかけたが、京介が「友達の妹なんだ。」と勢いに任せてでまかせを言い、日向を抱えて二階の自室へと駆け上っていった。後ろで母親の佳乃が何か言っているようだったが、無視して自室へと入っていった。そして、扉を閉めてひとつ大きなため息をついた。
 そして、抱えていた日向をおろし、椅子へと座らせ京介はベッドに腰掛けた。

「で、俺の事を繁太郎さんと呼ぶってことは、…お前はヨシか?」

 前世で嶋田繁太郎を繁太郎さんと呼んだ人物は、彼の記憶する限り妻である嶋田ヨシしかいなかった。

「はい。再びお会いすることができてうれしいです。」

 そういっては願した彼女の顔には、確かに前世の妻の面影が見える気がした。それを理解した京介は思わず彼女を抱きしめてしまっていた。日向は一瞬驚いたものの、その小さな腕でいとしい前世の夫を抱きしめ返した。暫く無言で抱きしめあっていた二人は同時に腕を放し、顔を合わせて笑いあった。

「お前に会うことができて本当にうれしいよ。…しかし、まあ、可愛くなったものだ。」

「あら、前世の私は可愛くなかったとでも?」

 そう言って互いに笑い声を上げた。もう二度と手に入れることができないと思った幸せが二人の元にあった。

「そんな事はない。前世は前世で可愛かったよ。今は今でまた可愛い。」

「そんな言い繕わなくても子供として可愛いと言ってもいいのですよ?」

 そう言って再び笑いあった。二人はただこの時間が愛しかった。もう二度と会うことは叶わないと思っていたが、運命のいたずらか再び見える事ができたのだ。

「……私は、繁太郎さんをお慕い申しています。今世でも一緒になりたいと。」

「私も同じだよ、ヨシ。今はまだ互いに子供だけれど、将来はまた一緒になろう。…愛してるよ。」

 そして、再び抱き合う二人であった。


 それは、母の佳乃に連絡をもらった父大介が米神を引くつかせながら帰宅する10分前のことであった。


おわり

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最終更新:2013年05月12日 21:50