135 :パトラッシュ:2013/09/07(土) 09:06:00

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART21

加藤三郎SIDE

 所用で宇宙艦隊司令部に来た俺は、正面玄関で珍しくウキウキした様子の玲を見つけた。
「何かあったのか?」
「政府使節団の随員として、向こう側の地球に行きます」
「向こう側って、あのISって妙な兵器が幅を利かせている世界か」
「ええ、おいしいものがたくさんあるそうですし、久しぶりに留学している一夏とも会えますから」
 ああ、織斑ね。足取り軽く去る玲を見送って、俺は複雑な気分にとらわれた。
「あれほど最悪の出会いをした男と女がねえ。しかも大修羅場愛欲流血狂乱殺人事件が起こってもおかしくなかったのに……」

 織斑と最初に会ったのは、ガトランティス都市帝国との最終決戦直前だった。ヤマト以外からも多くの戦闘部隊が原隊を離れて参加してきたが、そこに少尉だったあいつもいた。ヤマトがイスカンダルへ往復する間、ガミラス軍の残存兵力打倒に活躍したエースパイロットと聞いていたが、直接会うのは初めてだ。二十歳前で稚さの残る顔立ちながら、その瞳に揺るぎない軍人としての覚悟を俺は見て取った。
実際、対都市帝国戦では期待を裏切らぬ活躍を見せてくれたが、そこであの事件が起きた。古代の乗るコスモゼロを都市帝国側の対空砲火からかばった副隊長の篠原が被弾し、そのまま敵要塞に激突してしまった――当時、篠原の恋人だった玲の目前で。錯乱した玲が同じところへ突っ込もうとするのを、織斑が山本機の尾翼を機銃掃射で傷つけたため救出できたのだ。
 都市帝国撃破後、ヤマトへ戻った織斑に玲はパイロット控え室で食ってかかった。
「なぜ余計な真似をしてくれたの?」
「山本中尉を死なせたくなかったからです」
「あなたの決めることじゃないわ!」
「つまり中尉は、篠原大尉の後を追うのを妨害した俺が憎いと?」
 頭に血が上った玲は、織斑を殴りつけた。格闘技術に長けた玲の一発に織斑は吹き飛んだが、血のにじんだ唇を拭って立ち上がると微笑した。
「篠原大尉だけではありません。この戦いでは数え切れない仲間が戦死しました。その数を増やすわけにはいかなかった」
「わ、私は……」
「どんなに辛くとも死者の分まで生きなくてはなりません。それが多くの犠牲の上に守られた世界で生き残った者の義務です。少なくとも俺は、そのつもりなので」
 涙をにじませて玲が出て行ってしまうと、俺は織斑をたしなめた。
「目の前で恋人が戦死したんだ。あまりきつく言うな」
「俺は初陣のとき乗艦が撃沈されて、ひとりだけ生き残りました。そんな想いは嫌なので――すいません、偉そうなこと言って」
 織斑も退室すると、控え室は重い空気に包まれた。かろうじて勝てたが、大きすぎる犠牲を払った結果なのだ。『多くの犠牲の上に守られた世界で生き残った者の義務』という織斑の言葉が皆の胸をえぐった。

 三日後、ヤマトの応急修理が終わって地球へ出発する前、玲が皆の前で織斑に頭を下げた。
「この前はすまない。少尉が正しかったと思う。許してくれ」
「俺こそ失礼しました」
 ひと安心したが、地球へ戻ってから驚かされる破目になった。軍の再編でヤマトに配属されてきた多くの新乗組員のなかに、中尉に昇進した織斑がいた。頼もしい部下が来たのはよかったが、何と篠原の死から立ち直った玲が彼に積極的にアプローチをかけるようになったのだ。暴走しかけた自分を救ってくれた織斑を、男として気に入ってしまったらしい。インプリンティングってやつか。もっとも、二人とも教官役として新人パイロットの訓練にあたらねばならず、ガミラスのデスラーからの通信でイスカンダルの危機を知らされたヤマトが急遽大マゼラン銀河へ向かうなど忙しく、曖昧な状況が続いた。
 しかし、新たな敵勢力が確認されイスカンダルが爆発してしまった翌朝、偶然にも俺は織斑が自室ではなく、ある女性乗組員の部屋から出てくるのを目撃してしまった。せめて玲の部屋だったらよかったのだが……。

※今回からIS世界に来る前の「地球防衛軍時代の一夏」を8回にわたって書きます。次回、待望(?)の18禁で一夏の初体験話が登場! 描写が露骨にならないよう表現に苦労しておりますが、何だかはっちゃけたい気分も出てきて……。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年09月07日 21:11