752 :二二三:2013/04/29(月) 18:39:39
ユフィの話が少ないというレスにお応えしてじゃあちょっとユフィの話でも書いてみようかと思い書いてみた~

ユフィルートの話なつもり~
んで、ユフィはKMFに乗れるってとこから思い付いたバカ話だよ~




第三皇女とヤン僧のケンカ




人型自在戦闘装甲騎ナイトメアフレーム。通称KMF
戦車に代わる画期的な陸上戦闘装甲兵器として開発されたこのロボットは、軍事用の兵器としての使用に留まらず、警察・民間警備会社・建築業・港湾作業等、幅広い場所で活躍中の現代社会には欠かせない存在となっていた
だが、こうして便利な労働力として重宝されているKMFにはその反面、悪事に利用されたり、ただのケンカを大掛かりなものにしてしまうというマイナスの要素も持っている



大日本帝国帝都東京


〔なんだこらァ!〕

〔やんのか!あァッ?!〕

東京のど真ん中にある工事現場前で、二機の作業用KMFがにらみ合いをしていた
その二機は外との意思疏通をしやすいようにし作業をスムーズに進めるため取り付けられていた外部スピーカー越しに、互いを威嚇するような怒声の応酬を繰り広げている

機種は共に倉崎重工製作業用KMF無頼。元は軍事用の第四世代機として開発されていたこの機種も最早時代遅れの品となり、現在では民間業者が使用するだけ
それ故、KMFを使用した揉め事ではもっとも多い機種であり年間最多を更新中な名前通り無頼の輩となってしまっていたのだ

「あの」

そんな二機が怒鳴りあっている工事現場の前を通りかかったのは、ピンク色の髪を頭の後ろでポニーテールに纏め、ひらひらの羽付きタイトスカートを履いた女性

「な、なんだ、あんたっ?!」

騒ぎが気になり、二機の様子をハラハラと見守るだけでいた番頭は、声をかけてきた女性を見てギョッと驚き後ずさった。まあそれも無理からぬ事である
なにせ女性は顔からはみ出るサイズの合わない大きなサングラスと、これまた大きな白マスクをかけていたのだから
服装とサングラスとマスク、恐ろしいほどチグハグな格好をした抜群の怪しさを誇る女性はどう見ても即通報されるような不審人物である

(なんだよコイツ、やべーよ、)

「なにがあったのですか?」

「え、ええ、実は作業中にあの二機の肩がぶつかりまして、どっちが先にぶつかっただの、謝れだので揉めてるんですよ」

「警察の方には通報なされないのですか?」

「しましたよ、ただ別の場所でも似たようなトラブルが起こっているのと、この連休中の渋滞で到着が遅れてるんです」

かいつまんで説明すると、隣通しで作業していた土方の若い衆二人のKMFがぶつかって取っ組み合いのケンカを始めたのだ

「止めようにもKMFの操縦免許持ってるのが他にいなくて……」

753 :二二三:2013/04/29(月) 18:41:15
KMF同士のケンカに生身で仲裁に入るのは走っている車に体当たりするのと同じだ。まず確実に大ケガをするし、下手をすれば死ぬことだってあり得るのだから、止めようと思っても止められない

「ですが、このままでは双方ともに大ケガをしてしまいますし、通行人の方にも御迷惑がかかります」

「そんなこと言ったって無理なものは無理だ!巻き込まれてケガしたり、死人が出たりしたらあんた責任取れんのかっ!?」

止めろと言うのは簡単だ。だが、手段がないのだからどうしようもない。空いている無頼もあるにはあるが、操縦できなければ鉄の置物である。すると、そこまで聞いた女性がとんでもないことを言い出した

「わかりました!ならばわたくしが止めに入ります!」

現場監督・番頭を含め、誰にも止めることができないのなら、代わりに自分がケンカの仲裁に入るというのだ

「はあっ!?あんたが止めに入るだって?!」

番頭の男は無茶を言う女性の頭から足の先までまじまじと見る。
そして直ぐ様結論を出した。無理

「そんな細っこい身体で土方の若い衆二人を相手取るなんて無理だ、それでもし部外者のあんたにケガでもされたら俺の責任になっちまう」

「それではどうなさるおつもりなのですか」

「警察来るまで放置だ、誰にも止める手段がない以上俺の責任を追求されることもないからな」

番頭的には止めたいけど止められないで済ませるつもりなのだ。事なかれ主義ではあったが、手立てがないのなら致し方ない
しかし、そんな彼に対して女性の方はというと

「もういいです!おどきなさいっ!」

「お、おい、なにす――!」

責任者の責任放棄に我慢できずに彼を押し退け、空いている無頼に勝手に乗り込んでしまったのだ

754 :二二三:2013/04/29(月) 18:42:53
〔大体お前は前から気に入らなかったんだよ、後輩の癖して挨拶はしねェ、敬語は使わねェ、ざけてんじゃねェゾ!!〕

