161 :Monolith兵:2013/06/30(日) 23:49:13
※このSSにはTS表現があります。ご注意ください。
ネタSS「俺の妹が○○○なわけがない!」 その16

 高坂京介は実家から少し離れた少し古めのアパートの一室に一人でいた。別に高坂家がここに引っ越してきたわけではない。京介一人だけがこのアパートに引っ越してきたのだ。何故こうなったかを語るには少し時間を遡らなければならない。


 ある日の夕食の席、母佳乃が京介と桐乃にあることを問いただしたのが切欠だった。

「京介に桐乃。貴方たち最近妙に仲良くない?去年まであんなに酷かったのに。」

「え?ま、まあ、以前よりはいいかな。」

 兄弟仲が良いのは良い事だ。例えその中身が爺だとしても。

「良すぎるのが不思議なのよ。今じゃ互いの部屋に平然と行ってるみたいだし、一緒に出かけているみたいだし。それに、この間は突然2人でカリフォルニアまでいったんでしょ?電話をくれるまでもしかして駆け落ちしたんじゃ、なんて思ってたのよ。」

 何ということだろうか!確かに理由も告げずに勝手に家を出て海外に行ったのは悪かった。しかし、それが何故家出ならともかく、駆け落ちなどと言う話になるのだろうか!

「何でそうなるんだよ!」

「そ、そうよ!何であたしが京介とか、駆け落ちなんて・・・・。」

(だからそんな言動しているから勘違いされるんですよ!)

(仕方ないでしょう。そういうキャラなんですから。)

(何でそんな面倒なことを。)

(その方が面白いでしょ?)

 京介はこんな事態になってしまった事を責めるが、桐乃はなんとも酷い理由を答えてきた。あまりな答えに米神を押さえた。そんな風にこそこそと話す2人を見て、佳乃は二人の仲をさらに疑った。

「それと!最近京介は成績が落ちてきているみたいじゃない。」

 これは京介だけの責任ではなかった。桐乃は何かにつけて京介を連れまわし、黒猫は京介に振られた後も高坂家に出入りし、事あるごとに京介に思わせぶりな発言や責めるような目つきをしてくるのだ。勉強の時間は減り、ストレスは溜まり、久しぶりに胃痛がぶり返してきていた。

「それに、桐乃が京介と呼ぶのはどうして?普通なら兄さんとか兄貴でしょ?」

「それは、心境の変化と言うか何と言うか・・・。」

 以前から嶋田さんと呼ばれることのあった京介は今まで気にしていなかったが、最近桐乃が京介を呼ぶときは名前で呼ぶことが多くなっていた。また2人の時は嶋田さんから京介さんへと呼び名が変わっていた。それを佳乃は耳ざとく聞きつけ、問いただしたのだ。なお、桐乃がこうした呼び方をするのはもちろんわざとだ。一人暮らしイベントを順調に進める為に、以前から仕込んでいたのだ。

「そこで、私から二人に言いたいことがあります。京介、あんた一人暮らししなさい。」

「ええ!?」

 何故そんな話しになるのだろうか?京介は父大介に助けを求めるも、「母さんのしたいようにさせておけ。」と取り付く島もなかった。

「京介。お前は普段から努力を怠らず、険悪だった桐乃との仲を修復し、家族を真にひとつにしてくれた。それを俺は嬉しく思っている。母さんの創造は突拍子もないことだと俺は思っているし、実際桐乃に手出しなどしていないだろうと確信している。だが、勝手に2人で海外に1週間も出かけるわ、成績はかなり落ちるわで、正直俺も堪忍袋の緒が切れた。」

 そこで大介は湯飲みを傾けのどを潤した。

「お前は一人暮らししろ。そして、次の模試で以前の水準まで成績を戻せ。それがお前の疑いを晴らす為の条件だ。」

 大介の言葉には説得力があった。京介としてはここまで自分のことを大介が評価してくれているとは思ってもいなかった。いつも桐乃桐乃で、京介には目もくれていなかったからだ。これだけ評価してくれる大介が言うのなら、それに答えるのが息子としての義務なのではないだろうか?

