973 :二二三:2013/06/14(金) 18:33:55
ついでに意味不明のネタSS投下

休日モニカルート&最後は超未来


死は新たな始まり



"お母様、死んでしまうとはどういう事なのですか?"


唐突とも言える幼い娘からの問い掛けにモニカは頭を悩ませていた
死ぬとは動かなくなること。死ぬとは話をすることが出来なくなってしまうということ。死ぬとはいなくなってしまうということ
漠然とした答えこそ出て来はしても、核心を突いた分かりやすい答えは出せないであろうこの質問
"死"についての真なる答えを持つ者などこの世にはいない。死とは、死んで初めて分かることであり、生きている自分たちには知る由もない事なのだから
無論モニカとて命を賭して闘う騎士。そして貴族である身から幾度も"死"というものに直面してきている
不忠者や逆徒、戦争により闘った敵国の兵士。またテロリストなどと対峙した際、容赦なくその命を奪いもしてきたし、自身の命を奪われそうになったこともある
また、親しい付き合いの領民や、家臣で重い病を患った者たちの見舞いに訪れたり、葬儀に参列したこともあり、立場上人の死に触れた回数は数え切れないほどあった

だが、そんなモニカを持ってしても死そのものがどういう事かだけは語ることができない。語ったところでそれは生きている者の想像の範囲内でしかないのだから
それこそ死んでもいない身で死を語るなと叱責を受けてしまいそうだ

「そう…ですね。死ぬとは安らかな眠りにつく……という所でしょうか」

絞り出せたのは月並みな答え
数多くの人の死に触れてきた者として何とも歯痒い

「寝ることなのですか?」

「寝ることではありません。永遠の眠り、動かなくなる、考える事も出来なくなってしまう――」

なんと答えればいいのか分からない
そもそも娘は何故このような問い掛けをしてきたのだろうか?
自身も幼い頃に死に対する漠然とした恐怖や不安を抱いたことはあったが、それについて考える切欠があったはず……

「サクラ。何故あなたはその様なことを聞くのですか?」

だから聞いてみた訳だが、やはり死を考える切欠があったようで、娘は今日遭遇した悲しい出来事を語り出した

「今日、道で猫さんが倒れているのを見掛けました」

「……」

「猫さんを揺すっても抱き上げても、話しかけても起きないのです、そうしたら一緒にいたお友達が猫さんは死んでいるから起きないと」

そこでサクラは死ぬとはどういう事かと疑問に思ったというのである
一緒にいたという友達も猫が死んでいる事は分かってもそれがどういう物であるのかは分からないらしく、二人して死ぬというのは何なのかと考え込んでいたというのである

「動かない猫さんを見ていたら、とても悲しくて涙が出ました……。お母様、死ぬとは何なのでしょうか?お父様とお母様もいつか死んでしまうのですか?いなくなってしまうのですか?」

困った。娘の言うとおり自身も夫もいつかは死ぬ
生きているという事は、死に向かって歩みを進めている事でもある。といって、それをそのまま話しては娘が泣いてしまうだろうし、死が何なのかの答えにもならない
死後については未だ解明されていない未知なる領域であるからして、それを分かりやすく説明しろと言われても正直なところ出来ない相談であった

「ずいぶんと難しい話をしてるじゃないか」

そんな中、どう答えれば良いのかと悩んでいた彼女の後ろから娘に向かって話しかけたのは夫であった

974 :二二三:2013/06/14(金) 18:35:14
「シゲタロウさん」

「お父様」

「死の質問はかぐや姫の難題に匹敵するような難しいものだ」

悩んでいたモニカに替わって嶋田は一つの答えを示す

「だが敢えて言うなら、死ぬというのは次の始まりへの休憩時間なんだよ」

「どうしてお父様には死ぬというのが休憩時間とわかるのですか?」

理由がなければ納得できないとでも言いたげなサクラに父は答えた

「それはな、お父さんが死んだことがあるからだ」

「エエっ!?」

思わぬ衝撃発言に驚きの声を上げたのは、質問者である娘ではなく妻であった
モニカはブリタニア皇帝に仕えるナイトオブトゥエルブであると同時に、夫シゲタロウの騎士でもある
常に彼の側に控え、彼の身を守り続けてきたのに死んだ事があるなどと言われたら立つ瀬がない
そんな妻の様子を見て「いいからいいから」と宥めた彼は話を続けた

