356 :勘違いした田舎者:2013/04/17(水) 19:07:17
モニカルート小ネタ。
ちょっとしたブリタニアの設定紹介みたいな話。
357 :勘違いした田舎者:2013/04/17(水) 19:07:48
勘違いした田舎者
神聖ブリタニア帝国。
北はアラスカから南はコロンビア、更にハワイ、ミッドウェーなどの太平洋諸地域を領土ととし、約2580万㎞2の陸地面積と総人口9億0520万人を数える世界最大の超大国である。
ブリタニアの正史を記した『ブリタニア年代記』によれば、今から2019年前にローマ帝国のユリウス・カエサルが当時はヨーロッパにあったブリタニアへの侵攻を試みた際、
頑強に抵抗した一ケルト部族の王が勝利した年を皇歴元年と定め、そのケルト部族の王、ブリタニア皇家始祖アルウィン一世が建国したとされている。
絶対君主制、貴族制を敷く帝政国家でありながら、日本と同盟を結ぶまではほぼ一国平和主義的政策を採り続けてきた経緯を持つ。
自国領土より採れる豊かな鉱物資源と肥沃な大地よりもたらされる自然の恵み。皇族から平民に至るまでの高い教育水準、それらが合わさる事で実現した巨大な国力。
いつしか“力のブリタニア”という二つ名で呼ばれるようになったこの国のある辺境に、ロズベルトという貴族が住んでいた。
男爵の爵位を持つロズベルトは、自分が選ばれた民だと思っていた。自分は武勲侯や騎士侯などの一代限りの貴族ではない本物の貴族であり、平民共とは違う選ばれし存在であると。
*
俺の名はロズベルト。聞いて驚け、俺は男爵位を持つ正式な貴族だ。武勲侯とか騎士侯みたいな一代限りの下級貴族じゃあないぞ? 先祖代々世襲する、いわゆる上級貴族というやつだ。
お前達平民から見れば雲の上のような存在だな。
無論、自分の領地だって持っているぞ? 10㎞2にも及ぶ広大な領地に、1500人の領民が住んでいる。
周辺地域には他にも男爵位を持つ貴族が住んでいたが、皆数十人~数百人規模の領民家臣しか持っていない弱小貴族ばかりだ。
それに、同じ男爵でも俺は子爵相当の権限を持っている為、他の連中と比較すること自体が間違っているのだが。
同盟国である日本の名家、米内家とも懇意にしている。当代当主の米内光政卿とは“ミツマサ”“フランク”と呼び合うほどの仲。
まあ分かりやすい言葉で表すなら大貴族に相当する訳だ。
本来ならばお前達平民が口を利いて良いような存在ではないが、寛大なる俺は例え卑しく下賤な平民と言えど、最低限度には口を利いてやるようにしている。
そんな大貴族である俺はいま、首都ペンドラゴンの大通りを歩いていた。
今夜ペンドラゴンのあるホテルで男爵、子爵という大貴族ばかりが参加する舞踏会への招待状が来ていたからな。
弱小貴族共や、武勲侯・騎士侯なんかの下級貴族には分からんだろうが、俺ほどの大貴族になれば色々と付き合いが多くて大変なんだよ。
生まれが高貴すぎるというのも楽な物じゃない。
「きゃッ!」
「おっと、」
ちっ、お前と話をしてたら十歳くらいの平民少女とぶつかってしまったではないか。
あ~臭くて適わん、平民臭というのか? とにかく貧乏人特有の臭いと気配がして汚らわしい事この上ない。
「何処を見て歩いているんだ?」
「は、い…っ、ご、ごめんなさっ、」
気分よく歩いているところに平民にぶつかられたら、腹が立つのも無理ないと思わないか?
