776 :二二三:2013/04/30(火) 01:20:58
さっき見てたビデオの影響を受けて書いてみたネタ~
嶋田さんとモニカさんの娘+いっくんとリーライナ先輩の娘(捏造)の話
嶋田さんたちの娘は勝手にサクラと名付けてます
んでもってメッチャクチャ暗くて苦い話だから、嫌な人は回れ右~~
クルシェフスキーの落ちこぼれの話
嶋田サクラ、またはサクラ・クルシェフスキー。名前からわかるように、彼女は大日本帝国の嶋田繁太郎元総理と、神聖ブリタニア帝国にあまねくその名を知られる元ナイトオブラウンズ筆頭にして、
ブリタニア大陸西海岸に広大な領地を持つ大貴族、モニカ・クルシェフスキー侯爵の長女である
侯爵家に生まれた者の宿命として、幼き頃よりの英才教育・帝王学教育を叩き込まれていた彼女は、かつては憧れの母モニカの後を継いでナイトオブラウンズに、立派な騎士になるという夢に向かって歩みを進めていたが、
そのあまりにも苛烈な教育に堪えきれず落ちこぼれとなってしまった
厳しく怖い母モニカとは対称的に、優しく温かい父繁太郎に泣き付いた彼女は、ある時言った
「お父様……わたし、わたしには騎士の道も、クルシェフスキー家の後を継ぐのも………無理です……!」
「サクラ……」
父繁太郎は自分にすがり付いたまま啜り泣く娘を不憫に思い、本来ならば口を出さないと決めていた侯爵家後継者教育に初めて口を出した
「モニカ、サクラにはクルシェフスキー家を継ぐのは無理だ、あの子の心は完全に折れている。このままじゃ本当に潰れてしまうよ。君が特別サクラに目をかけてるのは知ってる、けど………無理だよ」
「シゲタロウさん……」
もちろんこの話に限っては如何に夫であろうと口出しをさせるつもりはなかったモニカであったが、苦笑いをしながら疲れはてた様子の繁太郎を見てサクラの心は本当に折れてしまったのだと悟った
「わかりました」
結果、モニカはサクラを後継者候補から外し、次女を後継者とする道を選択する。この日を境にあれだけ厳しかったモニカはかつての優しい母に戻った
それはサクラにとって嬉しいことであった。毎日朝から晩まで勉強、作法、政治学、領地経営に必要な学問、そして騎士としての鍛練を繰り返し強要されていた彼女にとって、かつての温かい生活が戻ってきたのだから
だが理解していた。自分は母に見限られたのだということを……
こうしてクルシェフスキー侯爵家は次女が、嶋田家は長男が継ぐことが決まり、サクラは平穏で自由な日々を手に入れることができたのである
777 :二二三:2013/04/30(火) 01:23:12
それから数年の月日が流れ、サクラはアッシュフォード学院日本高の高等部三年生となっていた
「サクラはいいよね~」
高等部に入ってからの友人が話し掛けてきた。話の内容は大体わかっている
「だって、お堅いお貴族様の教育もなく、日本の名門嶋田家とブリタニアの名門クルシェフスキー家の名前を名乗れるんだからさあ~」
彼女は例え両家の後継者レースから外れたとしても、嶋田とクルシェフスキーの名を名乗れる。それ以外に名前はないのだから当然ではあったが、その二つの名前は政財界の間で大きな武器になるのだ
"あの嶋田"
"あのクルシェフスキー"
権力もその名も利用することができない立場にあるサクラであったが、その名を持つだけでなにもしなくても周りがちやほやしてくれる
自分はきっと名士に見初められるか、お飾りとして担ぎ上げられる。でも一生涯の生活の保証はされている。食いっぱぐれることも路頭に迷うこともない
それはある意味将来が約束されているのと同義であった
「あ、わたし、これからバイトがあるから、」
「ええーッ!別にいいじゃん、一日くらい」
「そういうわけにはいかないよ、だってさ、わたしは嶋田とクルシェフスキーの落ちこぼれだから、あんまり親に迷惑掛けられないんだ」
「サクラは真面目だね~。あたしだったらちょっとくらい自分の立場を利用しちゃうな~」
「あはは、」
無茶なことを言う友人に愛想笑いして別れたサクラはバイト先であるパン屋さんに着くと、手早く着替えてレジに立った
彼女の仕事は主にレジ打ちである。店としても空きのポジションが調度レジであったのと、サクラ自身レジ打ちがあっていたので、なんの不満もストレスもなく仕事をこなせていた
そんな感じでいつもと同じようにレジと向かい合っていた彼女の前に、意外な客が現れた
778 :二二三:2013/04/30(火) 01:25:10
「あっ!」
「……」
それは自分と同じく母親譲りの金髪を長く伸ばした少女、山本とヴェルガモン、二つの名を持つ幼馴染みであった
「いくら?」
「あ、は、はい120円になり」
「……楽しい?」
「え…」
「あんたさ…………………逃げてばっかりだよね…………」
「っっ!」
久しぶりに会う幼馴染みから掛けられたのは思いもよらぬキツい一言。昔は仲良しの親友でいつも一緒に遊んでいた少女はいま、冷たく醒めた目で自分を見つめている
「立派な騎士になるなんて口ばっかり……。」
幼馴染みの辛辣な言葉は矢継ぎ早に続く
「お母さんから逃げて、クルシェフスキーから逃げて、あんたに期待してた領民から逃げて、嶋田から逃げて…………その癖嶋田の姓を持つお父さんに泣き付いて……」
「……」
「挙げ句に自分からも逃げてる」
「っ…!」
「あんたさ……最低だよ」
そんなこと…………今さら言われなくてもわかってる……。全てから逃げ出して、目の前の幼馴染みと交わした「立派な騎士になる」という約束を反故にして破り捨て、親友を裏切ったのは自分だ
「ま、いいんだけどね……どうせあんた…………友達じゃないし……」
「……ひゃく、にじゅうえんに、なります」
絞り出せたのは親友だった少女への返事ではなくパンの値段であった
「……」
無言で代金を支払った少女は、そのまま一瞥する事もなく店から出ていった
残された彼女にバイトの先輩が気遣いの言葉をかけてくれる
親友だった少女からの絶縁ともとれる言葉を浴びせられたばかりの彼女は、ただ泣きそうな苦笑いを浮かべるので精一杯であった。
最終更新:2013年05月17日 21:48