900 :第三帝国:2013/07/07(日) 01:01:09
東方夢幻録
幻想郷、
それは水田と手作業的産業しかなかった極東の島国が、近代文明へと目覚めた結果。
古の迷信、信仰が途絶え、力が衰えた妖怪、神が隠れ住む最後の土地。
その経緯から言うなれば幻想郷は古い存在の悪あがきでできたものだが、
隔離されてからは人も含めて彼らは独自の文明社会を築きつつあり、
幻想郷が大結界で常識の世界から隔離されて約100年、彼らはいた。
「いよいよ、東方紅魔郷のはじまりか」
幻想郷が紅い霧に覆われて数日、
人里では妖怪の異変という事もあり人の出入りが寂しく、
作物の出来具合に不安の声が囁かれたがそれも今日で終わるようだ。
と、彼女は思い。
「まあ、ぶっちゃけスペルカードルールを広めるための出来レースなのですけどね」
「そこをいうな」
対面する初老の男性の言葉に突っこむ。
本来ならば人里の有力な代表である霧雨家として、
眼前の彼女の娘、博麗霊夢が異変解決に向かったのに喜ばねばならないはずだが、
規定路線と言わんばかりな発言をして、2人も含めてこの部屋にいる人物たちはのんびりとお茶を飲んでいた。
そのはずである。
なぜなら彼らはこの展開を【知っていた】。
「これで食料価格の値上がりも収まるでしょう。
まったく、こんな時こそ団結する必要があるというのに」
「衝号の後に色々やらかしたお前がいうな、辻!!」
「おやおや、
アメリカ風邪でグロッキーにもかかわらず、
情け容赦なく米帝様を叩きのめした嶋田さんの言葉には思えませんね」
辻と嶋田のコンビはここが、
東方projectの世界であることを知っていたからだ。
「ついでに先代巫女として異変解決(物理)
妖怪退治(物理)で強い妖怪にフラグを立てまくった方の言葉とは思えませんね。
ああ、そうだ。実は最近茶飲み仲間として向日葵が好きな人と会うことがあるのです。
その人が言うには、先代巫女には多大な借りがあるそうで今から彼女を呼びましょうか?」
「生意気なこと言ってすんませんでした――――!!!」
巻き込まれフラグ体質と娘と似て才能(物理)があったせいで、
強い妖怪に惹かれまくりで、その中でもトップクラスにヤバイ人物が提示された結果。
先代巫女、もとい嶋田は無駄に洗練された綺麗な土下座を辻に披露した。
「漫才はいいが、話をもどしてくれないか?」
今代の阿求の父親で稗田家代表として参加している男性、
前世では大陸で米中相手に活躍した東条が変わらぬ2人の漫才に微笑ましさを感じつつも、突っこむ。
「あー、知っての通り。
先ほどついに元凶を突き止めた娘の霊夢が親友の魔理沙と共に紅魔館に突入した」
先代巫女の言葉に皆が耳を傾ける。
901 :第三帝国:2013/07/07(日) 01:02:21
「義理の娘で、しかも妖怪退治で、
何かと親らしいことをあまりできなかった身ながら、
あの子の親として見る限り例え一人でもこの異変は今晩中に終わるだろう」
「それだと、ウチの娘の魔理沙はいらない子ですか?」
霧雨魔理沙の父親でもある辻は茶化すように言う。
が、その実晩婚で一人娘の魔理沙を「ああ、辻が!!あの辻が!!」と
夢幻会の面々が驚愕する程の親ばかで、家出当然に出て行った娘のために、
遺書と花嫁衣装を用意してある父親として娘の過小評価にかなり傷ついているようで、
辻との付き合いが長い面々はそれを彼から放つ黒い空気で察した。
「そ、そうでもないぞ。
何せこの時点で先代巫女である私が生存しているように、
紅魔館の面々も見事に原作隔離をしているから、今後のことも考えると娘の親友がいてくれて助かる」
原作では先代巫女は名前だけの存在で、
生きているのか死んでいるのか明確でないものが、
ここでは娘に巫女の座を譲って人里の相談役として活動するのは、どう見ても原作隔離である。
さらに表向き今回の異変の主役であり、前回の吸血鬼異変の主役でもある紅魔館は。
吸血鬼姉妹の父親、もとい富永がノリノリで悪役を引きうけている。
余談ながら、吸血鬼異変も紅魔館内部の過激派の排除に仕組まれたもので、
向日葵の妖怪を筆頭とした力に自信がある妖怪に見事に殲滅された。
(自分に倒されたうっぷんを晴らす姿は某学園都市のむぎのんに似ていたとは嶋田談)
また今回もやらせ異変で、スペルカードルールを広めるためのやらせでる。
「今はこんな談話じみたやり方が通用するが、
今後の月やら天に聖人のことを考えると何が起こるかわからないしな」
「ええ、そうですね。
おまけに人側は嶋田さんを除けば大半は戦闘力皆無というのが泣けてきます」
「主人公はなくモブキャラなのが我々らしいと言えばらしいけどな」
部屋にため息が響く。
ある程度未来をしっていながら、
出せる手段の少なさと無力に嘆く。
だが、ここで嘆くために集まったわけではない。
伊達に敗北は不可避とされた太平洋戦争に勝ったわけではない。
足掻き足掻いてこその夢幻会だからだ。
「まあ、それでも何とかなるように娘とその友達を支援するのが我々大人の役目でしょう」
「そうだな」
かくして世界が違えど夢幻会は暗躍する。
数多の異変の先に彼らが得られるものは未だ知らない
最終更新:2013年09月02日 00:00