44 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:39:02
※このSSにはTS表現があります。ご注意ください。
ネタSS「
俺の妹が○○○なわけがない!」 その14
黒猫が京介の元を去り1週間が過ぎた。今日も京介は彼女と出会う前と代わらない一日を過ごし帰宅した。彼女とともに入ったゲー研は今も通っているが、かつてほど楽しいとは思えなかった。
かつての腐女子でゲー研第2の変態であった赤城瀬菜は、中身が東条英機となってしまいその腐った個性は消え去った。それとともに落ち着いた性格となり、ゲー研の騒がしさの半分が消え去ったのだ。それに合わせて黒猫の転校である。ゲー研はかつてほど騒がしくはなかった。
「ただいまー。」
家へと帰り挨拶をすると、階段に桐乃が座っていた。一目で不機嫌とわかるほどオーラを振りまいていた。そのオーラに圧され京介は一歩引いてしまった。
「ちょっと部屋に来て。話があるの。」
桐乃はそれだけ言うとさっさと階段を上がっていった。何なんだ?と思いつつ荷物を自分の部屋において桐乃の部屋へと向かった。以前桐乃が辻政信だと言うことを知らなかった頃は鍵が掛けられていたが、現在ではそんなことはなかった。もはや2人の間には何の壁もなかった。兄妹から、兄妹且つかつての仲間へと関係は変わったが、その親密さは佳乃が疑いを持つほどだった。
「そこに座ってください。」
京介は桐乃の指差したクッションに座った。座ると机をはさんで桐乃と向かい合うことになった。
「さて、最近私が忙しくしているのを知っていますか?瑠璃さんと日向さんを探していたんですよ。・・・だと言うのに貴方は何をしているのですか?」
「・・・・・・・。」
「話したくないのですか?ここで黙っていても何一つ事態は改善しませんよ。」
それでも京介は黙ったままだった。これは重症だ、と思い頭を振って思考を切り替える。
桐乃はひとつため息を吐くと、黒猫が今何処にいるのか何故京介の前からいなくなったのかを説明を始めた。無論、MMJやディスティにー・レコード(原作)の事は話さない。黒猫の父親が派閥抗争のためにカリフォルニアの大使館に転勤させられた、という事にした。
「と言うわけで、瑠璃さんと日向さんはカリフォルニアにいます。最低でも2年は向こうにいることになるかもしれません。」
あらかたの説明を終え、桐乃は京介の顔を見やった。
「さてどうしますか?ここでうじうじしていますか?それとも会いに、迎えに行きますか?」
「・・・貴方のことだ。全て準備が終わっているのでしょう?」
「もちろんです。」
「ならば行きましょう。そして瑠璃に問いただしますよ。私も今の思いを彼女に聞いてほしい。そして何より、日向に言うべきことがあるので。」
京介はそう言って軽く笑った。桐乃はひとつ頷くと立ち上がり両手をバッと広げた。
「さあ!ぐずぐず出来ません!すぐに空港に向かいますよ!!」
「へ?い、今からですか?」
「時は金なり。思い立ったら吉日です!さあ立って。大丈夫。旅行の準備はもう出来ています。」
そう言うと机の下に隠していたバッグを取り出した。間違いなく京介の旅行かばんだった。
「ちょ、ちょっと待ってください。両親には?学校は?」
「政治的決断は法律の壁をも時として越えなければならないのですよ。」
つまりは両親にも学校にも連絡を入れていないということだ。優等生の桐乃が言うと違和感のすごい台詞だが、中身が辻政信だと知っていれば納得できるものだった。
「はぁ。まあ、いつものことですね。」
「まあ、今回の対価だと思って諦めてください。何、前世で首相を拝命したときのことを考えれば・・・。」
「あれは拝命ではありません。命令です。強制です。」
そして京介は声を上げて笑った。それは黒猫がいなくなってから桐乃が初めてみる笑顔だった。
45 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:39:39