「謝って済むとでも思っているのか? 貴族たる俺が道を歩いているんだ、お前達平民は左右に分かれて道を空けるのが礼儀という物だろう」
なぜそんな当たり前の常識が分からないんだ。
苛ついたのが声に出てしまったようで、怯えながら涙声で謝罪する平民少女。
まあいい、俺は大貴族であり寛大な男。如何に相手が下賤な平民と言えど、ここまで反省の態度を取っている以上、許してやらんでもない。
ただ、今後のためにも多少の教育はしておく必要がありそうだな。
そう思って声を掛けようとしたら。
「やめなさいっ!」
通りを歩いていた女に怒鳴られた。
358 :勘違いした田舎者:2013/04/17(水) 19:10:26
「こんな小さな女の子を泣かせたりして恥ずかしくないのですかっ?!」
なんだこの女は? 怒鳴りつけてきたのは前髪を切り揃えた長い金髪の女で、髪の毛には赤いリボンをくるくる巻き付けている。
センスのない女だな。思わず日本の理髪店で見られる看板を思い出してしまったではないか。
丁寧な口調だが着ている服はドレスなどではなく白いワンピース。察するに下級貴族の娘といったところか?
「ふん、その平民の子供が貴族である俺にぶつかってきたのだ。つまりその子供が悪い」
「貴族、平民は関係ありません。大の大人が子供を脅かしている事の方が余程罪深きことです。それに、この子は謝っているではありませんか」
ずいぶんな口を聞いてくれるじゃないか、ええ? 大貴族であるこの俺に下級貴族風情が。
「貴様、よもやこの俺をフランク・ロズベルト男爵と知ってのその口の聞き方ではあるまいな?」
知っている上でなら容赦はせんぞ。下級貴族風情の家を取りつぶすなど造作もないこと。
明日には一家離散。いや、不敬罪で告発すればその首が飛ぶことになるのだからな。
ん? なんだ、止めておけだと? ふむ、確かにお前の言うように大貴族たる俺が、下級貴族や平民相手に大人げないかも知れん。
ふむ、大貴族としての品位にも拘わるか……。
「まあいいだろう、貴様……」
「モニカ・クルシェフスキーです」
モニカ・クルシェフスキー? 聞いた事無いな。どこの田舎者だ?
まあ下級貴族の名前など覚えている価値もないが。
「ではクルシェフスキー。貴様も口の聞き方には気を付けろよ? 寛大な俺だからこそ、この程度で許してやるのだからな」
俺でなければ子供は元より、お前の首も飛んでいたぞ?
下級貴族が大貴族たるこの俺に対して、ここまで無礼な口の聞き方をしているのだからな。
「あなたも貴族だからといって、むやみに己が権力を振り回すのは止めてください」
こうして許してやろうというのにも拘わらず、まだ減らず口を叩いてくるのだから育ちが知れるというものだ。
「ふん、騎士侯風情が……」
俺は平民の子供と下級貴族を一瞥してから歩き出した。
なに? よく堪えたなだと? ふん、あんな下級貴族に本気になるような小物ではないからな。
大体お前は小心に過ぎる。あんな騎士侯風情になにを萎縮しているのだ。平民とは言え俺の従者ならもっと堂々としていろ。
それにしても……クルシェフスキーだったか? あの下級貴族。
とても高位の貴族に対して取る口の聞き方とは思えんな。
今度会うようなことがあれば、俺自ら貴族のいろはを教えてやらねばならんようだ。
まったく、勘違いした田舎者はこれだから困る。
ロズベルト男爵家。
カンザスの端の端にある10㎞2の領地と1500人の領民を持つ。
クルシェフスキー侯爵家。
ブリタニア大陸西海岸に位置し、約44万㎞2の領地と約1200万人の領民を持つ。
領地南部(オレゴン)
領地北部(ワシントン)
359 :勘違いした田舎者:2013/04/17(水) 19:11:22
終わりです。
以前クルシェフスキー領の人口数百万としていましたが、こんな感じで大幅に増大してしまいました。
理由はオレゴンとワシントン、どっちにするか悩んだ末にいっそのことくっつけるかとなったからです。
一応ブリタニアは北ブリタニア全土+南ブリタニア北部の一部となりました。陸地面積は大雑把なので数値が合ってないかもしれません。
北ブリタニアだけだというのにとんでもなく人口が多いのは、多産政策の推進と社会福祉政策のしっかりした豊かな国である為、大幅に増大した次第です。
中華連邦の人口が単純計算で25億を超えてるからそんなに多く感じませんが……。
最終更新:2013年05月15日 20:25