874 :Monolith兵:2013/09/02(月) 02:20:42
※このSSにはTS表現があります。ご注意ください。
高校生活最後の正月を迎えた京介は、例年のごとく御節を食べ近所の神社に初詣をして、それで終わりのはずだった。いや、桐乃だけはお年玉を貰う予定はあったが・・・。
それはともかく、その予定の無い予定は桐乃によって一瞬にして変えられてしまった。
「ほら、私も嶋田さんも今年は受験でしょう?ですから霊験あらたかな神社にお参りしに行きましょうといっているんですよ。」
「それはいいですが、何処ですか?」
京介は、流石に今回は桐乃が何かを企んでいるつもりは無いと判断していた。その為、有名な神社にお参りしに行こうという話をすぐさま受け入れたのだった。京介自身も、2回も転生している割にその内合格祈願に行かないとなどと思っていたので、渡りに船の話でもあった。
「ああ、東京にある○○神社ですよ。知りませんか?」
「え?どこかで聞いたような・・・。」
京介はその神社の名前に、何か引っかかるものを感じたが、それが何なのかが思い出せなかった。
「まあ、歴史の教科書にも載っている歴史ある神社ですからね。知っていてもおかしくないですよ。」
「ああ、それで引っかかっていたのか。」
桐乃の言葉に京介は納得した。その顔を見て桐乃は軽く微笑み、「さあ、行きましょう。」と京介の腕を引っ張って出発を促した。
875 :Monolith兵:2013/09/02(月) 02:21:39
両親に東京の神社に合格祈願に行くと告げて二人は東京の○○神社まで来ていた。この神社は○百年前に建てられたもので、江戸時代には江戸幕府の直轄とされていたなど、由緒ある神社であった。
「・・・本当にどこかで見た覚えがあるんだけどなぁ。」
京介は○○神社についてから、しきりに首を傾げていた。京介の記憶には、この神社に来た覚えはないのだ。だが、境内やご神木、門など微かに見覚えがあるのだ。近年建て替えて真新しくなった境内を見渡しながら、京介は腕を組んでうんうん唸っていた。
「ほら、兄貴。前が進みだしたよ。」
桐乃が妹モード(逆は辻モード)で京介に話しかけてきた。それでわれに返った京介は左腕に何かが絡み付いているのを感じた。左を見ると、何と桐乃が腕を絡めているではないか!もし、これが正真正銘の混ざり物なしの妹だったら微笑ましくて喜ぶべき所だが、残念ながら今の桐乃の中身は銭ゲバ変態腹黒紳士でで世界を阿鼻協賛の地獄へと叩き落した”大蔵省の魔王”辻正信なのだ。これをどう喜べというのだろうか。実際、腕を絡められていることを理解したとたん、大声を上げた。厚着に隠れてはいるが、背中には鳥肌が立っていた。
だが、抗議する間も無く拝殿にたどり着いた。京介は桐乃を半目で睨むが、桐乃は何処吹く風で済ました表情をしていた。
財布から奮発して500円を取り出すと、それを賽銭箱に放り投げ二礼二拍一礼して大学に合格できますようにと願った。恐らく桐乃も高校入学を、・・・いやそれ以外を願っていることだろう。中身が辻な桐乃が高校受験失敗する可能性は絶対にゼロだと断言できる自信が京介にはあった。
「さて、それでは少し宝物殿でも見ていきませんか?」
「ああ、これだけ大きい神社だとそういうものもありますよね。」
桐乃に誘われて京介は宝物殿へと足を踏み入れた。そこには神社縁の品々や江戸時代の書状や絵画などが飾られていた。
「ところで、ここの神社で祭られているのは誰だと思いますか?」
「誰って、別に稲荷や八幡でもないですから天照大神ですかね。それ以外にも合格祈願の人も多いようですから菅原道真公かもしれませんが。」
京介は奉納されていた絵馬に合格祈願が多いことを思い出しながら答えた。ただ、それ以上にアニメやゲームのキャラを描いた痛絵馬が多かったが。
「そうですか。じゃあ、次の展示で誰が祭られているのかわかりますよ。」
桐乃はそういってニタリと嫌な笑みを浮かべた。それに嫌な予感を感じた京介は、しかし展示を見ない選択肢も無いと先を進んだ。
すると、ガラスケースの中に白い制服が飾ってあった。京介はそれに激しく見覚えがあった。そう、帝国海軍の元帥であった前世で着ていた制服である。
「こ、ここ・・・これは・・・。」
「どうですか?実家に戻ってきた気分は?」
京介が見覚えがあると思ったのも無理は無い。ここは京介の前世、嶋田繁太郎の実家であった神社なのだ。改装され、原形をとどめていない場所もあるが、ご親睦や本殿などは、思い出してみれば確かに前世での実家に間違いなかった。
「そういえば晩年は疎遠になっていましたからね。・・・ありがとうございます辻さん。」
そう言う京介の目元には光るものがあった。いくら転生したとしても、嶋田繁太郎の記憶を受け継いでいる以上ここは自分の実家なのだ。もはや記憶の彼方に埋もれていた感情がこみ上げてくるのも仕方が無かった。
「ほら、あそこの壁に説明がありますよね?読んでみてください。」
「えーと、何々。・・・大宰相嶋田繁太郎の実家であり、祭神には天照大神などのほか、・・・軍神し、嶋田繁太郎を・・・なんだってぇ!」
「どうですか?自分自身に合格祈願をした気分は?」
「qあwせdrftgyふじこlp」
京介の叫び始めが○○神社、通称嶋田神社中に響いたのであった。
おわり
最終更新:2013年09月04日 20:21