アットウィキロゴ
730 :Monolith兵:2013/05/01(水) 00:53:10
※この作品にはTS成分が含まれています。ご注意ください。
※この作品は曾孫系ラブコメディです。

ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない」 その8

 とある晴れた休日の昼下がり、新垣あやせは親友である桐乃の家を訪ねていた。前日の放課後に桐乃の家に行くことを約束してのだが、彼女には桐乃の兄京介に会うというもうひとつの目的もあった。
 彼女にとって高坂京介と言う少年は特別な存在であった。親友の兄であり、自分と母との確執を解決してくれ、信じがたいことであるが曽祖父嶋田繁太郎の生まれ変わりだと言うのだ。彼女が京介に思いを寄せるようになるのは自然なことであった。
 あやせが京介のことを思って歩いていると、危うく高坂家を通り過ぎていた。あわてて引き返し、インターホンを押すと、桐乃が玄関にでてきて応対してくれた。

「いらっしゃい!さあ、あがってあがって。」

「それじゃあ、お邪魔します。」

 そういて、早速桐乃の部屋へと行くべく階段を上がっていった。京介の部屋の前を通り、桐乃が部屋のドアを開いたところで、あやせは歩みを止めた。そこはちょうど京介の部屋の前であった。

「・・・でね、・・・という・。」

「はは・・・・そう・・そんなことも・・・・。」

 京介の声に混じって、女の子の声がするのである。あやせは嫌な予感がし動くことができずにいた。
 そんなあやせの様子に気づいた桐乃は、彼女に気づかれないほど小さくほくそ笑み、声を掛けた。

「あやせ、どうしたの?」

「…、お兄さんの部屋から女の子の声が・・・。」

 先日の告白からあやせは京介のことを「お兄さん」と呼ぶようになっていた。一時は「京介さん」と呼んでいたが、あまりに恥ずかしいのでこの呼び方に落ち着いたのであった。
 それはともかく、あやせの想い人である京介の部屋から女の子の声がするのは彼女にとって辛い現実であろう。だが、彼女にはこの現実を踏み越えてもらわねば困るのである。

「兄貴ぃー、入るよ。」

 そういってノックもせず桐乃は京介の部屋へと入った。そこで彼女の目に入ってきたのは、ベッドに座る小学生ほどの女の子と椅子に座る京介の姿であった。二人とも突然入ってきた桐乃に驚いて彼女を見ていた。

「ノックをしろとアレほ…。」

 京介が抗議の声を上げたが途中で止まった。桐乃の後ろで泣きそうな顔でこちらを見るあやせを見たからである。

「ど、どうしたんだ、あやせ?」

 京介が声を掛けたが、彼女は口に手を当てたままの姿勢で微動だにしなかった。京介はどうすればいいのかオロオロし、桐乃はあえて何もしなかった。そしてあやせも何もできずにいた。そんな気まずい雰囲気を断ち切ったのは、小学生の女の子五更日向であった。

「貴方が新垣あやせさんね。そんな所にいずにはいって入って。私貴女とお話したかったの。」

 笑顔でそういう日向には邪気のひとつもなく、あやせは一気に毒気が抜かれてしまった。普通に考えれば、高校生の京介と小学生の日向とがあやせの思うような関係になることはまずないのだが、恋する乙女にそんなことは関係なかった。だが、最も恐ろしいのはこの二人は前世では夫婦であり、現世でも将来一緒になりたいと思っていることであった。
 それはともかく、京介の部屋は人口密度が一気に倍になって手狭になった。だが、誰もそれを不満に思うものはいなかった。

「それじゃあ、まずは自己紹介からだね。私は五更日向。見てのとおり小学生です。そして、…繁太郎さんの前世の妻でした。端的に言うと、私の前世はあやせさんの曾祖母だということね。」

 その言葉はあやせにはすさまじい破壊力があった。何と自分の曽祖父のみならず曾祖母までもが転生していたというのである。だが、それ以上に目の前の女子小学生がとてつもない恋の障害であるということにもすぐさま気づいた。何といっても、前世では夫婦であったのだ。
 日向の言うことが本当かどうか京介のほうへ視線で問うたが、非情にも答えは是であった。

「繁太郎さんがあなたの話ばっかりしてね、一度会ってみたかったのよ。本当に繁太郎さんの言うとおりに可愛らしい子ね。生まれ変わった甲斐があったというものだわ。」

 そこまで褒められてはもうどうにもできなかった。そして、自分がライバルにすらならないことを理解して小さくため息をついた。さすがはあの大宰相を支えた妻だ。自分とは女云々という前に人としての格が違ったのだ。彼女は素直に自分の敗北を認めた。その上で彼女を目標としていこうと心を新たにして笑顔を浮かべた。

731 :Monolith兵:2013/05/01(水) 00:53:59
「はじめまして、というのもおかしな話ですよね曾お婆様。私は新垣あやせといいます。貴女と京介さんの曾孫です。これからよろしくお願いしますね。」

 敗北を認めたからといって卑屈になる必要はない。あえて”京介さん”というところを強調して挨拶したが、果たして日向はその意図を汲み取ったのか笑みを深くしていた。負けじとこちらも軽く笑い声を上げる。

「フフフッ。」

「フフフフ…。」

 異様な空気が二人の間に渦巻いていた。京介はそれを感じ取って思わず腰が引けてしまい、桐乃は楽しそうに口角がつり上がっていた。
 そんな異様な雰囲気をかもし出していた二人であったが、次第に元へと戻っていた。そして、あやせは何かに気づいたのか他の三人の顔をかわるがわる見た後、桐乃のほうを向いて疑問をぶつけた。

「桐乃は二人のことを知っていたの?」

 それは最もな疑問であった。前回京介が曽祖父の生まれ変わりだと告げた時にもいたし、今も特に驚いた様子もなくここにいた。
 それを聞いて京介は顔が引きつった。数ヶ月前の夜にこの部屋で桐乃から正体を聞いたことは未だに彼にとってトラウマであった。日向は桐乃が未だにあやせに自分の正体を話していないことを不思議に思っていた。もっとも、そんなことを信じることなんて普通はできないだろう、とすぐに思い直した。
 そして桐乃は浮かべていた笑みを消し、両手であやせの方を掴み真剣な表情で語りかけた。

「あやせ、落ち着いて聞いてね。私ずっとあやせに隠し事してたんだ、ごめん。あのね、私ね、今まで黙っていたけど……私ね…辻正信だったんですよぉ。」

 あやせは一瞬桐乃が何を言ったのか理解できなかった。しかし、曽祖父嶋田繁太郎の盟友の名を思い出し、絶叫を上げた、

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 新垣あやせ。彼女は確かに嶋田繁太郎の血を引き継いでいるのであった。



おわり

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2022年03月30日 18:30