476 :パトラッシュ:2013/08/17(土) 08:42:07

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART18

篠ノ之束SIDE(2)

 IS学園校舎裏手にある小さな空き地。人通りのある場所や監視システムからは完全な死角になった狭いスペース。もっとも一時間前から、カメラには別の動画を流してあるけど。指定した時間通りに待ち人は来た。軍人さんは几帳面だね。

「やはり束さんでしたか。ウサ耳のイラスト入りメールなんて、もしかしたらと思いましたが」
「久しぶりだねーいっくん。君が誘拐されて行方不明になった時は私も驚いたけど。ちーちゃんや箒ちゃんを悲しませたのは悪かった。でもまさか、他の世界に転移していたとはねー。いっくんとは一度じっくり話したいと思っていたんだよ」
話を続けようとしたが、不意に鋭くなったいっくんの眼差しが怖くて口をつぐんだ。
「……悲しませて悪かったと言われましたが、ISの発明は俺や千冬姉や箒に何の関係もないと思っていたのですか?」
「え、そりゃ当然――」
「束さん、俺はもう単純にあなたの発明に感心したり、得体の知れない連中に拉致された無力な子供じゃない。あなたはISという発明で世界を大きく変えたが、まわりの人間にとっては災いそのものですよ。ISのせいで仕事や立場を失った人にもね。もし俺が向こうの世界に行かずにISを動かしていたら、それこそ人体実験の材料にされていたでしょう」
 ぐうううう。きっついねいっくん。この世界を支配する有象無象どもに対して、私が抱く感情を正確に見極めている。

「そうは言うけどねー、私がIS理論を提唱した際は散々バカにしたくせに、実際にISを発明してみせたら監禁して思い通りに研究させようとしたし、あちこちの国や組織に狙われたのも数え切れない。そんな連中に権利として反撃してやっただけだよ」
 にしても、あの素直でかわいいいっくんが消えてしまったのは悲しいよ。十年以上も戦争が続いた世界の人は、こうもひねくれるのかなー。
「で、俺に何の用です? 二十三世紀の最先端技術について話せとでも」
「まあ、それも望みだけど、実は箒ちゃんに専用機をプレゼントしようと思ってね。第四世代機の最新型『紅椿』だよ。いっくんにはぜひ訓練教官をやってほしくて」
「……箒に第四世代なんて正気ですか。そんなことをすれば、箒を拉致して洗脳したら最新のISと優秀な操縦者が同時に手に入ると思われるだけでしょう」
「い、いや、私は箒ちゃんのために――」
「なるわけがないでしょう。ISに関して箒は素人に毛が生えたも同然です。最近は千冬姉やドイツ軍人を相手に訓練していますが、剣道で鍛えた身体能力のおかげで近接戦闘が多少マシな程度か。そんな箒にいきなり専用機を渡したら、姉の七光りで分不相応なISをもらったと周囲から見られる重圧で自滅しますよ」
 ぐくくくく。私の繊細なハートを、ここまでグザグザに引き裂いてくれるとは。少年は大人になって扱いにくくなった。

「あなたが嫌っている有象無象どもにも金と権力と悪知恵があり、目的のためなら手段を選ばない悪辣さをたっぷり持っている。それをわかっていて無視するのは罪です」
「で、でも箒ちゃんは頑張ってるって」
「箒の罪は弱いことです。努力家だが自分の弱さを自覚せず、結果を想像できず簡単に暴走してしまう。先日の黒いIS乱入事件では、周囲を巻き込んで死にかけました。そんな箒に第四世代機だなんて、何とかに刃物ですね」
 ぐぬぬぬぬ。反論できない。有象無象どもの思惑なんて考えず、箒ちゃんを危険にさらそうとした私はバカだと言われているのに。箒ちゃんに専用機をあげて、いっくんが教官役なら一石二鳥と思ったんだけど。
「……なら、箒ちゃんはISと無関係でいるべきだと?」
「あなたの妹である限り不可能だし、俺も幼馴染に死んでほしくありません。それで考えがありますが」
 ぐるるるる。そのアイデアを聞いて、私はうなった。やっぱり優秀な軍人になった代わりに、いっくんはかわいくなくなったよ……。

※原作で箒に「紅椿」が与えられたとき「何とかに刃物」と思ったのは事実です。ラノベなので誘拐→洗脳→裏切りといったスパイ小説的パターンはなしでしたが、逆にその点が不満だったので、こういう場面を入れました。

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最終更新:2013年09月07日 21:06