109 :Monolith兵:2013/06/23(日) 05:30:46
※この作品にはTS表現があります。ご了承ください。
その14>>47からの分岐ストーリーです。

ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない!」 その15


「ウソッ!何で!あ、あなたが、こ、ここに・・・。」

「お前に会いに来た。」

 黒猫の疑問に京介は簡潔に答えた。それに一瞬呆けた黒猫だったが、すぐさま毛布をかぶり顔を隠した。

「わ、私は、貴方を裏切ったのよ!今更貴方に合わす顔なんて・・・。」

「私は瑠璃の顔を見たい!顔を見せてくれ。お願いだ。」

 京介は拒絶する黒猫に懇願した。京介はあえてこれまでのように”俺”と言う言葉を使わなかった。それは年相応に演じてきた自分を捨て去り、裸の自分を見てほしいからであった。
 京介の言葉を聞いた黒猫はおずおずと顔を現した。

「桐乃まで・・・。」

 今気づいたのか、桐乃のほうにも顔を向けた黒猫だった。桐乃はそんな黒猫を見ると「久しぶり!」といつもの外行きの性格で挨拶をした。

「私は瑠璃に会いに来た。お前に聞きたい事と言いたい事があるからだ!私に教えてほしい!そして私の話を聞いてほしい!・・・駄目か?」

 京介は心からの言葉を黒猫に語りかけた。それに対して彼女は頷いて見せた。それに安心したのか、京介はひとつ大きなため息を吐いてベッドの端へと腰を下ろした。

「私が瑠璃に聞きたいのは、何故何も言わずに別れたかという事だ。確かに違う国にいるのだったら付き合っていくのは難しいだろう。でも、説明も無しに別れを言うのは無いだろう?」

 京介の質問に黒猫は無言であった。

「それとも、私との関係が自然に消えてしまうのが怖かったのか?」

「・・・私は、・・・・・・、貴方と別れたくはなかった。でも!あなたは私を見てくれはしなかった・・・。」

 そうして黒猫が語っていった事は京介の胸に深く突き刺さっていった。京介は黒猫のことを大切に思い、可愛がってきた。しかし、黒猫にとってはその行動は自分を女性として全く見てくれていないと映ったのだ。実際、京介は黒猫に別れを切り出された時も、そして現在も、彼女を一人の女性としては見れなかった。どうしても彼女は京介の仲では、幼い少女であり守るべき対象だったのだ。

「・・・そうか、・・・そうだな。私は瑠璃を女性として、劣情の対象としては見れなかった。だが、決してお前を蔑ろにしていたわけではない!それは信じてほしい。」

「ええ。あなたは私を守るべき小さな女の子してしか見てなかった。・・・もう私には貴方と付き合っていく自信がなかった。そして、太平洋はとても広いわ。その距離が私の心を癒してくれると思っていたのに!貴方は私に会いに来たといった!」

 黒猫は叫びながら京介に殴りかかった。しかし、ベッドに伏せがちになっていた体にはそれほどの力はなく、京介には蚊ほどのダメージを与えることも出来なかった。それでも黒猫は泣きながら京介を殴り続けた。
 そんな黒猫を悲しく思いながらも、京介はどうすることも出来なかった。実質的に黒猫を振ってこうなるまで追い詰めてしまったのは自分なのだ。せめて彼女の思うとおりにさせよう。そう心の中で思っていた。

110 :Monolith兵:2013/06/23(日) 05:31:18
「いい加減にしなさい!」

 そんな2人を止めたのは桐乃の言葉だった。

「あんたたちは別れるべくして別れたの!解らないの?兄貴はあんたに告白された時にあたしに相談した。けど、その時にこいつはあんたの事を好きだとか一言も言っていなかった!それに、あんたが告白する前に私に電話してきた時にあたし言ったよね?兄貴と付き合ったらあんたはきっと苦しむって。それを承知で告白したんでしょ?付き合ってたんでしょ?結局、兄貴を振り向かせることが出来なかったあんたの負けなのよ。」

 桐乃の言葉は黒猫と京介の胸の奥底まで突き刺さった。結局のところ、この2人が付き合うこと自体が無理だったのだ。
 原作では2人とも高校生で年相応の精神年齢だったが、現実では違う。
 京介の精神年齢は前世前々生も含めればもはや100の大台に乗っていて黒猫は余りにも幼く見えてしまい一人の女性としてみ見ることは出来なかった。黒猫は京介を振り向かせようと思ってはいたが、生来の性格のために勇気を振り絞った行動をしても京介には背伸びをしたい子供としてしか映らなかった。
 もはや2人はやり直すことは出来ないのだ。その現実を桐乃は2人に突きつけた。

「・・・私たちはもう終わりなんだな・・・・・・。」

 京介が漏らした言葉を聞いた黒猫はもはや京介を殴る力も無く、ベッドの上で泣いていた。とめどなく流れる涙が枕を濡らし、嗚咽した。それを京介は居た堪れなくなった。

「兄貴はもう出て行って。ここにいても黒いのを傷つけるだけだから。」

 京介は桐乃の助言に従い部屋から出て行った。もはや黒猫にかける言葉は何もなかった。

 部屋から出た京介を出迎えたのは日向だった。

「ごめんな。お前の姉ちゃんを泣かせてしまった。いつかはこうなるとは思っていたけど、女の子を泣かせるのは本当に辛いな。」

「本当に酷い男ですね。彼女だったというのに一度として女性としてみることなく終わったなんて・・・。そして、お疲れさまでした、繁太郎さん。」

 日向は京介を軽く叩きはしたが労いの言葉を送った。日向もいつかはこうなると解っていたのだ。自分たちの精神年齢では同世代の異性と付き合うのは殆ど不可能に近い。同姓と付き合うのにも苦労するのだ。常に別の自分を演じなくてはならず、そのストレスは計り知れない。だからこそ、日向と京介は再び惹かれあったのかもしれない。

「多分これが最も正しいことなんでしょうね。」

「瑠璃には私よりもいい相手がきっと現れる。それまではトヨ、いや日向、お前があいつを支えてやってくれ。私ではもうあいつの傍にいることは出来ない。」

「解っています。きっと貴方よりもいい男が見つかりますよ。お姉さんを女性として見れる立派な男の人が。」

 日向の言葉には多少の刺があったが、自分の姉を泣かせた男に嫌味を言う程度は許されることだと、京介はそれを受け入れた。

「トヨ、いや日向。お前が結婚できる年になったら・・・。」

「嫌ですよ繁太郎さん。いえ、京介さん。私の答えは初めから決まってます。早くその時が来ないか待ちわびてるくらいですよ。だから、その時までその言葉はしまっていてくださいね。」

「すまない。その時には必ず。」

「ええ。期待してますよ。」

 そうしてかつての夫婦の会話は終わり、日向はリビングへ向かい、京介は屋外へ移動し限りなく広がる青空を見上げた。3度目の青春はなんとも後味の悪い恋ともいえない付き合いによって終わりを迎えた。それはきっと未来では甘酸っぱい記憶として残り、いつかは笑い話として話せることがくるだろう。その時に黒猫が自分の近くで笑っていることを願わずにはいられない京介であった。

黒猫√BADEND②&日向√TRUEEND

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最終更新:2013年09月04日 19:18