414 :トゥ!ヘァ!:2013/05/26(日) 17:31:02
あまりにもEUの未来が凄惨すぎるので少しくらいはまともな最後を…
半ばネタですのでご容赦ください。
オリキャラが出てきますのでご注意ください。
時系列は清とのシベリア戦争(仮)の1年後くらいに侵攻を受けてからの数か月後のベルリンです。
ユーロユニバースの終焉
今眼前で町が燃えている。一人の老人の前で燃えている。その町の名はベルリン。老人の故郷であった。
「すまぬ。みんな。わし等が守ると誓ったユーロユニバースは今日、ここで滅ぶ。」
老人は50年以上もEUの民主共和制のもとで軍人を務めてきた。愚直に真面目に自由の名のもとに民主主義の正義を信じて勤めを果たしてきた。
だが、現実は違った。軍や政治家は腐敗が進み、人々は自分達こそが神に選ばれた存在だと思い込み平然と人種差別をするようになった。
老人はこのことを憂い、人々の意識を変えようと腐敗をなくそうと様々な手を打ってきた。しかし国は人々は変わらなかった。
いくら頑張ろうと所詮は一軍人に過ぎない老人には限界があった。それでも老人は挫けなかった。部下には差別しないように厳しく指導し、汚職に手を染めている者は処罰した。
自分自身は決して汚職はせず、人種差別もしなかった。上層部が間違った命令や判断を下せば公然と非難した。そのせいか軍の上層部と一部の政治家に疎まれ地方の補給基地に左遷されてしまった。
だが老人はそのことに腐らず自分の信念、民主共和主義のもとに全ての者は平等である、を貫き通した。
その姿勢に魅せられたのか老人の周りには軍や政界から疎まれた者やはぐれ者たちが集まってきた。老人は困りながらもその者たちにも分け隔てなく接した。
中には老人を利用するためだけに近づいて来た者もいたが、そのような人物は老人やその周りの者達から痛烈な毒舌を持って歓迎された。
そして今現在…
415 :トゥ!ヘァ!:2013/05/26(日) 17:31:44
「敵はベルリンの最深部まで喰いこんでいるな。敵ながらこの強さには惚れ惚れするわい。」
「中将閣下。本部から三十歳未満の部下やスタッフ・残っていた市民たちの退避が完了しました。また戦闘中の部隊にも殿部隊以外は撤退命令をだしました。」
「うん。そうか。参謀長、君は早く逃げるといい。私はここに残って残りの部下たちと殿を務める。」
「御冗談を。私もこの場に残らせてもらいます。幸いにして私は当の昔に三十路をすぎていますからね。」
「君もバカだな。君にも娘がいただろうに。たしかアンナちゃんといったかな?」
「あの子は姪ですよ。まあ、娘と変わりませんが…それに私がバカならここに残っているあなたや部下たちも同じですよ。」
「ふん。あ奴ら、わし一人でよいと言っているのに老人一人に任せられないなどと言いおって、ここに残りやがったのじゃ!」
「彼らも三十歳以上でしかもその中から志願した者たちだと聞きました。慕われている証拠じゃないですか。」
「若い女の子なら兎も角、三十路過ぎのおっさんに慕われても嬉しくないわい。」
「ハハッ!たしかに慕ってくれるなら若い子の方がいいですな。その点、家のアンナは良い子ですよ。この前なんか…」
「ああ、よいよい。貴様はあの子の話になると長くなるからの。あの長時間の演説は老体には堪えるんじゃよ…」
「そうですか(´・ω・`)」
「いい年した大人がそのように落ち込むな!気色悪い!!」
「それは酷い言いぐさですな。中将閣下?」
「ふん!所詮、戦時特例で少将から無理やり上げられた階級じゃ。そのように呼ばれても嬉しくないわい。」
「それでも昇格は昇格ですよ。おっと、漫才はここまでらしいですな。ここにも敵が近づいてきます。」
「最終防衛線も破られたか…さて、精一杯抵抗してやるとするか。例えそれが逃れられぬ滅亡を先延ばしにするだけだとしてもな…」
416 :トゥ!ヘァ!:2013/05/26(日) 17:32:19
数時間の攻防の末、司令部は陥落まじかとなった。
「中将殿。殿部隊は全滅です。文字道理一騎も残っていません。」
「そうか…あ奴らは先に逝ったか。降伏してもよいと伝えたはずなんじゃがな。」
「彼らもここが死に場所だとわかっていたのでしょう。それと敵の司令官から通信がきています。」
「…メインモニターに繋いでくれ。」
「お初にお目にかかる。私はユーロブリタニア軍、聖ミカエル騎士団団長のミケーレ・マンフレディだ。率直に申し上げる。貴官らに降伏を進言する」
「ずいぶん率直じゃの…マンフレディ団長殿?」
「私は遠回しな言い方がうまくなくてな。貴官らは不利な状況の中でよく戦った。だがそれもこれ以上は無理だ。だから降伏を進言した。」
「ふむ。では返答を言おう。」
「聞こう。」
「だが断る!!」
「…何故か理由を聞かせて貰っても?」
「わしは五十年以上も共和国政府から給料をもらってきた。それに私は共和国の軍人だ…」
「…あなたのことは個人的に聞き及んでいます。EUの軍人でありながら公平で腐敗もせず、辛辣だが官民問わず幅広く人々から親しまれていると聞く。どうか考え直していただけませんか?」
「フフッ、お主はいいやつじゃな。わしのような老いぼれのことをその様に高く評価してくれるとは嬉しい限りじゃ。」
「でしたら…!」
「じゃがな!わしは敵国の…共和政治の国の軍人なのじゃ…貴官と個人的に友人になれても同じ旗を仰ぐことは今さらできんのじゃ…
それに先に逝った部下たちに示しかつかん。残念じゃが降伏はできん。」
「…お隣の方は?」
「私も同じです。強いて言うなら死んでも貫き通したい意地がある。」
「そうですか…なら最後にあなた方の名を聞かせてもらってもよろしいか?」
「中将。ただの中将じゃよ。…どこにでもいる様な老いぼれ爺じゃよ。」
「参謀長。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」
「中将と参謀長ですか…わかりました。それではお達者で。」
「ああ、達者でな若いの。」
そして通信は切れた。
数時間後、敵軍を引きつけながらも戦闘中にベルリン司令部は自爆した。
ここにベルリン攻防戦は幕を閉じた。
最終更新:2013年09月06日 21:46