429 :影響を受ける人:2013/04/19(金) 22:46:50
老貴族の憂鬱






儂はロズベルト男爵家の元当主、アルバート・ロズベルトじゃ・・・
今、儂は非常に悩んでおる。
というのも、現当主がどうしようもない無能であることじゃ
もともと本家を継ぐのはアヤツではなかった。儂の長男が継いでいく筈じゃった。
儂には子供が長男・次男・長女の三人がいる。
妻は長女を生み、しばらくしたら病気で他界してしまったがそれでも我が子を愛した。
将来は長男に継いでもらうつもりで教育を行った。
長女は社交界に出て、割とすぐに恋仲になった貴族(儂の友人の息子じゃ。正直嫁にはやりたくなかった)が出来たので嫁入りさせた。泣いたのぉ
長男も教育が良かったお蔭で領地も発展した。儂の手腕では現状維持がやっとだったからの。
儂は平民であったが、前当主に実力を認められて婿入りし、この家を継いだ。前当主・・・御父上の期待に応えられたかはわからぬ。かなり寡黙な方じゃったからな。
話がずれた。
長男も領地運営になれ、嫁を迎え、孫を産んでくれた時・・・儂はもう大丈夫だと思った。
このままゆっくりと老後を過ごそう・・・そう、思っていた矢先じゃった。長男夫婦が事故にあい、亡くなってしまったのは・・・
幸い孫娘が生き残ったものの、今も意識が戻らぬ。
儂は悲しみに潰れそうじゃったが、そうも出来ん。
なにせ領地運営は国から任されている大事な仕事じゃ。放り投げる事などあってはならぬ!
しかし、最近は体にガタが来ているようで思うように歩けなくなった。
仕事をするのもつらい・・・
儂は苦渋の決断で次男を呼び、当主とした・・・今思えばこれが間違いじゃったかもしれん。長女夫婦の縁者から養子を貰うか、併合してもらうかすればよかったかもしれん。
しかし儂には併合なんてできなかった。そうなれば御父上に顔向けできん。それにいくら縁が出来たとはいえ、余所の者を入れるには抵抗があった。
だから次男を当主にした。
次男はあまり力を入れて教育をしていなかったせいで、かなり乱暴者になっておった。
儂の間違いはここにもあった。長男に力を入れ過ぎたせいで次男の扱いが雑となり、傍若無人に育ってしまっていた。
妻が生きていたらこんな事には・・・いや、言い訳などすまい。これは儂のせいなのじゃ。
その為に、儂は強く注意を言えなかった。
図に乗った次男は散財の末・・・酒に酔った勢いで階段から落ちて死んだ。
儂は悲しんだが、皆は「自業自得だ」といい、だれも悲しまなかった。
次に継いだには次男の息子・・・現当主じゃ。
長男夫婦の子は遅く生まれたので、必然的にこの現当主になる。
そしてこの当主も父親そっくりじゃった。威張り散らし、金をアホみたいに使い、勝手に日本に出かけて友人が出来たと言えば、そ奴は問題があった放逐された人物・・・もうやになる。
仕事もろくにしないで、遊びほうけているしまつ・・・
長男夫婦が死んで一年・・・たった一年で領地の人口が減り始めた。
税収も減り始めた。領民からの苦情と、抱えている企業からの陳情に追われる日々・・・せめてもの慰めは、孫娘が順調に回復に向かっている事じゃな。

「だ、旦那様!」

む?なんじゃ・・・人が人心地をついている時に・・・
しかし執事が慌てているところを見ると、またバカが何かやり負ったのか?
どうしたのか問うてみると、執事は深呼吸をして・・・

430 :影響を受ける人:2013/04/19(金) 22:47:23

「クルシェフスキー卿は覚えておられますか?」
「うむ覚えておる。だいぶ昔の事で、お声はかけてはもらえなかったが・・・それがどうしたのじゃ?」

なんじゃろう。儂の感が聞くな!というておる。
だが聞かねばなるまい。

「その・・・ご息女のモニカ様は・・・」
「うむ、知っておるが・・・」

あの美しい御方じゃな。ラウンズにも選ばれた。ニュースで皇帝陛下と一緒によく見るわい。
      • あのバカ、まさか知らないでナンパしたとか言うわけでないじゃろうか?
そう思っていた儂の予想は外れた。最悪な方向でだ。
もう顎が外れそうなほぞ絶句した。
クルシェフスキー侯爵家と言えば、男爵なんかに比べれば遥かに大きい大貴族中の大貴族じゃぞ!
それを知らないばかりか罵った!!
しかも騎士候だからと馬鹿にしたぁ!!!
あ、あががががががが・・・

「だ、旦那様!しっかりして下さい!!」
「あ、ああ・・・す、すまん」

思考停止していた儂は、執事に肩を揺さぶられて何とか現実に帰ってきた。
不味い、非常に不味い!
な、なんと御詫びを申し上げればいいのか全く分からん!!
とにかく儂は事態を把握する為、秘密裏に報告してきた従者にバカを連れて戻ってくるよう指示をだし、更に友人の貴族達にクルシェフスキー侯爵家に通じる人物を探し出すことにした。
そして同時に詫びの手紙を手書きで作り始めた。
あのバカ者が!!
この家を・・・
御父上から継がせていただいたこのロズベルト家を潰すつもりか!!
儂は大急ぎで色々な事をこなしつつ、頭の中で現当主を罵った。
こうして準備はしておるが、相手は大貴族・・・門前払いされる可能性もある。そうなったらこの家は・・・
ああ・・・申し訳ありません御父上・・・もしかしたら駄目かもしれません。
そこまで考えて、ふと思う。
あれ?あのバカの発言、遠まわしに皇帝陛下も罵ってないか?だって騎士候を授けたのは陛下のわけで・・・

「ガハァ!!!」
「旦那様が血を吐いたぁ!!医者をよべぇぇぇぇぇ!!」

儂は意識が飛びそうなのを抑えつつ、壁にかけた肖像画を見た。
御父上・・・もしかしたらではなく、もうだめかもしれません・・・
そこで意識が途絶えた。

結果から言えば何とかなった。御家は何とか守り通す事が出来た。
何もわかっていなかったバカに事情を説明すると、面白いように蒼褪めていくのは面白かった。
そして友人のお蔭でクルシェフスキー家とコンタクトを取る事が出来、幸運にも三回目の接触で当主殿と場を取り持つ事が出来た。
謝罪と交渉の結果、バカは爵位剥奪の上当家から勘当と追放。
そして一時的に長女夫婦が領地も運営し、偶然にも目を覚ました孫娘をしっかり育てて当主に相応しくなるまで、ワシが男爵の地位を再び持つことになった。
この騒動の原因は全てわかっておる。
儂が次男にも目を向けていなかった事じゃ。
そしてちゃんとに注意する事が出来なかった事じゃ。
悔やんでも悔やみきれん・・・

431 :影響を受ける人:2013/04/19(金) 22:47:53
以上です。
初めての一人称視点でしたがどうでしょうか?
作品ごとにコロコロ視点を変えたり、作風をかえたりしているので皆様にとっては読みづらいかもしれません。
これには皆様の御意見と、私のおぼろげな知識から制作されているので突っ込み所が多いとおもわれます。
それでも楽しんでいただければ幸いです。

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最終更新:2013年05月15日 20:35