殴りかかる無頼Aの拳を受け止める無頼B

〔先輩風吹かしてんじゃねェよ!年下の分際で半年先に入ったからって調子こいてんじゃねーッ!〕

受け止めた無頼Bが力任せに無頼Aを押し返す
同レベルの技量を持つ二人はさながら子供のケンカのようにどつき合いをしていた

〔おやめなさいッ!〕

そんな二人の無頼ABに割って入ったのは女性が駆る無頼C

〔んだぁ~~?〕

〔誰よてめェ?〕

見知らぬ女性の声に無頼ABは掴み合いを中断して振り返る

〔現場の皆さんや通行人の方々の御迷惑になるでしょう!そんなにケンカをなさりたいのならKMFから降りて素手でケンカをなさい!〕

そんなにケンカをやりたいならKMFに乗って周囲に迷惑をかけながらするのではなく隅っこの方で素手でやれ
至極普通な事を言っているつもりの女性だったが、まずケンカをするなと言わない辺り、徹底した実力主義の中で生きてきたことを窺わせる発言だ
そして、こうした物言いをされたら反発するのが彼等だった。ある意味両者は近いのかも知れない

〔ああ?うっせぇよ糞アマっ!てめ、どこ中?〕

〔いっちょ前に指図してんじゃねーよブスが!〕

〔んなっ!?〕

若い時分、いや今でも充分若いが、ケンカに明け暮れていた無頼ABの作業員は、挨拶代わりとでもいうような暴言を無頼Cの女性に浴びせかけた
彼らにとっては日常的に用いられていた言葉であったが、実力主義社会の中で育ちながらもお上品な世界で過ごしてきた女性には無縁のその言葉は深く深く突き刺さる言葉であった

〔ブ、ブス……そ、それは……わたくしのこと?〕

〔お前以外に誰が居んだよこのブスがっ、〕

無頼Aの男が断言する、お前はブスだと
彼女は決して自分が美人だとは考えていない。自分的には普通だと考えている。あまり見かけの美醜を気にしない彼女としては、自分が美人じゃないと言われる分には気にならなかった
といっても、人に尋ねれば十人が十人美人だと答えるであろうが

しかし、そんな彼女でも女性として"ブス"だと言われればさすがにショックを受けるというもの。万国共通で女性に"ブス"という言葉は禁句なのである




〔ふ、ふふ、わかりました〕

〔お前がブスだってことをか?〕

ぎゃははと笑う無頼B。ああ、うるさい、早く黙らせたい。暗い感情が沸々と込み上げてくる

〔いいえ……〕

女性は一度大きく深呼吸して操縦桿を握り締めた。細い手で力の限り握り締めているからか、ギリギリと軋み音がなっている

〔口で言ってもわからない方には、実力行使を行うしかないということがです!〕

口では建前を述べているが、内心ブスと言われて切れてしまった女性は無頼Cのランドスピナーを全速回転させて無頼ABに急接近

〔うおッ!速ェェ?!〕

〔そのようなこと、お父様にもお姉様にも――!〕

女性叫びながら無頼Cの腕を大きく振りかぶり

〔シゲタロウにも言われたことありませんのにーーーッッ!!〕

そのまま無頼Aを思い切り殴り付けた



「なにがわたくしが止めるだあの女!一緒になってケンカ始めてるじゃねーか!!」

現場監督と番頭は頭を抱えて叫ぶ、二機のケンカでもどうしようもないというのに、三機でどつき合いを始めてしまったのだ

〔このドブスがぁぁ!!〕

〔ド?!ドをつけたわねドをッ〕

もう許さないと殴りかかる女性騎乗の無頼C
やがて本格的なKMF操縦訓練を受けてきた女性と、作業用の資格と訓練しかしていない作業員たちの差が表れ、最終的に立っていたのは女性であった



そのあと、女性――神聖ブリタニア帝国第三皇女ユーフェミア・リ・ブリタニアは、昼の休憩を一人で自由に過ごしたいからと護衛を振り切った挙げ句、工事現場の土方二人とKMFでどつき合いした事を姉のコーネリアやダールトン将軍からキツく叱られ、
婚約者の嶋田からも二三お小言をいただくという、散々な結果となってしまった

なお、ユーフェミアとケンカしたヤン僧たちや、現場監督・番頭は、後で円い大きなサングラスとマスクをした女性が誰であったのか知らされる訳だが……。

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最終更新:2013年05月17日 21:47