それから約半日後、2人はサクラメント国際空港へと降り立っていた。結局、両親にも学校にも連絡をいれず飛行機へと飛び乗った。帰国した後の説教はそれは酷いものになるだろうことは想像に難しくなかった。
「・・・飛び入りだったにしてはファーストクラスだったとか臨時便だったとかには驚きません。しかし、これはやりすぎでしょう!」
2人の乗った飛行機は京介の語ったとおりに急遽決まった臨時便であった。しかもファーストクラスであった。京介は知る由もないが、MMJがかなり張り切った為こんな事になったのだった。当初空軍が協力を申し出ていたが、民間航空会社で飛行機の都合がついたのでこうなったのだ。そもそも、空軍が二人のために飛行機を出したとあっては京介にMMJの暗躍がばれてしまう可能性があるため、民間による渡加になったのだ。
そんな二人は今日本国旗を掲げた黒塗りの高級車に乗って。つまり日本大使館の公用車である。
「どういうことなんですか?」
「何、前世の縁は強いですね、と言うだけのことです。今の
夢幻会には私の後継者も多数いるのですよ?」
桐乃の言葉は間違ってはいない。しかし、公用車を用意したのはMMJであり、桐乃はMMJに所属していると言うことは京介に言うわけにはいかない。「俺の妹がこんなに可愛いわけがない。」の世界を楽しむ為には、原作を知らない京介の存在は必須であるのだから。
「それにしたって・・・。」
「引け目を感じるのなら、出世払いで返せばいいのです。彼らも嶋田さん、京介さんには期待しているのですよ?」
その言葉に京介は顔を引きつらせた。いくら前世で首相を引き受けたことがあるといっても、現世でも同じように振舞えるかと言うと否と言わざる得ないのだ。だが、以前桐乃には最低限帝大は卒業しろと言われた事もある。勝手気ままな第3の人生を過ごしたいと思っていた京介だが、もはや人生のレールは敷かれており、そこから逃げ出すのは困難な状態であった。
「それはともかく瑠璃さんと日向さんです。話ではサクラメント市内に住居を構えていると言うことですので、まずは大使館に行き彼女たちの父親に会いましょう。」
黒猫の父は大使館の駐在武官としてカリフォルニアに派遣されており、二人は彼と顔見知りであった。また、帝國軍の邪気眼派とMMJ及び新生夢幻会との仲を取り持った縁もあり、それなりに親しい仲でもあった。そして、京介と黒猫が恋仲にあったことも知っており、二人の仲を認めてもいた。今回の破局について知っているのかは解らないが、高坂兄妹と黒猫が会うのを妨げることなどはないであろうと考えていた。
「あ、もう見えてきたようですよ。」
桐乃が指差す方向に日の丸が翻っていた。
46 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:41:31
それから2人は五更父に会い、黒猫に会いに来たことを説明した。彼は京介と黒猫との仲を切り裂いてしまったことを悔いているのか、あっさりと五更家へと招待してくれた。もっとも彼は職務中であったので、地図を貰い贔屓のタクシーを呼んでくれた程度であった。MMJの手伝いは空港の迎えで終わっていたのだ。
そして2人はカルフォルニアの五更家に割り当てられた家の前に降り立った。
「ここに瑠璃と日向が・・・。」
京介は感慨深げに呟いた。親にも学校にも秘密で日本を飛び立ち早2/3日がたっていた。京介はまぶたを閉じ、気合を入れるためか頬を一回叩き「よし!」と叫び歩き出した。桐乃もそれに続いた。
インターホンを鳴らすと暫くして誰かが玄関に駆け寄る音が聞こえてきた。足音からして子供のようだ。日向か珠希であろう。
「誰ですかー・・・って!し、しげ、・・・じゃなくて高坂君と桐乃さん!」
果たして出てきたのは日向であった。京介のことを繁太郎さんと呼びそうになったほど驚いているようであった。
「久しぶりだな。」
「・・・もしかしたらとは思っていましたけど。とりあえず入ってください。瑠璃お姉さんも家にいますから。」
「そうか・・・。ではお邪魔します。」
桐乃も同じくお邪魔しますと挨拶して家へと入った。日向が先頭に立ち家の中を案内する。ややあって黒猫の部屋の前にたどり着いた。
