222 :パトラッシュ:2013/08/10(土) 07:57:42

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART16

五反田弾SIDE

「よっしゃ、また俺の勝ちぃ! にしても一夏、お前弱すぎ。昔は俺が連戦連敗だったのに逆じゃないか」
「はは、この十年間ゲームなんかしなかったからな……」
 お手上げのポーズをとる織斑一夏は苦笑いしながらコーラを口にした。この中学時代の友人についちゃ山ほどの情報がネットに氾濫していて俺も興味津々だったけど、訪ねてきた本人を前にすると何も聞けなかった。同年の、いや今は七歳年長になってしまったが、俺には今もマブダチだった一夏でしかない。だから昔と同じく、馬鹿話したり一緒にやったゲームを持ち出して遊んだ。

「で、どうなんだ? 女の園でヘヴンな思いしてんだろ? 招待券はないのかよ」
「あるわけないだろ。お前がISを動かせたら代わってやりたいよ」
「何だよ、そのイイ思いなんかまるでないようなセリフは」
「そう言うけどな、女の中に男がひとりってのは想像以上にきついぞ。動物園のパンダになった気分で楽しめると思うか? 俺は軍の任務として留学してきたから耐えているが、さもなければ逃げ出したいよ」
「それほどかよ。にしても、そんな言葉がお前の口から出るなんて信じられねえな。とっかえひっかえ女を泣かせていた一夏が軍人だなんて」
「訂正を要求する。俺は中学時代に女の子をナンパしたことはない」

 はあ、わざとやっているのか。中学の一学期に俺が確認しただけで十人以上から告白されながら、そのすべてに「うん、ありがとう。いい友達になろうね」とやりやがったんだから。中一の夏休みにお前がモンド・グロッソで死んだらしいと報じられた明けの二学期には、全校の女生徒がお通夜状態だったなんて信じないだろうな。そういうところは全然変わってないけど疲れるぜ。

「それにIS学園でも真面目に学んでいるのは代表候補生クラスかそれに準じる連中くらいで、残りはファッション感覚か面白半分なのが実態さ。平和な証拠かもしれないが、戦場以外の青春を知らない俺には馴染めないよ」
「うーん、お前は本当に戦争プロフェッショナルになっちまったんだな。一緒につるんでゲーセンで遊んだ俺としては信じられないけど」
「だけど鈴の奴は、ISに関しては優秀だぞ。千冬姉も筋がいいと褒めていたし」
 あー鈴か。鈴ねえ。あいつが二学期に重病人みたいにやつれ果てて登校した姿は、今も目に焼きついてるぜ。鈴が真剣にISを勉強してるのは、お前の側にいたいだけだからと断言できるけど、当の本人がこれじゃあ鈴が不憫だ……。

「お兄! さっきからお昼できたって言ってんじゃん! さっさと食べに――」
げ、蘭! 朝から友だちの家に行ってたはずじゃ。だから安心して一夏を呼んだのに。
「いっ、一夏……さん!? き、来てたんですか……?」
「あ、久しぶり。邪魔してる」
「お兄……なんで、言わないのよ……」
「い、言ってなかったか? そりゃ悪かった。一夏、お前も来いよ」
 とりあえず一夏を対蘭用の防壁に仕立てて逃げよう。本人は「巌さんの料理も十年ぶりだな」と楽しそうなのだが――。

「うげ」
 食堂には先客がいた。乱雑にまとめていた髪をストレートに伸ばし、ショートパンツにノーブラのタンクトップを半袖ワンピースに黒のニーソックスに着替えた蘭。いくら一夏の前だからってカッコつけすぎ――などと俺は口にしてないのに蘭の奴、修羅を宿した瞳でギロリと睨みやがる。目線ひとつでダウンさせるダークパワーってやつだ。
「問題あるならバカ兄ひとり外で食べてもいいよ」
「おう来たか坊主、ガキのままの弾に比べりゃ立派になったじゃねえか」
「本当にねぇ、私もこんな息子が欲しかったわ」
 家族からの優しさあふれるセリフ三連発。俺もう泣いていいですか。「巌さん、蓮さん。お久しぶりです。五反田食堂の味は変わってないようですね」と礼儀正しく挨拶する一夏に勝てるわけないけど。

「汚れちまつた悲しみに いたいたしくも怖気づき……」

※2199で古代兄と真田さんが中原中也を読んでいたので、久しぶりに再読しました。ラストの一行は中也の有名な詩からの引用です。一夏が誘拐された第2回モンド・グロッソ決勝戦の時期は、投稿掲示板その1の673から675あたりの議論を参考に中1の夏休みという設定にしました(弾は中学からの友達と原作で明記されているので)。

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最終更新:2013年09月07日 21:02