988 :Monolith兵:2013/06/11(火) 04:55:03
※この作品にはTS成分が含まれています。ご注意ください。
都内にあるとある雑居ビルの会議室に50人以上の男女が集まっていた。部屋の中の机はコの字型に並べられていた。
「何故だ!何故こうなった!!」
コの字型に並べられた机の中心に座る壮年の男がそんな言葉とともに、拳で机を叩いた。
「黒猫と京介が別れる。これは運命の記述(ディスティニー・レコード)にも記されている防ぎようもない未来だった。故に、我々は何もしなかった。そして、黒猫は松戸に引越し桐乃と京介との縁は続くはずだった・・・。」
「しかし、黒猫、五更瑠璃の父親が陸軍中佐であることが全てを狂わした、と言うわけか。これが原作と現実の差と言うものなのか・・・。」
原作は平和な平成日本を描いた作品だった。しかし、現実は違う。一応平和ではあるが平成日本ほどではない憂鬱日本なのだ。そして、憂鬱日本では大日本帝国は存続しており、平成日本とは比べようもないほどの軍備を持っているのだ。故に、原作では平凡な会社員であった五更瑠璃の父親が陸軍軍人であっても不思議なことではなかった。
「「「なんで、黒猫がカリフォルニアにいるんだ!!」」」
それがMMJお礼網と部会のメンバーの偽り無い本音だった。
全員で合唱した後暫く無言の時間が続いた。それを打ち破ったのは、部屋の中に慌てて駆け込んできた高坂桐乃だった。
「申し訳割りません、遅れました。」
よほど慌てていたのだろう。いつもは読者モデルらしくビシッと決めている服はどこかちぐはぐで乱れていた。髪も縺れており、額には汗が光っていた。しかし、現役陸上選手らしくどれほど走ったのかは解らないが息を乱している様子は無かった。
「全員集まったようだから早速始めよう。」
机の真ん中に座る議長役を務める男が言った。それにメンバー全員が頷くと、一人の男が立ち上がり今回の事態の説明を始めた。
「今回の事態は、五更瑠璃は父親がカリフォルニア大使館駐在武官となった為に家族とともにあちらに向かった為起きたものです。それが解ったのが1週間前。しかし、今回の事態は我々は把握できませんでした。陸軍組も青天の霹靂だったようです。」
その説明に、陸軍士官の服装をした何人かの男たちが頷いていた。
「カリフォルニア大使館では、先月交通事故で駐在武官の一人が重態に陥り全治4ヶ月の重症に陥っています。下手をすれば障害が残るかもしれないと。そこで、代わりの駐在武官を急遽送り込むことになったのですが、それに五更瑠璃の父親が選ばれました。彼は家族とともにカリフォルニアに向かった為に、五更瑠璃は高坂京介に別れを告げざる得なかったようです。むろん、辻もとい桐乃さんの働きもあってのことですが。」
説明が終わったとたん、部屋の中がざわめき始めた。
「何故こんなことに。」
「偶然なのか?」
「いや、1週間も気づかなかったんだ。誰かが妨害工作を・・・。」
「静まれ!!」
ざわめくメンバーを議長が一喝した。
989 :Monolith兵:2013/06/11(火) 04:55:34
「それで、これは偶然なのかね?それとも何か作為的なものなのかね?」
「それには私がお答えします。」
議長の疑問に桐乃が手を上げて発言を求めた。議長は頷き、それを見た桐乃は立ち上がり説明を始めた。
「結論から申せば、今回の事態は作為的なものでした。その犯人も判明して既に捕らえております。・・・犯人たちの言う事を信じるならば、桐乃派による犯行であると思われます。」
その言葉に部屋は一瞬にして静まり返った。多くのメンバーにとって理解の範疇外の事であったのだ。
「何でだ!桐乃派は高坂桐乃の中身が辻政信であるとわかった時点で自然消滅したはずだぞ!!」
「いや、中身が辻ーんでも外見は桐乃だ。何も問題はない、・・・あるな。」
「妹でTSで腹黒で前世からの付き合いなのだぞ?・・・でも、ここまでの原作レイプは酷い。」
面メンバーの言葉は全て否定的なものであった。確かに桐×京を押すメンバーはいた。しかし、それは他のヒロインたちの背中を押す為のものであって、本気で中身爺たちの恋愛を見たいわけではなかった。それ以前に、中身はともかく身体は間違いなく血が繋がった兄妹なのだ。
「彼らの言い分を要約すると、『中の人などいない。』『きりりんは京介と結ばれたくて仕方ないんだよね。原作サイコー!』だそうです。」
桐乃の言葉にメンバーは頭を抱えた。どう考えてもそいつらは現実逃避をしているからだ。高坂桐乃の中身は辻政信で、日下京介の中身は嶋田繁太郎なのだ。そんな状態で、桐京のカップリングが成立するわけがないのだ。
「私たちはどうするべきかだが・・・。」
「私はしま、京介さんと共にカリフォルニアに飛ぼうと思います。そして、黒いの、黒猫を取り戻します。」
「そんな事出来るのか?辞令は本物だぞ?」
「駐在武官の家族までが現地に行かないといけない、と言う話はありません。生活基盤さえこちらである程度用意できれば可能性は高いと思います。」
メンバーの質問に次々と答えていく桐乃を見て、皆希望が見え始めていた。まだまだ俺妹の物語を見ることが出来るかもしれないのだ。
「我々陸軍組は協力を惜しまない。とりあえず、五更家に官舎を振り分けられるよう上層部に掛け合おう。それが駄目でも住宅費用の援助くらいならば可能だろう。」
「海軍としても生活支援を惜しみません。また、我々の方から五更父の代わりになる駐在武官を派遣できないか検証してみます。」
「我々民間組は飛行機の手配を行います。至急カリフォルニアにいけるよう長距離便を押さえておきますので、桐乃さんは京介君と共にあちらへ向かってください。」
「いや、ここは空軍に・・・、乗り心地は最悪だな。」
次々とメンバーが協力の表明を始めた。他にも学校・保育所への復帰や関係書類の作成などが決定された。
「桐乃君、必ず五更瑠璃を連れ戻してくれたまえ。私はあやせ派だが、黒猫がいないと俺妹は成り立たない。だから頼む!」
そう言って頭を深々と下げる議長、改め新垣衆議院議員だった。
「ええ。必ず取り戻してみます。彼女は私の親友ですし、その妹も私にとって大切な人で京介さんの前世の妻です。私たちには彼女たちが必要なのですから。」
それではこれで失礼します、と言い桐乃は退室した。
それを見てメンバーの一人が発言を求め許可された。
「桐乃派への制裁はどうしますか?」
「そうだそうだ!こんな原作レイプ許されないぞ!!桐乃が辻ーんだった時点で原作は崩壊してるけど・・・。」
メンバーは口々に桐乃派への制裁を主張した。しかし、それに対する答えに皆は戦慄した。
「ああ、そうそう。桐乃派ですが、私が既に処分しました。身包み剥いで借金漬けにして発展場に放り込んで肉便器にしておきましたよ。では、急ぐので失礼します。」
半開きのドアから顔だけをのぞかせた桐乃の言葉に、俺妹部会のメンバーは乾いた笑いを浮かべるしか出来なかった。
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その時メンバーの心はひとつになった。
おわり
最終更新:2013年09月04日 19:04