870 :パトラッシュ:2013/07/06(土) 22:33:28

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART11

織斑千冬SIDE(2)

 中国のIS「甲龍」。搭乗する凰鈴音の高い操縦技能と相まって、恐ろしいほどの運動性能を発揮する機体だ。しかも肩アーマーに装着された衝撃砲≪龍咆≫は、普通の人間では砲身砲弾とも見えないだけでなく、砲身斜角も無制限というまさに理想の移動攻撃システムといえる。正直、今の私でもかわすのは骨が折れるだろう。

 それだけに凰も絶対の自信を持ってクラス対抗戦に臨んだはずだが、予想外の事態に相当焦っているな。さっきから「何で当たらないのよー! さっさと撃墜されなさい!」などと怒鳴りながら≪龍咆≫を撃ち続けるが、≪雪片弐型≫を展開した白式を操る一夏は無言で涼しい表情のまま文字通り紙一重で避け続けていた。無駄な動きや急加速急停止も一切なく、ただ逃げているだけなのに逆に凰を追い詰めていく有様に、満席の第二アリーナは寂として声もない。

「し、信じられません。一夏君は『甲龍』の衝撃砲の狙いを予想しているのですか?」
 ピットで腕を組んでモニターを凝視する私の隣で、山田君が声を震わせた。背後で見ている篠ノ之、オルコット、デュノアも、信じられない戦闘状況に小さくあえぐだけだ。
「予測してというよりわかっているんだ。織斑は向こうの世界で、もっと苛酷な状況下で戦ってきた。宇宙空間で戦闘機のパイロットを務めていたあいつにすれば、大気と重力のリミットをかけられた≪龍咆≫の攻撃をかわすなど造作もないのだろう」
「というと一夏さんは、もっと高速の砲撃にさらされる戦場をくぐり抜けてきたと?」
「それだけではないぞ。向こうの世界では大型レーザービーム砲や遊星爆弾も実用化されているし、宇宙に浮遊する無数の岩石やデブリひとつを見落としても命取りになりかねない。それにデュノア、なぜ織斑は自分からは攻撃せず逃げ回っているだけだと思う?」
「もしかして一夏は、凰さんの焦りを誘ってジリジリと精神を削り取っている……」
「そういうことだ。凰は確かに優秀なIS操縦者だが、織斑と比べれば致命的に実戦経験不足だ。ISの能力以前に戦場での駆け引きで、あいつはもう負けている」
「一夏、お前の十代は戦争続きだったとは、こういう意味なのか」

 篠ノ之のつぶやきと同時に、一夏は白式に「瞬間加速」をかけるや≪雪片弐型≫のバリヤー無効化攻撃を放つ。心身とも疲労がピークに達していた凰は対応できず、目を見開いたまま硬直した。「終りだな」と思った瞬間、突然大きな衝撃でアリーナ全体が揺れる。

「い、一体何が起こったのだ?」
「見てください、ステージ中央にISが乱入していますわ!」
「灰色の『全身装甲』タイプなんて聞いたことがない……」
「そんなことは後だ! 観客の退避と迎撃部隊の突入を急がせ――」
「お、織斑先生、第二アリーナの遮断シールドがレベル4に設定されていて、扉がすべてロックされています。これでは避難も救援もできません」
「おのれ、どこの誰がこんな真似を!」
 突然の事態に大混乱に陥ったアリーナでは一夏と凰が即席コンビを結成し、観客を逃がしながら謎のISを攻撃しようとしている。苛立ちのあまり塩入りコーヒーを口にしかけたが、そこで突然、遮断シールド解除のサインが点灯した。
 オルコットたちは「一夏さんを助けてきますわ!」と、山田君ともども現場へ急ぐ。専用機のない篠ノ之まで駆けていったが、それどころではなかった。三年の精鋭がシステムクラック中だったが、彼らの腕でこんなに早く解除できるわけがない。しかもシールドを動かしている敵ISは無傷でアリーナだ。だとすれば、こんな真似ができる奴はひとりだけだ。

「そこにいるのだろう。他に人はいない。いい加減、出てきたらどうだ」
「やーやー、さっすがちーちゃん。相変わらず鋭いねー。惚れちゃうくらいだよ」

※最後に1行だけ出たのは――わかりますよねえ。ラウラ出演は少し先の予定です。

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最終更新:2013年09月07日 20:08