「俺のクリスマスがこんなに充実・・・」
クリスマスイブ。キリスト教が主流のヨーロッパではクリスマスを家族と共に祝う日だが、日本では何故かクリスマスイブに恋人や夫婦が互いの愛を確認する日となっている。師走の忙しい時期に楽しめるイベントとして定着していた。
そして、とある1組のカップルもその例に漏れず、某所でデートを楽しもうとしていた。
「お待たせしました、京介さん。」
「いや待っていませんよ。では行きましょうか。」
とあるカップルとは高坂京介と赤城瀬菜であった。この二人は互いにアプローチを掛けてくる異性を諦めさせる為に偽装交際をしていた。でなければ、中身爺同士で付き合うなどということは絶対にありえないことだった。
「所で、・・・来ているんですか?」
「ええ。着いてきていますよ。」
京介の問いに瀬菜は暗い顔をして答えた。瀬菜は超シスコンの兄を持っている。それはもう実の妹に欲情するほどの変態シスコン馬鹿兄貴なのだ。だが、イケメンスポーツマンであるので、周りには「あんなお兄ちゃんがいていいなぁ。」とか思われてしまい、その危険性を理解してくれる人は数が少なかった。
「大丈夫ですよ。私に任せてください。それに・・・今世の友人が人の道を踏み外すのは見ていられません。」
「お願いします。」
自分に任せろ!という京介に瀬菜はドキッ!とする、等という事は無くつつがなくデートは進んでいった。流石に超シスコンとはいえ街中で修羅場を作る勇気は浩平にはないようであった。
それからの二人はまるで恋人同士のように楽しく過ごして言った。本人たちは互いに中身爺だと知っている為に、恋愛感情はない。これは友達デートであると自分たちに言い聞かせ、偽装交際しているがあくまで友情の延長だと自分に言い聞かせていた。だが、それを抜きにしても前世からの友人である2人の仲は深く、傍目から見ると恋人同士にしか見えなかった。
2人のデートはまさにテンプレというに相応しかった。軽いウインドウショッピングに高校生にしては背伸びしたレストランでの食事、互いのプレゼント交換など、特にバイトをしていない高校生としては普通のデートであった。
「しかし、こういうものもありですね。確かに現在は異性ですけど、友人同士でクリスマスを楽しむには丁度良かったですね。」
「そうですね。私としても今日は楽しかったですよ。これなら十分恋人同士に見えるでしょうし、双方共に苦痛を感じないので上手くやっていけそうですね。」
瀬菜の言葉を京介は肯定した。いくら友人とはいえ異性だと、特に思春期だと相手を意識してしまうものだ。しかし、この二人は互いに前世からの友人である為にそれがない。故に偽装恋人としての相性は最高であった。
「所で・・・、ホテルには行くべきですかね?ああ、勘違いしないで下さいね?」
瀬菜が軽く視線を向けた先には建物の陰に隠れた気でいる兄がいた。京介はそれを見て心の中でため息をついた。
「クリスマスイブで、思春期の2人がデートしてそのまま帰るというのも・・・。私にその気はありませんが・・・。」
「決まりですね・・・。はぁ。」
そうして、二人は全く気乗りせずにラブホテルの中へと消えていった。
「うううっ、瀬菜ちゃん・・・。己高坂許すまじ!」
それを建物の影から見ていた超シスコン変態兄貴は京介に対する憎しみを滾らせていた。
745 :Monolith兵:2013/08/13(火) 01:02:53
しかし、彼らを見つめる眼は他にもあった。
「素晴らしい!」
「ええ!これまで私たちは辻×嶋田しか見ていなかった。でも、東条×嶋田という新境地が・・・、いえ!辻×嶋田×東条という三角関係が存在するなんて!!」
「噂では五更瑠璃さんは富永恭次だというけれど。それが本当なら互角関係!?」
「なんて、なんて素晴らしいの!次のコミケはこれで決定よ!!」
そうして、腐った方々の努力の結果、その年の冬のオタクの祭典では伝統の辻×嶋田のみならず、東条×嶋田や辻×嶋田×東条や辻×嶋田×東条×富永という三角関係や四角関係の薄い本が大量に出回ることになる。京介は受験を言い訳にコミケに参加せずそのことを知らなかったし、他のメンバーもやおいには興味が無かった為にその事実に気づくことはなかった。
また、とあるネタとしか思えない名前を持つ女性が、友人の手伝いをしているうちに嶋田×山本の薄い本を読んでしまい「何で嶋田と俺が!!」という悲鳴を上げたりもしていたがそれは余談である。
なお、高坂家の腐った女性筆頭である佳乃により、それらの薄い本が高坂家に持ち込まれ、京介と桐乃があまりな内容に胃とSAN値が削られてしまうのも完全な余談であった。
おわり
最終更新:2013年09月04日 20:22