312 :Monolith兵:2013/05/19(日) 04:30:11
※この作品にはTS要素が含まれています。ご注意ください。
※この作品は妹系ラブコメディです。
※この作品はホラーではありません。

ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない」 その10

 その朝はいつもと違っていた。京介は目覚まし時計をセットしており、毎朝その音で起きていた。
 しかし、今朝に限っては桐乃が起こしに来たのである。あの桐乃がである!

「もうさっさと起きてよ!いつまで寝てるの!朝ごはん冷めちゃうよ、お兄ちゃん。」

 お兄ちゃん、などと呼ばれて京介の背筋に悪寒が走った。あの桐乃がそんなことを言うわけがない!

「何言ってんだお前!」

 ベッドの上で跳ね起きた京介は、桐乃に掴みかかった。よく見ると、桐乃の髪は黒く化粧気もいつもより薄かった。そして、その顔はいつもよりも幼く見えた。

「俺の妹は俺を起こしに来ないし、お兄ちゃんとも呼ばないし、何より中身が爺だ!」

 一気にまくし立てた京介は肩で息をしていた。そんな京介を不思議がっている桐乃は、何処も変哲の無い女子中学生に見えた。

「お兄ちゃん、また変な夢見たの?最近私が変に見える夢を見ているみたいだけど大丈夫?」

 そう言って、顔を近づけ京介の顔を覗き込む桐乃は、演技しているようには見えなかった。ややあって、桐乃は京介を優しく両手で抱きしめ、京介の顔を胸で抱え込んだ。

「大丈夫だよ。私はお兄ちゃんの妹だから。」

 京介は今が現実だと信じたかった。優しい妹がいる日常。間違っても自分の胃を傷つけようとしない妹の存在が新鮮だった。

「そうか。今までのは夢だったのか・・・。よかった。」

 そう言って、京介は桐乃の背中に腕を回し抱きしめた。桐乃はそれに答えて、抱きしめる力を強くし、顔を京介の耳元に近づけ囁いた。

「そうだよ。私は私ですよ、嶋田さぁん。」

 それはいつか聞いた魔王の声だった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 京介は気づいたらベッドの上で体を起こして絶叫していた。一頻り絶叫した後、京介は部屋を見渡した。時計の針は8時をさしていた。寝ぼけ眼で記憶をたどると、確か今日は日曜日だったはずだ。間違っても桐乃ー中身は辻正信だがーが起こしにくるはずも無い。

「ははは。なんて夢なんだ。本当に追い詰められてるな・・・。」

 少し涙目になる京介であった。その時、部屋のドアが突然開いた。

「兄貴、どうしたの!」

 入ってきたのは桐乃だった。しかし、昨日とは装いが違った。ライトブラウンだった髪は黒髪になっていて、何より眼鏡をかけていた。
 その姿を見て絶句している京介を見て、桐乃はははぁんとチシャ猫のような笑みを浮かべた。

「どうですか?少しイメチェンして黒髪に戻したのですよ。ああ、後嶋田さん、もとい京介さんの趣味に合わせて眼鏡もかけてみたのですけど、いいでしょう?」

 そう言って、桐乃は色々とポーズをとった。それを見て、京介はこれは夢だ、夢なんだと思い再びベッドの上に横になった。

「あれ?京介さんどうしたのですか?はっ!そうですか。私があまりにも魅力的過ぎて撃沈してしまったんですね。大丈夫ですよ。私は人の趣味にとやかく言うつもりは無いので。あれ?本当に寝てる?」

 京介は桐乃の言葉を聴きながら薄れ行く意識の中、心の中で呟いた。

(俺の妹が辻ーんなわけがない・・・。)



おわり

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最終更新:2013年05月29日 21:56