「実はお父さんには生まれる前の記憶があるんだ」

「お父様が生まれる前?」

「そう。生まれる前ということは死ぬ前だ。そして生まれる前に死んだお父さんは新しく生まれたからいまここにいる」

「生まれる前は死ぬ前……。それでは私も死んだことがあるのですか?」

「ああもちろんそうだよ。ただサクラは生まれる前のことを覚えてないだけなんだ」

「では、どうしてお父様は生まれる前を覚えているのですか?」

質問に次ぐ質問に対し、聞き分けのない子供に嘘をついてでも納得させるような信じられない話をする夫であったが、モニカには不思議と嘘ではなく本当のように聞こえた
それはサクラも同様で、彼が生まれる前を覚えているのが前提の話をしている

「さあ、どうしてだろうな。生憎お父さんにも分からないんだよ。ただ、その猫さんは今少しだけ休憩しているのは確かかな?」

「シゲタロウさん」

「どうした?」

いつの間にか娘以上に自分が聴き入っていたモニカは、気がつけば二人の話に割り込んでいた

「私も、覚えていられるのでしょうか?」

もし、夫が本当に生まれる前を覚えているのであれば、自分も覚えていられる可能性があるのではないのか?その答えを知りたい

「さ、さあどうだろう?俺が覚えているからといってキミもそうであるとは言えないからな…。殆どの人は忘れてしまうわけだし」

しかし彼女が期待していたような色よい返事は返ってこなかった

確かに夫の言うとおりである。少なくとも自分の知り合いに前世を覚えている者など居はしないし、前世という物が本当にあるとの証明すらされていない
だが、もし夫の言うことが本当ならば、自身も次の時に前世を覚えていたいと思うのだ

「ですが、シゲタロウさんが覚えておられますように、私も覚えていられる可能性はあるということですね?」

「まあ否定はしないよ」

否定はしないが肯定もしない夫。だが自分は覚えていなくてはならないのだ
次の時においても彼と出会い、その身を守護する騎士となるために

975 :二二三:2013/06/14(金) 18:38:13
「話が逸れたが、こんな所でいいかなサクラ」

「はい」

きっと娘は死ぬことに恐怖を抱いていたのだろう。誰しもいつかは死ぬし、死について考えるもの
永遠の眠りにつく。自分が消えてしまう
そうなってしまうのが怖い

だが、次があるとわかればその恐怖に悩まされる事もない

夫はそう考えてこんな話をしてくれたのだと思われるが、実のところ、モニカの不安もまた拭われていたのである
モニカの愛する夫は彼女より四十歳も年上だ。必然的に彼は先に旅立ってしまい今生の別れを向かえることになる
彼女はそれが辛く悲しく、そして怖かった……

だが次がある。生まれ変わりが存在するのなら怖くない。次があるのなら、また彼と出会い結ばれる可能性があるのだから

(私は忘れない。そして必ずやアナタを見つけ出す)

もちろんこの話が本当であるという保証は何処にもなかった
それこそ夫のみぞ知ることであり、彼にしかわからないこと

しかし、モニカは願わずにいられない

死の先にある新たな生と時の中で、また彼と共にあり続けられるようにと








※※※















×××年後



神聖ブリタニア銀河帝国クルシェフスキー侯爵領を構成する星系の中心星、惑星クルシェフスキーにて次代領主となる1人の女児が誕生した

すくすく育った少女は、やがてブリタニア銀河帝国最強の騎士ナイトオブラウンズの末席に任命され、同盟関係にある銀河系国家、大日本銀河帝国の駐在武官として惑星東京へ派遣される

そして時の大日本銀河帝国首相の邸宅に住まうこととなるのだが、ここに一つ不思議なエピソードがあった

ナイトオブトゥエルブが派遣されると聞いた時の日本銀河帝国首相は、自らうちで預からせて欲しいとブリタニア側に打診していたというのである
そして要請を受けたナイトオブトゥエルブもまた二つ返事で了承し、任官の挨拶に訪れた官邸で首相の前に跪き、
「お久しぶりでございます我が愛しき主」と口走り、続けて「ただいま」と言って首相に抱きついたというのだ
更には抱きつかれた首相まで「おかえり」と言って受け止めるという、初対面のはずの両者ともに有り得ない行動を起こしていた

当然この不思議なやり取りは銀河を丸ごと支配する銀河系国家の総理大臣と、もう一方の銀河系国家の皇帝副官にして一星系の次代領主の大スキャンダルとして
銀河に跨る大手新聞社であり、幾つもの星系を支配下に置く両国の仮想敵国、大星系国家清と繋がりがあると黒い噂の絶えない舞朝新聞、
そして傘下の星間週刊誌、週刊減退の手で大々的に報道された

その一面を飾った首相の名を嶋田繁太郎
同じく紙面を飾った騎士の名をモニカ・クルシェフスキーといった

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最終更新:2013年09月08日 14:35