369 :Monolith兵:2013/07/22(月) 23:45:53
※この作品にはTS要素が含まれて居ます。ご注意ください。
ネタSS「
俺の妹が○○○なわけがない!」 その終わり
京介は校門から母校を見ていた。今思えば、高校3年間は様々なイベントが目白押しだった。2年になったばかりの頃に、妹の中身が辻政信だとわかった。妹の友達が富永の家系だった。また、同じく妹の友達に前世の自分の子孫が居た。黒猫から告白され恋人が出来、別れを告げるためカルフォルニアに渡った。かつての玄孫から告白されたが振った。
思い浮かべてみると、その中心にはいつも桐乃がいたのだ。普段は胃と頭を痛める事ばかりをしてくる妹だが、それなりに充実した高校生活を過ごせたのも、桐乃のおかげであった。
「ありがとな。」
京介はそれだけ言って、2度目の高校生活を過ごした母校を後にした。
「ただいまー。」
クラスメイトとの卒業パーティーを終えた京介は帰宅していた。帰宅の挨拶をしたものの、誰からも返事は無かった。珍しく玄関に鍵が掛かっていたから当然である。
リビングに入り、冷蔵庫から麦茶を取り出しコップに入れて飲んだ。カラオケで散々歌った後なので無性に喉が渇いて仕方が無いのだ。3杯ほど麦茶を飲み干した後、階段を昇り自分の部屋へと入った。電気をつけ、制服のままでベッドに寝転んだ。先程まで、散々カラオケで歌い騒いできたので疲れているのだ。暫くベッドの上でごろごろしていたが、ある程度体力も回復したの、起き上がりベッドに座った。
「本当に、楽しい日々だったな・・・。」
中身爺な高校生は、過ぎ去った高校生活に思いをはせていた。前世では海軍大学校で味気ない青春を味わったし、憑依したのは日露戦争中のことであった。前々世では普通な高校生活だったが、今世のように彼女が出来たことも無かったし、勉強にスポーツ、オタク趣味と充実した生活は送れなかった。
また、辻もとい桐乃に振り回された日々は胃と頭が痛かったし、辛い思いもしたがこれまでに無く充実した青春の思い出としてこれからも輝くだろうと思えた。
「ありがとうございます、辻さん。」
面と向かっては言えないであろう言葉を、無人の妹の部屋の方へ向けて呟いた。それを言ってから、恥ずかしくなったのか、ベッドから立ち上がり軽く伸びをする。そうしていると、ふと机の上に一冊の本があるのに気付いた。近寄ってみると、かなり分厚い文庫本のようであった。その表紙にはライトブラウンの髪をした女の子が腕を組んで不機嫌そうな顔をしていた。その後ろには高校生くらいの少年が不幸そうな顔で女の子を見ていた。
「何々、”俺の妹がこんなに可愛いわけがない”?新しいラノベか?こんなもの買った覚えが無いけどなぁ・・・。って!これ桐乃か!そして後ろのは俺かよ!!」
よくよく見ると、女の子は桐乃に似ていたし、少年は京介に似ていた。
「そういえば、以前黒猫が俺たちをモデルにした漫画書いてたよな?その小説版か?」
そう納得し、本を開いた。すると、間に挟まれていたのかメモが机の上に落ちた。それには『これを明日までに読むこと! 桐乃』と書かれていた。これまでもエロゲーやアニメを見るようにと押し付けられていたので、別段不思議に思わずに椅子に座り小説を読み始めた。
読み進めていくうちに、この小説は自分たちをモデルにしたパロディに違いないと京介は確信を持っていた。流石に桐乃の中身が辻政信ではなかったが、これまであった出来事が少し違った風に書かれていた。例えば桐乃の趣味が父親にばれてそれを認めさせたとか、あやせとの仲直りを仲介したとか。逆に全く身に覚えのない話もあった。桐乃と携帯小説の取材の為のデートとか、桐乃の携帯小説の盗作騒ぎや桐乃のカルフォルニアへの留学だとか、痛チャリで花嫁姿の桐乃と二人乗りをしたりだとか・・・。
前回黒猫が書いたパンツクンカ漫画と比べたら遥かにまともな小説だった。
だが、読み進めていくうちに雲行きが怪しくなってきた。桐乃がやたらデレるし、京介も余りにもシスコンだった。あやせが通い妻するのはそのままだったが、隣に引っ越してはいなかった。クリスマスのデートで、京介が桐乃にプロポーズするにいたって、京介は思わず本を放り投げた。
「何でこうなるんだよ!どうして辻さん、もとい桐乃にプロポーズするんだよ!おかしいだろ色々!」
とはいえ、あくまでフィクションと割り切って続きを読み進めていく。恋人同士となった桐乃と京介の甘々な日々、麻奈実との対決、教会での結婚式・・・。もはや最後の方は、吐くのを堪えながらの苦行ですらあった。しかし、全てを読み上げた。そうしないと後が怖いのだ。
370 :Monolith兵:2013/07/22(月) 23:46:25
「しかし、本当によく出来た本だな。・・・内容はともかく。」
そう呟きながら、後書などのページを捲っていくと、発行日の書いてあるページが出てきた。
「全く、あいつもすごいよな。いつの間にこんなに立派な本を出せるようになったんだ?」
そういいつつ発行年を見た京介は本を持ったまま固まってしまった。
「・・・おいおい。嘘だろ・・・。」
そこには昭和○年△月★日初版発行と書かれていたのだ。当然ながら、昭和○年に黒猫は生まれていなかった。つまり、これは遥か以前に書かれた物だということだ。本の表紙を見てみると、確かにくたびれた感じがする。とはいえ、”復刻版”と書かれているので最近印刷されたものであるようだ。
「そ、そうだ。原作者を見れば・・・。」
独り言を言いながら原作者を見た京介は再び固まった。そこには、”原作者:フシミン”と書かれていたのだ。
「殿下ー!」
一体どういうことなのか!自分たちの存在は、遥か昔から決まっていたというのだろうか?あまりな事態に京介は混乱していた。
「とうとう知ってしまったのですね、嶋田さん・・・。」
その時、耳元で少女の声が聞こえた。言うまでも無く桐乃の声だ。しかし、相手が桐乃だと理解していても、京介は恐怖で動けなくなってしまっていた。
「嶋田さんは知らなかったかもしれませんが、前々世で”俺の妹がこんなに可愛いわけがない”というライトノベルが出ていたのですよ。」
ということは、自分は今ラノベの世界へと入ってしまったのだろうか?思い返せば、前世は原作のない仮想戦記の世界であった。であるのなら、原作のある世界に生まれ変わっても不思議ではない、かも知れない。
「ようこそ嶋田さん。妹系ライトノベルの世界へ。歓迎しますよ。」
京介は内から沸きあがる恐怖を押さえつけ、ゆっくりと後ろへと顔を向けた。そこにいたのは純白の衣装をした桐乃だった。ただの純白ではない。純潔と誓いの意味を持つ服であった。
「さあ嶋田さん、原作どおり、私たち結婚しましょう。(はぁと)」
桐乃の言葉を聞いた京介はすぐさま小説の挿絵のひとつを思い出した。ウェディングドレスに身を包み、一瞬の夫婦になった2人の姿を。自分にあれになれと?それを理解した瞬間、京介は絶叫とも悲鳴ともあげる叫び声をあげ、気を失った。
おわり
最終更新:2013年09月04日 19:41