947 :Monolith兵:2013/05/08(水) 02:16:34
※この作品にはTS成分が含まれています。ご注意ください。
※この作品は曾孫系ラブコメディです。

ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない」 その9

 高坂京介は疲れていた。疲労が溜まり過ぎて傍目から見れば幽鬼の如き姿であり、そのあまりな様子に彼の幼馴染である田村真奈美は彼のことが心配であった。

「京ちゃん、本当に大丈夫?」

 顔色が悪く、少し隈も見える京介を真奈美は心の底から心配していた。彼女が本気で自分のことを思ってくれていることを理解している京介は、やせ我慢をしようとしたがすぐに思い直した。

「心配するな!と言いたいけど、無理そう・・・。」

「…本当に駄目みたいだね。そこで休もうよ?」

 その様子に真奈美はこれはやばいと思い、近くにある公園のベンチで休もうと誘った。
 現在京介と真奈美の二人は千葉公園でデートをしていた。最も、京介にはそんなつもりはなかった。京介にとって真奈美は幼馴染ではあるが、娘や孫のような存在であった。前世では曾孫にも恵まれ、前々世も含めれば100年以上もの人生経験があるのだ。今生では同い年の幼馴染とはいえ、京介にとって真奈美は恋愛対象となる存在ではなかったのである。

 それはともかく、真奈美の誘いに乗り近くのベンチで休む二人だった。京介は精神年齢100歳オーバーだし、彼と長い付き合いがあり、且つ半分京介に育てられたような真奈美は京介ほどではなくとも老成して見えた。実際、友人たちから二人は”老夫婦”などと呼ばれからかわれていたりもしていた。

「本当に最近どうしたの?なんか、どんどん顔色悪くなってるよ?」

 そして、自分のひざを叩いて「少し横になる?」と誘った。京介は真奈美の顔を少し見つめた後、「じゃあ、お言葉に甘えて。」と言い、真奈美の膝を枕にして横になった。ちなみに、この二人膝枕した回数は京介のほうが圧倒的に多かったりする。京介は真奈美のことを娘や孫のように思っていたし、真奈美は京介のことを同い年だが兄のように慕っていたからであった。そんな真奈美にとって、京介に甘えられるのはとてもうれしいことであった。

 それはともかく、真奈美の心配は最もだった。少なくとも学年が上がった頃は今までと変わりなかった。今まで見てきたとおりに、京介は皆から頼りにされる兄貴分であり、勉強もスポーツも人並み以上にこなす自慢の幼馴染であったはずだ。
 ちなみに、京介は部活には参加していなかったが前世の仕事柄か水泳が得意であり、市民大会で優勝したりと活躍していたりする。また、勉強のほうも海軍で出生街道を歩いていただけでなく海軍大臣、総理大臣を歴任しただけあって全国模試でも上位に食い込むまさにチートな男子高校生であった。

948 :Monolith兵:2013/05/08(水) 02:17:06
「いや、・・・それは、・・・言えない。ただ、妹が関係するとだけ言っておくよ。」

「桐乃ちゃんが?」

 横になったまま軽く頷く京介を見て真奈美は少し考え込んだ。真奈美は京介と幼馴染だが、桐乃とも幼馴染であるのだ。しかし、ここ数年は全く会っておらず、現在の桐乃がどうなっているのか知らないのだ。最も、現在も付き合いがあったとしても中身が魔王になってるなど想像できないであろうが。

「これまで桐乃とは仲が悪かったけどな、最近仲直りしたんだ。でも、ここ何年かまともに向き合っていなかった間に性格がかなり酷くなっていてな。それで振り回されてるんだよ。ああ、別に悪さしてるとかそういうんじゃないぞ?」

 ひとつため息をついた後、京介が語った話を聞いて真奈美は自然と笑顔になった。これまで不仲だった兄妹が仲直りするのは喜ばしいことだ。しかし、それとは対照的に京介の顔は苦虫をすりつぶしたようであった。

「桐乃ちゃんと仲直りできてよかったねぇ。じゃあ、今度京ちゃんの家に行こうか。久しぶりに桐乃ちゃんに会いたいし。」

 真奈美が笑顔で話しかけてきたが、京介は眉間の皺をさらに深くした。現在の京介にとって真奈美はこの世のオアシスであった。実際、真奈美に会ったとたん胃の痛みが軽くなったのだ。そして、この笑顔を守りたいと京介は心の底から思っていた。
 そう、京介は真奈美と桐乃とを会わせたくなかったのだ。何せ桐乃は外見はともかく中身がアレである。自分の心の癒しである真奈美までもが桐乃の餌食(胃痛的な意味で)になると、京介にはもはや癒しの場が無くなってしまうのだ。

 それに、あやせという実例もあった。あやせは先日の桐乃の告白の後、暫く引きこもってしまっていた。京介が足しげく通い彼女の母であり自分の孫娘と協力して彼女の心のケアをして、ようやく立ち直ったのだった。以降、桐乃とあやせは以前よりも親密になったように見えた。だが、実際にはあやせは色々吹っ切れてしまい自棄になっているだけであった。最も、桐乃はそこに付け込んであやせの母と共に京介とくっつけようと色々策謀を練っているのであるが、ここでは関係ない話である。

 それはともかく、真奈美を桐乃と会わせるのは嫌な予感しかなかった。桐乃の外行きの姿であるブラコン妹で対応されても、京介は胃にダメージが来るし真奈美には白い目で見られそうで恐ろしいのだ。


「それだけは止めてくれ・・・。頼むから!」

「ええ~。」

 桐乃をだしにして、久しぶりに京介の部屋に行きたかった真奈美としては不満の残る答えであった。そこで、代案として真奈美は京介を自分の家へと誘った。

「それに、お爺ちゃんとお婆ちゃんも今日ちゃんに会いたいって言ってるし。」

 それに対する京介の答えは「いいぜ。」だった。京介としては桐乃と真奈美とを会わせなければ言い訳で、真奈美の家に行くことは嫌ではなかった。

「じゃ、じゃあ、今から家寄ってく?二人とも喜ぶよ。」

「いいのか?そんないきなりで。」

「大丈夫だよー。いつでも来てもいいって皆言ってるし。ロックも喜ぶだろうし。」

 手を胸の前で合わせて笑顔で言う真奈美に、京介は断るのも失礼かと思って「」じゃあ、行こうか。」と言って、横になっていたベンチから腰を上げた。そして、真奈美に手を差し伸べ、真奈美もごく自然にその手を握り立ち上がる。それはまるで恋人のような姿であり、しかし二人はそろって付き合っているわけではないと回りに言い張っていた。

「今日はついでに晩御飯も食べていってよ。私がんばるから。」

「ああ。楽しみにしているよ。」

 穏やかな空気がそこには流れていた。ただし、京介は心の中で「これは現実逃避じゃない。家に帰るのが嫌なわけじゃない。」と自己弁護していた。


 一方桐乃は、京介が田村家に泊まるという事を聞いてあやせをもっと積極的になるように誘導しなければなどと考えていた。


おわり

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最終更新:2013年05月12日 23:23