「瑠璃お姉さんはこちらに来てからだんだん元気がなくなって・・・。今の時間は寝ているはずです。」
それは京介にとって衝撃であった。やはり、黒猫の心は・・・。
「瑠璃お姉さん入りますよ。」
日向はノックの後断りを入れてドアを開けた。部屋へと入った3人の視界に入ってきたのは、ベッドの上で眠る黒猫の姿であった。ベッドのそばまで近寄ると、最後に見た姿よりも若干頬がこけているように見えた。心なし髪はかつての艶を失っているようにも思えた。
「瑠璃・・・。」
「私はこれで失礼します。ほら、桐乃さんも・・・。」
「いや、桐乃も残ってほしい。瑠璃との話にはこいつも必要だ。」
京介はあえて桐乃を桐乃と呼んだ。瑠璃と話す以上、必要なのは”辻政信”ではなく”高坂桐乃”なのだから。
「解りました・・・。それでは。」
日向はひとつお辞儀をする部屋から出て行った。それを見計らったかのように、京介は黒猫の頭へと手を伸ばし髪を撫でた。
「お前、何でこんなになるまで・・・。」
「私の・・・せいでもあるでしょうね。」
桐乃は黒猫に発破をかける為に、黒猫の前では京介との仲の良さをアピールしたり、自分が京介を好きだということをツンデレ気味に主張したりしていた。確かに桐乃は京介に好意を抱いているが、男女の仲を望んだことなど一度もない。”原作”のように恋心を持ったこともない。すべては「俺妹」の世界を楽しむ為の演技でしかなかったのだ。
「う・・・ううん・・・。」
黒猫が突然身じろぎをし始め、その瞼が開かれた。しばらく京介たちを見ていた黒猫だったが、何度も瞬きをし始めた。
「何てこと・・・。とうとう幻覚を見るほどに・・・。「幻覚じゃない。本物の高坂京介だ。」:
黒猫に全てを言わせる前に、実体を持った高坂京介であると言うことを主張した。黒猫は暫くボーっとしていたが、頭に感じる京介の掌の感触を感じると、慌てて飛び起きた。
47 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:42:04
「ウソッ!何で!あ、あなたが、こ、ここに・・・。」
「お前に会いに来た。」
黒猫の疑問に京介は簡潔に答えた。それに一瞬呆けた黒猫だったが、すぐさま毛布をかぶり顔を隠した。
「わ、私は、貴方を裏切ったのよ!今更貴方に合わす顔なんて・・・。」
「私は瑠璃の顔を見たい!顔を見せてくれ。お願いだ。」
京介は拒絶する黒猫に懇願した。京介はあえてこれまでのように”俺”と言う言葉を使わなかった。それは年相応に演じてきた自分を捨て去り、裸の自分を見てほしいからであった。
京介の言葉を聞いた黒猫はおずおずと顔を現した。
「桐乃まで・・・。」
今気づいたのか、桐乃のほうにも顔を向けた黒猫だった。桐乃はそんな黒猫を見ると「久しぶり!」といつもの外行きの性格で挨拶をした。
「私は瑠璃に会いに来た。お前に聞きたい事と言いたい事があるからだ!私に教えてほしい!そして私の話を聞いてほしい!・・・駄目か?」
京介は心からの言葉を黒猫に語りかけた。それに対して彼女は頷いて見せた。それに安心したのか、京介はひとつ大きなため息を吐いてベッドの端へと腰を下ろした。
「私が瑠璃に聞きたいのは、何故何も言わずに別れたかという事だ。確かに違う国にいるのだったら付き合っていくのは難しいだろう。でも、説明も無しに別れを言うのは無いだろう?」
京介の質問に黒猫は無言であった。
「それとも、私との関係が自然に消えてしまうのが怖かったのか?」
「・・・私は、・・・・・・、貴方と別れたくはなかった。でも!太平洋は広いわ。私たちの心はいつか広い海の中に溶けきってしまう。いつか貴方から別れを切り出されてしまう!・・・それが怖かったのよ。」
黒猫の正直な気持ちを聞けて京介は満足であった。この少女はやはり深い愛を持ち、そして酷く臆病で怖がりなのだ。そんな彼女の心情を察することの出来なかった自分は、きっと彼氏失格なのだろう。しかし、京介は今日彼女に言うべき言葉があった。もしかするとそれは”彼女”にとって残酷な結果をもたらすだろう。しかし、言わずにはいれないのだ!