「話はわかった。一人暮らしをする。」

 そうして、京介はこのアパートに入居することになったのだった。

162 :Monolith兵:2013/06/30(日) 23:50:30
「さて、荷物も運び終わったし、隣の人に挨拶しようかな。」

 京介の部屋は隅にあるため、お隣さんは一室しかなかった。隣の部屋の前まで来た京介は用意してあった菓子折りを片手にインターホンを押した。返事があり暫くして出てきた相手は何とあやせであった。

「な、何であやせが・・・。」

「お兄さん!」

 余りにも驚いてしまい絶句してしまう2人だったが、その静寂を破ったのは部屋の中にいたあやせの母だった。

「誰が来たの・・・って、ひいおじい、いえ、京介君!何でまたここに?」

「あ、え、ちょっと家庭の事情で隣に引っ越してきたんだ。ところで、何故2人がここに?」

「私たちは家を改築するのでここに一時的に移ったんですよ。」

「東京の官舎に行っても良かったんだけど、あやせは中学校があるから近くで入れる場所を探していたら、お父さんがここを友人から紹介されたみたいで。1ヶ月だけ貸してくれる所なんて中々無いからここに入ったのよ。」

 新垣母子の説明で京介はすべてが理解できた。つまり、この1月この2人がお隣さんとなるのだ。

「さあさあ、何にも無いところだけど入って頂戴。あ、夕ご飯は食べたかしら?私結構料理が得意だから食べていってね。」

「いいのか?」

「ええ。前のときは私は小さかったから曾お爺さんに料理を食べてもらうことは無かったけど、今はいいでしょ?曾お爺さんに私の料理を食べてもらえるなんてとても嬉しいわ。」

「あ、お母さん、私も手伝います。」

 なんとも穏やかな空気が3人の間には流れていた。他所の家にお邪魔した時のような居心地の悪さはここには無かった。この時、血の通っていない高祖父と曾孫、玄孫は間違いなく家族と言われても違和感が無かった。


 そして夕食後、食器を台所に片付け3人は卓袱台に座って話をしていた。それは今まで何をしてきていたかや、何故急に海外に行ったのか、今回このアパートに住む事になったいきさつ等であった。

「じゃあ、曾おじいさんは・・・。」

「もういい加減京介でいい。この年で曾お爺さんと言われるのは結構きついからな。」

「ごめんなさい。気をつけているのだけどね。」

 あやせ母は罰の悪そうな顔をしたが、それでも嬉しそうだった。それを見て京介も自然と顔がほころんだ。初の女の曾孫とあって、前世ではかなり可愛がった覚えがあるが、今では都市も立場も逆転してしまった。だが、かつての面影はいたるところにあり、それが京介にはたまらなく嬉しかった。

「それじゃあ京介君は、成績を元に戻して桐乃ちゃんとの仲を否定しなければならないのね。」

「ああ。まあ、あいつが何かにつけて連れ回そうとするし、元カノはちくちくと私のことを責めるし。ちょっと生活がぎすぎすしていたからなぁ。今回のことは本音を言うと少し助かったところもあるんだ。」

「そうなんだ。」

 そんな2人のやり取りをあやせは複雑な気持ちで見ていた。惚れた男と母親が仲良いのは嬉しいことだが、京介が自分よりも母と仲が良いのは悔しかったし妬ましかった。そして、自分がこんな思いを母に持っていることが恐ろしかった。
 そんなあやせを尻目に2人は更に話を続けた。

「じゃあ、生活は大変じゃないの?一人暮らしは初めてじゃない?」

「初めてではないが、確かにきつい所はあるな。特に料理は余り得意じゃないからな。」

「じゃあ、食事はうちで食べるとして。あやせ、あなた京介君の世話を見なさい。」

「ええ!」

 突然声を掛けられたあやせは驚いて声を上げてしまった。そして、先ほど言われた言葉を反芻する。つまり、自分が毎日京介の部屋に通うということだ。それはまるで通い妻ではないか!

「え?なんで?」

 混乱しているのか、あやせは疑問を何度も投げかける。

「京介君の世話を焼けるのよ?嬉しくない?」

 そう言ってウインクをする母にあやせは全てを理解した。母親は自分の背中を押しているのだ。これほど素晴らしいフォローは早々無いだろう。

「解りました。お兄さん、私に任せてください!」

 あやせは胸を腕で叩き、自信満々に言った。

「あやせには一通り家事を仕込んであるから大丈夫よ。」

 先ほどから一言も発しない京介にあやせは葉が細くする。京介としてはとても有難い提案であった。また、自分の世話を焼く為に通ってくれる女の子、しかも美少女がいるなんてそれなんてエロゲ?な状況を逃すのは京介には出来なかった。いくら精神年齢が100歳を大きく超えていたとしても、所詮は男であるということである。

「ああ、宜しくなあやせ。」

 そして、2家族3人の奇妙な共同生活が始まった。


おわり

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最終更新:2013年09月04日 19:24