132 :二二三:2013/04/07(日) 01:51:19
空気の入れ替えでもしますか
普通に考えたらとっくに開通してるだろうけどそれはそれってことでネタを投下
休日氏のユフィルートが前提です~



皇暦20XX年
神聖ブリタニア帝国首都ペンドラゴン


世界最大の超大国を率いるには若干頼りない感じがする男、第99代皇帝オデュッセウス・ウ・ブリタニアは頭を悩ませていた

「う~ん、どうするべきかな」

原因となったのは彼が政務の息抜きにと行っているペンドラゴン市内の散歩の途上で聞いたある男たちの話

「はぁ、」

「どうしたよ?」

「ん?ああ、今月も赤字でな……」

なんでも彼は海運業を営んでいるらしく、ここ暫く赤字続きで従業員の給料も払えていないらしいのだ
要因はいくつかあった。彼が仕事を請け負っている元請けの子爵がカラレスという中堅貴族に仕事を奪われているため回ってこない
取り扱う品物が変わった
たまたま暇である
どれもが普通にあり得る話で、別段おかしなところはないようであった
しかし一番の要因はなんといっても輸送コスト。人件費+燃料費が馬鹿にならないくらい掛かるのだという
なにせ大西洋側から太平洋、とくに日本へ運ぶのに毎回南ブリタニア大陸の果てであるホーン岬を回らないと行けない
北ブリタニア大陸を出て南ブリタニア大陸を回り、また北ブリタニアまで戻って日本を目指す。こんな遠回りをしていたらいくら輸送費が掛かるかわからない

昔から海運業関係者を悩ませるこの遠回りなルートは弱小貴族やその傘下にある零細企業には負担が大きく、輸送コストがペイできないケースが度々発生していた
とくに中堅以上の貴族が横入りしてきた場合、弱小貴族は仕事その物を失い、彼らが養うべき家臣や領民に満足に食べさせることができなくなる為、社会問題にもなっているのである
無論不正競争は徹底して取り締まってはいたが、法の範囲内でやられるぶんには口出しができない
ただ、それを抜きにしてもやはり輸送コストがかかりすぎるのだ。これは早めに手を打たなければ物価の上昇にも繋がり国民生活に多大な悪影響を出してしまうことだろう

当然海運業者からもなんとかしてほしいと要望が出ていたが、如何に超大国ブリタニアといえど事は簡単ではなかった。なにせ要件を満たすためには大西洋と太平洋を物理的に繋げなければならないのだから
解決に必要なことはパッと思い浮かぶ。要は運河を開通させればそれで終わり。そんなことはわかっている

「だが運河を開通させるとなれば莫大な費用と時間がかかる」

ブリタニアは日本と並ぶ技術大国でもある。たかが運河一つ開通させるなど造作もない
問題はそれにかかる時間と費用だ。こればかりは右から左という訳にもいかずどうしたものかと頭を悩ませていたのである
そこで彼は誰かに相談してみることにした。一番に相談すべき人物はすぐ下の弟であるシュナイゼル・エル・ブリタニア
政治家としては非常に優秀で、どう考えても彼の方が皇帝に向いていると言える自慢の弟だ
しかし弟は海外に出向していて忙しいらしく、連絡が取れなかった

133 :二二三:2013/04/07(日) 01:52:46
皇族、それもブリタニアの宰相なんだからいついかなる時でも連絡を取れる状態にしておくべきなのにと思わなくもなかったが言ったところでどうしようもないと気持ちを切り替えた彼は、その次に頼りにしている弟に連絡を取ってみた

「もしもし、オデュッセウスですがいま少しだけ時間はありますか?」

〈これはお義兄さんじゃないですか、おひさしぶりです〉

弟といっても自分より年上で、父や叔父と同年代の義理の弟だ。妹ユーフェミア・リ・ブリタニアの夫である彼とは家族ぐるみの付き合いをしていることもあり時々相談ごとをしているのであった
血縁上は弟だが、実質頼れる兄という感じだ
早速市民の声を話、運河が必要であるとの結論に至った経緯を話す。もちろん時間と費用の問題も

〈即興で運河を開通させる方法ですか?〉

「私が即断すれば誰も文句は言えないのはわかっているのですが、権力を振りかざして言うことを聞かせるのはどうも性に合わないので……」

ブリタニアの皇帝がそれでは駄目だというのは理解していたが、やはりまだ皇帝となって日が浅いからかこれがいいと思ったことをそのまま実行に移せなかった
それも莫大な建設費用、国民の血税が使われるとなれば尚更だ。だからといって輸送コストが上がれば特定品目の値段も上がり、国民の生活に影響が出てしまう
当然ブリタニアの物を輸入している日本へも悪い方の影響が出て誰も得をしない

〈運河を開通させるとしたら中央ブリタニアのどこかですね。個人的にはパナマ辺りが最適ではないかと思うのですが〉

「パナマですか?」

確かに場所としては悪くない。あの辺りなら両大洋を隔てる陸地の幅も細く、工事費用も最小限に抑えられる
それでも決して安くはないし、工事費用をペイするまでにはかなりの月日を要するだろう。だからといって通行料を上げればなんのために運河を掘削するのかわからない

「いっそのこと土地を消し飛ばしてしまいたいですね」

〈ははは、いくらなんでも無茶ですよ。まさか運河掘削にフレイヤを使うわけにもいきませんし〉

〈シゲタロウ、フレイヤがどうかされたのですか?〉

電話越しに聞こえる妹の声。オデュッセウスは慈愛の皇女だとか呼ばれている妹の口から大量破壊兵器の名前が飛び出すのはいささか似合わないなと思った

〈ああちょっとね。オデュッセウス義兄さんとフレイヤの平和利用を考えていたんだよ〉

フレイヤの平和利用。義弟が言った何気無い一言に、それができれば素晴らしいことだなと思う平和主義者の彼は、後に世界中に運河を開通させたフレイヤ皇帝と呼ばれるようになるのであった

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最終更新:2013年05月14日 20:17