431 :taka:2013/04/15(月) 12:51:35


一夏とラウラは二人並んで廊下を歩いていた。
普段は何かとラウラが張り合い、一夏がゲンナリとする展開が一般的となり。
それが学園の日常になっているのだが……此処暫くは二人で行動するのが頻繁になっていた。
一部の一夏に行為を寄せる少女たちにとってそれは不愉快だったが、それでも二人はよく行動を共にした。
だが、それは断じて親しみでも友情でもない。どちらかに、被害を押し付ける為の行動だった。
少しだけ、体をよじって後ろをみやる。少し距離をおいて、イタリア人の少女が堂々たる態度でついてきていた。

ラウラとの決闘と謎の機体の襲撃の暫く後で、また新しい転校生が学園へと編入した。
モンドグロッソに出場したテンペスタの量産型第三世代のテンペスタⅡと、それを引っさげ来日したイタリア人の代表候補生。
専用機と言って良いほどチューンアップされたテンペスタⅡは、模擬戦においても他の候補生と互角以上の戦いを繰り広げてみせた。
学生やマスコミは他のIS先進国との関連や鬩ぎ合い、新たなる一夏への刺客かとうわさしあった。

しかし、彼女の出現は一夏とラウラにとって災難としか言い様が無かった。

何せ、付きまとってくるのだ。
一夏が居れば一夏に。ラウラが居ればラウラに。
学食で食事をすれば、何時の間にか後ろでナポリタンをズルズルとたぐっている。
アリーナで訓練をしていれば、いつの間にか近くをうろうろしている。
読書をしていれば……横から覗き込んでいる。
他の学生にはおおらかなラテン系のノリで接し、友人を作っているのに何故か二人には奇行をしてくる。


……いや、二人ともわかっているのだ。
なぜ、彼女が自分たちに付きまとうのかも。
彼女が付きまとってくるとき、互いに被害を押し付けあうため共に行動をしているのかも。

それは、イタリア人の候補生少女が、二人がよく知る存在が転生したものだからだ。

「……何時まで付きまとうつもりだ。どうせなら君から名乗ればいいものを」
「その通りだ。かつてそのあり方を尊敬していた身としては嘆かわしいと言わざるを得まい。そうだろう? 首領」

いい加減痺れを切らし、そう啖呵を切った二人は猛烈に後悔した。
パァァァァと顔を赤らめた彼女は、前世でよくした腰に両手を当てるポーズでふんぞり返った。

「おお、やっと気付いてくれたか極東の大宰相とベルリンの総統よ! 私だ、私私私私私私私私私私私私私私私私だ!!!」

電話口詐欺でもやりそうな勢いで私を繰り返す少女の正体。
それは日独冷戦時に両国の窓口、そして仲介役となった国の首領。
ベニート・ムッソリーニ、その人だった。

「解った、解ったから何で付きまとうんだ。君は少し前世を引きずり過ぎ」
「後は頼んだぞヘル・シマダ。前世では主に私がカレの面倒を見てたのだから今は君が彼の面倒をみたまえ」
「あっ、ずるいぞ逃げるな!!」

脱兎のごとく逃げ出したラウラを追う一夏と、ドヤァな赤ら顔のまま二人を追いかけるイタリア代表候補生。
こっそり様子を伺っていた少女たちが意味も解らず後に続いたので全員で廊下を走る羽目になった。

「ああ、なんだかEDみたいな感じになったなぁ……」

巨乳先生に見つかって全員で怒られるまで後一分。

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最終更新:2013年05月12日 22:13