「瑠璃。私の気持ちを聞いてほしい。」
「いや!貴方は!解っているでしょう?・・・貴方の心の中には妹が、桐乃がいるってことを・・・。そして桐乃の心の中にも・・・。」
「あ、それ誤解だから。」
酷く明るい声が部屋に響いた。黒猫は「へ?」と間抜けな声を上げた。
48 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:42:45
「あたしはね!確かに京介の事は好きよ?でも兄妹の域を超えないし、異性と意識したことは無いし。それに、あんたの前で散々京介との仲を自慢したりしたけどさ、それはあんたを焚きつけるためだし。だから、勇気出して告白できたでしょ?」
余りにもあまりな話に黒猫は酸欠の金魚のように口をパクパクさせるしかなかった。このブラコン妹は自分と京介をくっつけるためにあんな真似をしたと言うのだ!それを誤解した自分もアレだが、誤解させるように振舞った桐乃もアレすぎた。
「あ、あなたね!」
「私の話はいいじゃない。それよりも兄貴の話を聞いてよ。その為にはるばる日本から来たんだから。」
桐乃の言葉に京介に顔を向けたが、すぐさま顔を俯かせた。
「瑠璃、私はお前を・・・。」
「それ以上言わないで!」
京介が話そうとしたとたん、黒猫はベッドから下り裸足で駆け出し部屋から飛び出した。慌てて黒猫の後を追う二人だったが一瞬あっけにとられたこともあり、彼女が家から飛び出した時にはかなりの距離が開いていた。病み上がりとは思えぬ健脚だったが、かつて海外留学まで誘われた現役陸上選手の前には意味をなさなかった。隠して彼女は、日本人居住区の道の真ん中で桐乃に捕まえられた。京介も水泳で鍛えた体ですぐさま追いついた。日向も小学生にしてはすばらしい走り方で、30秒ほどしてから追いついた。
「聞いてくれ!私は、私はお前の事を!」
「いやっ!」
黒猫は耳をふさぎ地面に蹲った。しかし、桐乃はその腕をとり耳栓をさせまいとした。
「この強情もの!きちんと聞きなさいよ!あんた京介を振ったんでしょ!京介の話を聞く義務があんたにはあんのよ!!」
桐乃の言葉に答えた様子も無く、黒猫はなおも抵抗を続けた。それを見て京介は焦り、言おうと思っていた言葉を上回る言葉を吐いてしまった。
「瑠璃!俺と、俺と同じ墓に入ってくれ!!」
京介が叫んだ瞬間、一瞬にして争う2人は動きを止め、周囲は静寂を取り戻した。遠くに自動車の走る音とクラクションが僅かに聞こえるが、それだけだった。京介はハッと、自分が言った言葉を理解して落ち込みかけたがどうせいつかは言う言葉だと自分を慰めた。
一方いわれたほうは混乱の極みにあった。
49 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:43:28
(墓に入ってくれ?同じ墓?どういう意味だろう?えっ?同じ墓?それはもしかして・・・。)
そんな混乱と静寂を破ったのは桐乃だった。
「プッ・・・。な、何ですかそれ?プロポーズ?いや、いつの時代ですか!戦前でもそんなこと言う人いませんでしたよ。ほんとに酷い!」
黒猫を拘束していた腕で自分の腹を抱えて大きな笑い声を上げた桐乃を片目に、黒猫は京介の言った言葉の意味を正確に理解した。
「返事を聞かせてほしい。」
「わ、私は・・・。」
そこで黒猫は突然倒れた、慌てて駆け寄る京介と桐乃だったが、ただ気絶しているだけだとわかるとホッとため息をついた。恐らく体調不良で寝起きにいきなり走り出してしまった為に貧血を起こしたのだろう。もしかしたら栄養失調もあるのかもしれない。
