166 :二二三:2013/05/23(木) 02:05:52
とくに意味はない話投下
特別なんです
卓越したKMFデヴァイサーとしての腕とブリタニアへの忠誠心を認められ、ナイトオブトゥエルブ親衛隊に抜擢されたある男
彼は何らかの用事で東京にあるブリタニアの公館を訪れた上司モニカ・クルシェフスキーの下宿先の家主が、寝ていた彼女の頬をつついているところを目撃した
(なにしてるんだあの人)
日本のことについて勉強不足な彼は敬愛する上司の頬をつつくといった無礼極まりない行為に及んでいる家主の男が誰か知らなかった
「失礼ですが、如何に家主殿であってもクルシェフスキー卿に無礼を働くのは許しませんよ」
「ああ、これはどうもすみません……
寝ているモニカさ、いやクルシェフスキー卿がかわいらしくてつい……」
あっさり自らの非を認めて陳謝する男
「親しき仲にも礼儀あり、ですね」
家主の男は上司に用があったらしいのだが、上司が寝てしまっているため「親衛隊の隊長さんに言付けを頼ませていただきますよ」とだけ言い残して去っていった
残されたのは執務机に突っ伏して眠りこける上司と自分だけ
手持ち無沙汰な彼は何気なしに上司の寝顔を見ていたが、確かにかわいいなと思った
以前、士官学校で初めて上司教えを受けたときより美しく強い御方だと敬愛していたが、かわいいと感じたのは初めて
いついかなる時であろうと隙らしい隙を見出すことができないほどに自分とは実力差がある上司があどけない表情を見せて無防備に寝ている
彼は敬愛する上司のかわいらしい寝顔に家主の男がしていた行為を思い出した
(これは確かにつついてみたくなる)
普段見られない上司の愛くるしい姿に邪な考えが浮かび上がり、ダメだと言い訳しながらも手が勝手に動いてしまった
(少しくらいなら……)
彼が今いるのは完全に上司のキルゾーン
こんな場所で無礼を働くなど命知らずもいいところだが、民間人である家主の男にできたのだから自分がつつけない筈もなし
(申し訳ございませんクルシェフスキー卿…少しだけあなたの頬を触らせていただきます…)
寝ている女性の頬に触れるというブリタニア紳士にあるまじき行為に及ぼうとする罪悪感から謝る彼の手が伸ばされ、きめ細やか白い頬に触れんとした瞬間、彼の視界が捉えたのは
自分に向かって突き出された上司の手刀であった
「かは…ッ」
首を突かれる衝撃と一瞬の痛み
それは彼の意識を刈り取るに十分すぎるほどのダメージを与えていた
167 :二二三:2013/05/23(木) 02:07:24
それから何時間かして彼が目を覚ましたのは都内にある病院のベッドの上であった
なぜ自分が病院にいるのか理解できていない彼にどうなったのか教えてくれたのはトゥエルブ親衛隊隊長
「危なかったな。あと数センチで急所に直撃を受けて死んでいたぞ」
「そ、そんな……」
「いったい何があったんだ?モニカ様も御自身でやられておいて状況がよくおわかりでない御様子だったが」
訝しげに詰問してくる直属の上司にことのあらましを包み隠さず明かした彼に隊長は「よくもそのような命知らずなことができるものだな」と呆れていた
「いや、その………実は、私がやる前にクルシェフスキー卿が下宿なされておられます家の家主殿がやっていたもので、つい……」
「家主?……ああ嶋田卿のことか」
「隊長は御存知なのですか?」
「御存知もなにも、我が部隊の人間は新人以外皆知っている御仁だ
まさか貴様、嶋田卿がモニカ様のキルゾーンで頬に触れられたから自分も大丈夫とか考えたのか?」
「はい…実はその通りです
悪い言い方になりますが、民間人が触れても起きないほど隙だらけでしたので」
「寝ているモニカ様を前に隙だらけだと感じたのなら貴様はまだまだ未熟だということだ。誉れあるトゥエルブ親衛隊所属の騎士たる実力がまだついていない証拠だな。貴様もモニカ様にお仕えする騎士の一人である以上そんなことでは困る
それと、勘違いしないように言っておくがモニカ様のキルゾーンで何をしても大丈夫なのは皇帝陛下を除けば嶋田卿ただお一人だけだ
命が惜しければ今後睡眠中のモニカ様をお見かけしても手を出さんようにしておけ」
「肝に銘じておきます……それにしても、あの家主殿はどういった御仁なのですか?」
上司にあんなことをしても何もされない家主のことが気になる新人騎士に、隊長は言った
「我々がモニカ様に忠誠を誓いお仕えしているように、モニカ様も皇帝陛下に忠誠を誓いお仕えしている。しかし私人としてのモニカ様はまた別に御守りしたい方がいる」
「それが、あの御仁だと?」
「そういうことだ。モニカ様がお仕えするもう一人の主君、それが嶋田卿なのだ。本来ならばラウンズが陛下以外に忠誠を誓うなどあってはならんのだが嶋田卿だけは特別なのだよ」
最終更新:2013年09月06日 21:00