424 :ひゅうが:2013/08/05(月) 21:46:19


――※ 本作はフィクションです。実在の人物などとは一切関係ありません。



「それではなにかね。」

アメリカ合衆国大統領ビル・クリントンは顔に青筋を立てていた。

「君は、君たちはあの『アップルタイザー・オーケストラ』がジャパニメーション・ギークで日々趣味に精を出している、そういいたいのかね!?」

「いえ。決してそのような!しかし、佐々首相からも『彼らを粗略に扱うな』と強い口調でいわれている以上――」

「佐々だと?あの後藤田の――まんまと我々とモスクワを躍らせたスパイマスターの腹心が何をたくらんでいるのか、それがわからないということが何を意味するのか君はわかっているのかね!?」

事実だった。
アメリカ合衆国が畏怖をこめて「アップルタイザー・オーケストラ」と呼ぶ連中、元北日本の実質的な指導者たちはまんまと日本国の中枢で自分たちの地位を確立してその存在を誇示しているし、世界からも注目をあびている。
しかしノーベル平和賞受賞決定以後も政治的な動きは見せずに当局をやきもきさせていた。

胃を痛めているのは、海部俊樹内閣の後を継いだ佐々敦之内閣だけではない。
海の向こう、まんまと騙しおおせられたビル・クリントン政権も同様であったのだ。
むしろ、かのオーケストラとつながりのあった政界の長老 後藤田正晴の腹心でありスパイマスターの異名をとった警察官僚 佐々敦之よりも「得体のしれないジャップ」を相手にする元アラバマ州知事の方が焦りは強かったといえる。

「そんなことをいわれましても…」

と返したそうな部下の表情を読み取ったアメリカ合衆国大統領は殺意をこめた視線で彼を睨みつけた。

「だいたい、ハリウッドを親善訪問だと?チャップリンのファンだから?
赤い国家の指導者が? 冗談も休み休み言え!」


――大統領が、「彼ら」の一人がハリウッド映画に友情出演したことを知ってさらに血圧を上げるのはこの数週間後のことになる。
なお、せいぜい嫌味をいってやろうとした大統領の耳にある女性の名前が耳打ちされたのは余談である。

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最終更新:2024年12月30日 12:20