「繁太郎さん・・・。」
「トヨ・・・。すまん!私は瑠璃を見捨てることは出来ん!確かにお前ともう一度一緒になりたいと思う。けど、瑠璃には私しかいないんだ。」
「解っています・・・。瑠璃お姉さんはしげ、高坂君と一緒で無いと幸せにはなれないでしょう。そして、私は一人でも幸せを探すことが出来る。でも・・・、私は貴方の事は許せそうにありません。・・・暫くは・・・、暫く時間を下さい。そうすれば二人のことを祝福、できる、とおもい、ますから・・・。」
「すまない。」
「謝らないで下さい。瑠璃お姉さんを・・・、お願いします。」
日向はそれだけを言うと踵を返して走り去っていった。それを京介は見送ることしか出来なかった。これ以上何も語ることは出来ないし、その資格も無いのだ。今日の事は自分にとっても日向にとってもとても悲しく、しかし大切な日になってほしいと京介は切に願った。
「クククククッ、ひぃひぃ・・・、さて、瑠璃さんを運ばなくては。京介さん、瑠璃さんを負ぶってあげて、いえ、お姫様抱っこの方がいいでしょうね。」
「ちょ!こんな住宅街で!」
「今更でしょ?ほらっ。」
そういって桐乃が目線で指す方を見ると、何人かの女性がこちらを見ながらひそひそと話をしているのが見えた。他にも学生らしき一群と主婦グループらしき女性たちがこちらを見ていた。皆好奇の目でこちらを見ていた。
「ははははは。畜生!最後までやってやるよ!」
京介はやけくそで黒猫をお姫様抱っこして、五更家へと向かって歩き始めた。
50 :Monolith兵:2013/06/17(月) 01:44:01
五更への黒猫の部屋へと彼女を横たえた京介は、静かに眠る彼女の寝顔を見ていた。日向を振ってしまったことに対する罪の意識はあったが、後悔はしていなかった。彼女と過ごした前世の記憶は確かに宝物で、今でも確かに彼女を愛していた。しかし、彼女の中身は立派な成人女性であり、かつて首相を拝命した際に弱気になった自分に発破を掛けて元気付けてくれた女性でもあった。かつての美しい日々を思い出すと自然と涙が零れ落ちてくるが、今の自分は嶋田繁太郎ではなく、高坂京介なのだ。
「ううう・・・。」
物思いに耽っていたら黒猫がうめき声を上げていた。どうやら目が覚めたようだ。桐乃は日向を追いかけてここにはいない。正真正銘2人きりだった。なお、珠希は帰ってきた母親に連れられてリビングで遊んでいる。
「あ、・・・私あの時・・・。」
「大丈夫か?」
「ええ。」
黒猫は上半身を起こし、京介の方に顔を向けた。
「あの時の返事を聞きたい。」
「一緒にお墓に入るのでしょう?今世だけではなく、来世も私と一緒にいたいというの?」
「ああ。」
前世の妻を先ほど振ったとは思えぬ返事をした京介だったが、それを黒猫が理解することは恐らく一生無いだろう。故に、黒猫は満面の笑みを浮かべながら答えた。
「私を貴方のお墓に入れてください。」
そしてどちらからとも泣く二人は抱き合った。
「その、これからよろしく頼むな。」
「ええ。これから楽しい日々になりそうね。」
抱き合う2人は将来の楽しい未来を想像し、語り合った。
(そう、本当に楽しいことになりそうだ。クククッ。)
かつて陸軍大将であった彼女はこれから訪れるであろう”とても楽しい未来”を想像しながら心の中で呟いた。
黒猫√HAPPYEND
最終更新:2013年09月04日 19:12